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魔王、エルゼルを黒焦げにする

「そういや貴女私の指導者だったね。」

何を指導するのか知らないけどと肩をすくめる。

対する彼女は儚げに微笑み手招く。

「!?」

するとアルフレッドの体が宙に浮き彼女に引き寄せられた。

「大丈夫ですか?」

「…あ、ああ…」

「泣くならあっちで泣いてくださいね」

「う、う、う……」

エルゼルの言葉に再び泣き始める。

「騎士団長の癖に打たれ弱いんですよ」

仮にも一度死んだ相手に対して厳しすぎる。

しかし、男の癖に人前で泣くなんて弱すぎると思うので何も言わないでおく。

「うう….!」

軽く呻くとちらりと私を見てすぐに見学組に合流する。

「貴女の言う通り彼は打たれ弱いねぇ」

「まあ、彼は自分のスキルに絶対の自信がありましたからね。」

「スキルは『騎士』?」

「何故それを!?」

「いやぁ、一対一を申し込んできたし。」

ゲームで言えば騎士のスキルはある特性を持っていた。

それはタイマン勝負で攻撃力5%向上というもの。

タイマン勝負を挑まれたのでこれってもしかしてゲームと同じ?と思ったのだが、どうやら当たりだったようだ。

やはり鑑定するまでもなかったか。

「…それだけではありませんけどね」

負け惜しみかそう呟くエルゼル。

それだけであろうがなかろうが彼は負け私は勝った。

それで十分。

「で?貴女はどんな芸を見せてくれるの?」

「初撃は譲りますよ」

言って彼女は笑う。

男なら見惚れる儚くも美しい笑顔だがあいにく私は興味を抱けない。

しかし初撃を譲るとは随分自信があるようだ。

私は考える。

これは何か装備に頼らない切り札的なものがあるのだろう。

ゲームにない魔法を使ってくるかもしれない。

ならば私も手加減なんて考えていられない。

彼女は魔法使い。

実は魔法攻撃は物理攻撃にあたらないので彼女の前では先程の鉄壁防御が効かないのだ。

ここら辺よくわからない。

魔法だって物理だろって思うのだが、ゲームの根幹設定では魔法は物理ではなく特殊攻撃というわけわからんものに分類されるのだ。

あくまでゲーム設定だからこちらでは違う可能性もあるにはあるが……何も最高峰魔道師で試す訳にもいかない。

鉄壁防御がなければこの軍服カッコいいだけの紙装甲だからね。

だからこそ、初撃の選択は慎重に。

いや、違う、大胆に。

手の内がわからないのだから考えたって仕方がない。

鑑定すればわかるかもしれない。

だけど悪質プレイヤーとして散々PKしまくった私がいうのもなんだが、相手の手の内を事前に鑑定するという一種カンニングめいた事はしたくないのだ。

相手の手の内は同じ土俵に上がって見定める。

それが魔王の矜持。

と、いう訳で……

初撃かっ飛ばします!

「ファイアーストーム!」

火属性中級広範囲魔法ファイアーストーム。

マグマの雨と肺を灼く程の熱風がエルゼルに容赦なく襲う!

どうだ!!!

「やはり広範囲魔法を選択しましたね!

……水よ、我を守り給え!」

それはゲームにない魔法の言葉。

エルゼルの言葉に応えて水のバリアが彼女を包む。

似たような魔法は存在するが多分エルゼルが発動した魔法と私の使える魔法は根幹が違うように思われる。

マグマの雨と熱風がバリアに直撃し、蒸発する音と水蒸気を生み出した。

チッ!最高峰魔導師の冠は伊達ではないらしい!

完全に防がれてしまった。

「次は私です!現代魔法の真髄刮目せよ!

天の怒りを知れ!!」

瞬間、脳内に警告音が鳴る。

比喩表現ではなく、当たればある一定以上のダメージが確定の攻撃には事前警告がされるようアラーム設定をしていたのだ。

ここ数年聞かない音と共に頭上に光を見た。

ヤバイ!!

私は半ば本能で回避行動に移る!!

直後、直前まで自分がいた場所寸分違わずに雷が落ちた!!

落雷の反動で体が予想より大きく後ろに下がりバランスが崩れる。

たしかにこんなの当たったらある一定のダメージ……もっと正確にいえば体力ゲージの半分は失われるわ!

やべぇ、エルゼル舐めてた!!

落雷跡は大きなクレーターと化していた。

こいつ殺す気できてないか?

「まだですよ!!二連詠唱…神の見えざる手!」

エルゼルの連続詠唱が響く。

え!?次は私の番でしょ!?

ターン制を無視するってずるくね!?

彼女の言葉と共に目の前が光った。

まずい、避けられない!!

咄嗟に防御姿勢をとる。

そんな私に容赦なく雷撃が直撃する!

「ーーぐっ!?」

軽い痛みが走った。

痛み!ゲームではなかった痛みである!

痛みがあるって事はダメージがあったと言う事で体力ゲージが多分減った。

ステータス画面が開かないので確認する術はないが。

今の雷撃は広範囲に及ぶ代わりに攻撃威力を殺したものなのだろう。

雷撃が収まると同時に私の体から紫の光が放たれる。

「!?何それ!?」

「さあね?」

今の光は麻痺状態異常を無効化したエフェクトだ。

しかし、こちらの世界ではそんなもの発動しないらしい。

って事は演技が可能というわけか。

「まあ、いいわ。どう?動けないでしょ?」

「…さて、どうかしら?」

「ふふ…今なら負けを認めれば攻撃しませんよ?」

言葉とは裏腹にするわけないよね?といった表情をエルゼルは浮かべていた。

「まさか?この程度でどうにかなると?」

「やはりそうきますか…」

悲しそうに頭を振るエルゼル。

「でしたら気は進みませんが仕方がありません。

その身で負けを堪能してください!

命まではとりませんから!!

……天の怒りを知れ!」

バカの一つ覚えというべきか、しかし、威力だけは本物なので警告音が再び鳴る。

しかし、私は避けない。

ギリギリまで引きつけてから……避けた!

先程よりも遥か目の前で落雷がおき、私の体に負荷がかかる。

痛みはないので問題視するほどではない。

落雷の影でエルゼルが喜びの顔をして小さくガッツポーズをして見学組にドヤ顔をしているのを確認した。

私を仕留めたと思ったのだろう。

しかし、甘い。

相手の死を確認するまでが戦闘だ。

私は口元を緩めて魔法を紡ぐ。

魔王といえばやはり闇属性だろう?

ゲームにはない魔法を見せてくれたお礼だ、私の得意魔法を味あわせてあげる。

「ダークネスファイア」

闇属性中級単体魔法ダークネスファイア。

発動直後、エルゼルの周囲が闇色の霞に包まれる。

「!?」

エルゼルの混乱が伝わってきた。

だが、その混乱が消え失せる。

霞の中で炎が爆ぜたのだ。

「キャァァァァ!!!」

闇は一瞬で赤く燃え上がりそして3秒後私は指鳴らした。

敵単体を闇で包みその中で炎を爆発させる不可避の攻撃魔法。

特筆すべきは消火のタイミングを術者が決められること。

最長秒数は10秒で1秒毎にゲーム基準で40ダメージを与える。

今回は学習したので手加減して3秒後に消したので死んではいないはず。

闇が晴れ、倒れた彼女は黒焦げでピクリとも動かない。

やべ!アルフレッドに続きやり過ぎた!




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