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魔王、逆監視する

勇者達は謁見の間から退出した。

王も王妃も役目は終わったと玉座から降りて今はこの場にはいない。

居残るのは勇者の指導者達ともう1人。

その空席となった玉座に不敬に座るのは、この国の宰相だ。

「さて、諸君」

宰相はあの暑苦しいフルアーマーは既に脱ぎ捨てていた。

しかし今は白い仮面をつけて素顔を隠していた。

だがここにいる皆彼の素顔を知っている。

なので、無意味といえば無意味なのだが彼にとっては仮面があるかないかは重要な意味があった。

「勇者をどう思う?」

「若い3人は問題ないかと。」

妖艶な美人…ユーリが発言する。

その意見に反対する者はいなかった。

たしかに彼らは凄いスキルを持っている。

しかし、使いこなせるかどうかはまた別問題だからだ。

そして何より子供。

大人の手練手管にかかれば大した脅威にはならない。

いくらでも思う通りに操作できる手駒でしかなかった。

「問題はあの男」

エルゼルの言葉に皆に緊張が走る。

「あの男のスキルが気になるな」

「御主人様のカリスマ魔法を無効化したのは脅威です。」

レイフォルが言う。

簡単に魔法の無効化というがそれは並大抵ではない。

無効化は術者より優れた術者でなくてはできない。

魔力が多ければ出来るレジストとは訳が違うのだ。

「あの魔力量は計り知れません。

もしかしたら御方より上かも…」

「エルゼル!それは不敬だ!」

宰相が即座に嗜める。

いくら異界より呼び寄せたとはいえそこまで莫大な魔力を身に宿すなど常識を超越している。

「まずはあの男の監視に力を入れよ。

エルゼルは元よりあのラビーニャも御方に仕えし暗殺者。

隠密スキルでは遅れをとるまい。」

そう、実はラビーニャだけではない、獣人使用人達全員が隠密スキルを持つ暗殺者だ。

ラビーニャを含めそうは見えないのは獣人が持つ動物としての愛らしさを十全に持っているからである。

元来獣人はその見た目に反して身体能力は元より魔法に関しても人間の上をいくのだ。

「お任せください、あの男の監視は勿論、陥落させて意のままに操れるようにしてみせましょう」

「うむ、勇者など手のひらで転がしておけばいいのだ。」

この後、彼らは今後の予定を話し合う。

彼らはこの話し合いの為にレイフォルが防音魔法を、エルゼルが意識阻害魔法を行使して盗聴、間諜の類いを寄せ付けないようにしていた。

もし、仮に誰かが近寄ったり盗聴すれば術者である2人はすぐに気づくだろう。

それがあるから彼らは堂々とこんな広々とした目立つ場所で内緒話をしていた訳だが……




「愚かだねぇ」

私は豪華な個室で寝っ転がりながらプチケーキを食べつつ彼らを見ていた。

宰相がやばいとわかった時点で目を離す訳がない。

監視魔法を発動し、離れた場所でも彼を監視出来るようにした。

阻害魔法も防音魔法も監視魔法発動後に発動した魔法故、監視魔法はレイフォル、エルゼルに発見されることなく発動し続けている。

いや、ゲームではある一定レベルに達した魔道士は先にある余計な魔法を発見する事が出来たのだ、低レベルな彼らでは仮に私が後から監視魔法をかけてもきっと気づかないで話し込んでいるだろう。

いやー、本当に愚かだ。

ちなみにうさぎがこのプチケーキを用意してくれた訳だが、普通に媚薬が入っていた。

まあ、毒無効の体なので気にならない。

そしてうさぎはこの部屋を出たと見せかけて下手くそな隠れんぼうをしている。

天井裏に控えるって忍者かよ。

そして宰相が言った通り私を監視しているが、残念、幻影魔法を使っているので、彼女の目にはプチケーキを食べながら窓辺の風景を優雅に楽しんでいるようにしか見えないだろう。

なんか、宰相の話を聞いていると夜は勇者を歓迎する宴が開かれるらしい。

つまりはパーティだ。

おお、いいね、いいね。

私、華やかな場所大好き。

是非楽しませて貰いましょう。




さて、その宴が始まるまで時間がある。

それまで1つ確かめなくてはならない事がある。

私はベットからむくりと起き上がり転移魔法を発動。

行き先は勇者召喚の儀を行い現在私の庇護下に入っている場所だ。

さて、あの老人は勇者が帰るには魔力が足りないからすぐには帰せないとかほざいていた。

だが、私の魔力があれば帰れるような気がする。

あとは技術。

ゲームに勇者召喚魔法なんてなかったので私は勇者を召喚出来ないし、このままでは帰れない。

だから、この部屋の過去を見る。

スキル『魔王の過去視』だ。

単なる過去視は一年程度しか見えないし、ダイジェスト化されていて肝心の事柄が見えない事もあった。

しかし魔王の過去視は何百年と遡れるうえに事細かく過去を見れる。

だから、ほら、どうやって魔法を発動させたのかがわかるわけよ。

ほうほう、10年前から毎日毎日エルゼルはこの部屋に通い勇者を召喚すべく魔法陣を描いていた。

魔力はあの老人達が必死で銀水晶に溜めている。

部屋の建設も必死にこなしていた。

特に聖水の柱は組み立てる前に溶けて消えるというアクシデントに見舞われかなり苦労をしたようだ。

エルゼルと老人達は手に手を取り合い協力してこの部屋を作り上げ…そして召喚魔法を発動。

あ、ちょっと待って、そこ、そこ重要。

ふむふむ、呪文は覚えた。

やってみっかぁー。

ほんじゃらかほい!


魔力ががりっと削られた感覚がする。

それと同時にゲームログアウトにも似た立ちくらみが起きて………


瞬きすればそこはゲームの世界だった。

時間を確認すればゲームログアウト直前くらいか?

とりあえず、ログアウト操作をしてみる。

また立ちくらみがした。

だけど、次目を開ければそこは……



ふつーーーーに自宅でした。

はっと我に帰り真っ先に時計を確認。

ゲーム時刻と変わりなし。

つまり、異世界にいたあの時間はなかったものとして処理されている。

体調も問題ない。

空腹、排泄欲、共に正常。

異世界でケーキを食べたけど栄養にはなっていないのが確実となる。

王様も食するレベルだからか美味しかったけどね。

とは言え現実でも食事は必要。

私はカップ麺を作り普通に食べる。

王様御用達のケーキもいいが庶民の味方も大好きだ。

さて、あれは夢だったのだろうか?

自問するが答えはもう出てる。


あれは夢じゃない。


根拠はない。

証拠もない。

だけど、異世界に行った事実は他ならぬ私が一番わかってる。

大事なのはそこじゃない。

もう一度異世界に行くかどうかだ。

あの世界の命運なんて関係ない。

滅びようが助かろうが私の生活には一ミリも影響を与えないのは確かだ。

しかし………


もし、異世界に行っても帰ったら異世界に行った時点に戻れるならば。


あの世界をゲームと同じようにとことん楽しんでもいいのではなかろうか?

ゲームと同じく魔王として世界を蹂躙するのも楽しそう。

ゲームと違って正義の味方を気取るのも楽しそう。

世界の命運なんてほっぽり出して冒険に繰り出すのも楽しそう。

ゲームよりも無双可能なあの世界は私にとって玩具そのもの。

時間に縛られないならば、遊んでやってもいいと思う。

いや、寧ろ遊びたい。

私はゲームが大好きなんだから。


ならば私のやる事は1つ。


即ち、検証だ。



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