プロローグ
「最高神様! 早まらないでください!」
「うるさい! やめられるものか。この世界の者は一度根絶やしにしなければまた同じことの繰り返しじゃ」
「そ、そこまでしなくても他に方法が——」
「ないな。既に準備は終わったんじゃ。今すぐに終わらせる」
部下の声を遮り、最高神は腕を高々と上げて叫んだ。
「罪を償うがよい! 愚かな者たちよ!」
この叫びの直後、ある一つの世界は滅亡した。——かと思われた。
「あ、やべ。魔王と勇者残しちまった」
_______________
「ノアの方舟ねぇ」
日曜の昼下がり、高校の部活を腹が痛いという理由でサボった僕、守屋真尋は今「ノアの方舟! 真相に迫る!」 というバラエティー番組を自宅のテレビで見ている。
特別見たいという訳ではなくただ暇だったから見ているだけだ。
「100%信じないって訳じゃないけど……現実的にはあり得ないよなぁ」
神は人々の堕落しきった生活に激怒し、大洪水を起こして滅ぼすと決めた。神と共に歩んできた正しき人 ノアとその家族、動物のつがいだけを残して。
ノア家族と動物のつがいは無事、ノアの作った方舟に乗って生き残ることに成功した。
その後ノアがハトを放ったとか虹がかかったとか色々言い伝えがあるけど、僕は知らない。まぁこんなのがノアの方舟の内容だ。
『ノアが作ったとされる方舟の残骸が実際に発見されたのです!』
アナウンサーの説明とともに古腐れた30センチ大の木片が画面に映る。
一見ただの木片に見えるのは僕だけかな?
「こんな木片一つでテレビが騒ぐような内じゃこの世もまだまだ平和だよなぁ」
まぁ考古学とか神話とか全く素人の僕が偉そうに言うことじゃないんだけどね。でも素人目から見た見解ってのも重要だと思うよ。
そんなことを思いながら見ていると番組は考古学専門家の見解コーナーに移っていった。
『今回の大発見、私は今後の考古学を一転させるような……』
60代程のおじいさんが次々と考えを述べる。きっとこうゆう発見は専門家にとってご馳走のような物なんだろうな……………………ん?
おじいさんの顔面がアップで映されていた画面が突然、白い点が多数ランダムに行き交う画面に切り替わる。スノーライズって奴だ。
「故障かな?」
そう思った僕はテレビの角を軽く叩く。このやり方はまだアナログテレビの時代に母から教わったものだ。果たしてデジタルテレビでも成功するのだろうか。
……しばらく叩いていると僕は自分の意識が薄れていってることに気がついた。
な、なんだ……。意識が……視界が……。
そう感じたのを最後に、僕は完全に意識を失った。
最新話まで読んで頂ければ嬉しいです。