表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/29

【改稿前】

 

 ふと思う。そういえば対超能力者機関(セイバーズ)の翔への依存は取り除いたが、翔自身の心配性にはちっとも手を付けていなかったな、と。


 そう思ったのも本日、定刻前早々に学校に着いた和久に対し、翔が登校したのが遅刻寸前。それに加えて微妙に重たい足取り。

 一応学習はしているようで学校にも来ているし、隈をつくる程にまで切り詰めたりはしていないが。翔をよく知る者には疲れていることが丸分かりだ。


 朝のホームルームを終えて、一時間目の授業に入る前に翔の元へ行く。

「よう、どうかしたのか?疲れているようだが。」

 首の後ろを軽く叩き、理由など分かりきっている問いをする。

「いや、大したことじゃないよ。」

「翔のことだし、どうせ可愛い女の子助けて東奔西走してきたんじゃねえの?」

 健人が横から口を挟む。

 同時に強まる外野の視線。


「まあ何にしろ張り切り過ぎるなよ。」

 やるべきことも終え、用もないので自らの席に戻る。

 席に着いてまずは仕掛けの出来を確認。鞄から小さな機械とマイクロフォンを取り出して耳に当てる。


『…ントに大丈夫なんですか?』

『ああ、心配してくれてありがと。』

 感度良好。首を捻れば聴覚情報通り、佐井と翔の姿が見える。


 先程態々声を掛けに行ったのは、超能力発現により十年分は進んだと言われる

科学技術をもって作られた二センチ四方厚さ五ミリの小型盗聴器を仕掛けるため。その盗聴器は既に翔の首の後ろを軽く叩いた時に張り付けてある。

『気分が優れないようでしたら言って下さいね。』

『分かったよ。』

 左斜め後方、(ようや)く佐井と翔の話は終わったようで、佐井は自分の席へ戻っていく。


 さて、確認も完了したので手元の機器を片付けようと思い――

『…やっぱクラス委員長だし気にしてくれたのかな。』

 ………結構本気で突っ込みたくなった。
















 これといった事態もなく帰りのホームルームへ至り、その後の各々部活動へと移動する時になって和久はマイクロフォンを耳に入れる。

 この盗聴器は翔の動きを知るためだけに調達してきたもの。何故かと問われれば先日拉致してきた捕虜たちの監視へと急がねばならないから。

 現在監視を行っている由恵はもうそろそろ10時間連続労働に突入する頃合であるし、本日は拉致監禁初日のため案外何度も脱出を企てていたかもしれない。休憩させてやらんとな、と思いつつ駅と反対方向へ、より人気のない路地へと移動し瞬間移動する。


 因みに和久の長距離移動方法は、一発目で上空200メートルへ、その後は方向だけ定めて最長距離移動する。

 周囲を確認しながら移動するこの方法では、超能力の使用は大体一秒あたり五回程度になる(何もない海の上などの場合はこれ以上だが)。 よって移動速度は秒速5キロメートル。言い換えれば時速18000キロメートル、マッハ14オーバー。空気抵抗がない瞬間移動だからこそ出るような馬鹿げた速度だ。

 そんな戦闘機もびっくりの速さのお陰か、微調整や重力加速度相殺含めての目的地に着くまでの所要時間は十数秒。何となしに買った名義偽造済みの別荘へと入っていく。


「ふぁー。やっほー和、帰って直ぐで何だけど休ませてー。」

 門扉を越え監視室へ行くとそんな言葉と共に由恵が出迎える。

「あいつらはどんな様子だ?」

「今は落ち着いているけど早朝に一回正面突破。二回目はそっちにも連絡行ったと思うけど窓を割って逃走。そして要望と一緒に拳を出してきたのが三回目。その後も気配を探るような感じで緊張状態のまま。もういい加減疲れたぁー。」

 ぐでー、と机に突っ伏して言う由恵。


「それ以外に変わったことは?」

「特に無ーし。」

「そうか、お疲れ様。着替え終わるまで待っててくれ。そうしたら自由にしてくれていい。」

 和久はその部屋にあった荷物を持ち、奥の一室へと――

「そういえばあの子、和が指南つけることになった子だけど、彼女だけは一度も脱出に参加しなかったよ。」

「………そうか。」

 割りきったというか、本気になったというか、とにかく彼女も彼女のための道を進むことを選んだのだな。


 事後経過を聞き、特に問題は無いと分かって今度こそ奥の部屋に入り着替えようとすると、耳に入れていたマイクロフォンが音声を伝える。

『三沢翔っ!』

 この声は浪岡か?

『うわっ!……って綾華か。どうしたんだ?』

 若干驚いた声の後、翔が予想の裏付けをとってくれる。

『私の家の新たな事業としてマッサージ・エステに進出することになりましたの。という訳でありがたくモニターさせられなさいっ!』

『強要されて感謝しないといけないってどういう………って腕引っ張らないで、後ろの待女さんも押さって、え?何この黒服さんたちは?へ?うわぁぁぁぁぁ………』

 ドタドタと荒い足音を聞きながら着替えを始める。

 丁度いつもの仕事着を取り出した辺りで耳元に遠き学校でどこかの教室が開く音がする。

『あぁ…早く帰るつもりだったのに……』

 弱々しい翔の声、次いで失礼しますと誰かが言ったのが聞こえ、

『へ?な、何がっっあ!ちょ、そ、そこダメ!押さなっっっく、あ、腕はそんな方向に曲がらなってえ?足も?うわっっぐあああぁぁぁぁぁ………』

 ……何やら悲痛な叫びだった気がするが大丈夫か?

 まあここからでは手の出しようがないことなので対処を放棄する。


 着替えて監視室に戻り、由恵に交代を告げると、由恵は寝るけど襲わないでねーとだけ言い残し先の奥の一室に入っていく。

 マイクロフォンを付けたまま椅子に座り、屋内に取りつけた監視カメラの映像を見て――


 そこに女二人ベッドに寝ている姿を見付けて固まった。


 ただ横になっているというだけの雰囲気ではなく、向かい合って寄り添いお互いの顔の距離も僅か数センチ。その上、布団が被さっていて見えないが何やらモゾモゾと動いている。

 こんな時になにやってるんだと呆れ映像を切り替えようとして、ふと動きに違和感を感じる。

 一応確認しておこうと、明ら様に監視カメラだと主張するように取り付けた今見ているカメラの映像からもう一つ隠して取りつけた監視カメラの方の映像へ切り替えたところ、そこに見えたのは、

(……筆談……)

 カメラの倍率を上げその内容を見る。


“このやり方でホントに見付からないかな?”

“大丈夫でしょ、監視カメラからは見えないような体勢にしてあるから”

“でもこんな映像が見られるのかと思うと……”

“あの男も女の方も気まずく感じて余り見ないようにするタイプよ”

(よく分かったな。)

“でも筆談なんだね”

“念には念を、よ”

“それで、どうかしたの?”

“わたしのGPSは取り上げられなかったみたいなの。だから準備が整ったら直ぐにでも助けは来るわ。その時になったらこっちも逃げられるようみんなに伝えて”

(ほう、GPSがあったのか。これはもう既に包囲網が完成していると睨んでいいな。)

“伝えるって、監視があるのにどうするの?”

“今からわたしが一人で特攻を仕掛けるわ。だからその間に”

“そんな、危ないよ”

“大丈夫だって。三戦全敗だけどわたしたちに危害は加えられてないでしょ”

“でも……”

“そうね、だったら伝えた人から順に戦線へ追加投入して”

“うん、分かった。無理はしないでね”

“分かってるって”

(作戦筒抜け。だがいいか、これなら……)

 

 

どうも、更新遅くなってすみません。

模試に始まり進級をかけたテストやらなんやら(進級がかかったのは普段の自分の成績が………)まあ色々忙しかったのです。


さて、言い訳はさておきホントにお待たせいたしました。次回こそは一週か……十日以内に更新する意気込みですので、今後もぜひ読んで下さいm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ