表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/84

第3話 破壊者の住む町 3 変身

「さて……」

 空間に空けた穴をくぐり抜け、陽たちが辿り着いた場所。そこは、地下歩行空間だった。

 先程までも地下歩行空間にいたのだが、眼前の光景はソレとは大きく異なっていた。


 人間がいない。陽と千景の二人の他は、男も女も通勤者も観光客も、人間というものがひとつも存在していない。天井の照明はなにも意に介さず機能し続け、地下の視界を確保している。


「千景。生体反応は?」

「ないよ。感知範囲内には」

「そうか。鏡獣きょうじゅう反応はいくつだ?」

「えっと、すごいたくさん」


 人間はいない。だが、陽たちを歓迎する者は存在した。

 カラフルな色付き鏡のパッチワーク人形とでも呼べばいいか。ほぼ大人の男サイズのそんな化け物……鏡獣の群れが、陽たち四方を取り囲んでいた。現世の人間たちほど多くはないが、視認の限界距離まで群れていて数えるのが嫌になる。


 その中、陽たちの近くにいる一体がなにかを食べていた。棒状のそれは、見間違うはずもない──人間の腕だ。先程大声で話していた女子高生たちの制服、それとよく似た袖布が張り付いている。

 その鏡獣は掻き込むように袖布ごと腕に齧りつき、豪快な音を立て噛み砕き、あっという間にすべて嚥下してしまった。爪の一枚もそこには残らない。


 人間を食ったのだ。これは、そういう存在だ。

 かつて陽の両親を殺害し、落葉を傷つけた、世界中のいたるところに巣食う異形。

 人を攫い、食らう化物たち。


「……まあいい、全部壊すだけだ。千景!」 

「あいよ!」


 千景が天井へ向けて腕を突き上げる。開いた手の平が赤く眩く輝き出す。

 光は球となり、そこから幾筋もの閃光が迸る。閃光は線となり曲がりくねり螺旋となり、千景と陽の全身を余すことなく食らい包み込む。

 光がすべてを覆い、その中で千景が拳を握る。

 拳に握り潰されたかのように、赤き光がすべて弾け飛んだ。弾けた光の粒子は近くにいた鏡獣共を襲い強く吹き飛ばす。


 赤の中より現れしは、黒。

 黒いドレスワンピースを纏い、白銀の大翼を背負う少女。

 漆黒のマントを背負う、黒革鎧の男。頭部を守るは白銀の羽根つき中折れ帽。

 男の手には、紅に光る刀身を持つ一振りの片手直剣。

 陽は、自慢気にその刀身をそっと撫でた。


「働いてもらうぜ、暁月あかつき

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ