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【改稿前】

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

この辺りは改稿します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怒号と敵意の渦巻く戦場。


激突する両勢力の攻撃を眼下に見下ろし、和久は無言のまま立ち続ける。


「今日はいつもとは違うんだね。」


そう言ったのは由恵。


ピクニックシートを広げ、お茶とお茶受けでのんびりする姿は過去の和久とも重なっていたが、今の和久はその行動をしない。


「ああ。これは始めた者としてのけじめであり責任でもあるからな。」


そう、それは和久が引き起こした戦禍だから。


始まりし、終わりへの計画の序章たる舞台だから。












開幕は昨夜の24:00だった。


組織の侵攻で揺り起こされた翔は早速戦場へ向かう。


敵を倒し、味方を守る。


翔はいつもより軽く戦っただけで退いたことが気になったが、それでもやることはやったので帰ろうと思った。


その時、また警報が鳴った。


そしてまた、翔は戦いの場へ狩り出される。




和久は自らの仕事に忠実に、その姿を見ていた。




「倉石君、翔君が来てないみたいですけど何かあったのか知ってますか?」


戦場へ出る翔を確認した俺は、帰宅し普段の生活サイクルに戻っていた。


しかし翔は鳴り響く警報を前に一人休むことも出来ず、学校には一報入れただけで戦いに身を賭し続けている。


「翔なら家庭の事情で休むって学校に連絡が入っていたぞ。」


そうですか、と肩を落とす佐井。


そんな日常の裏で、お前はまだ、一人セイバーズ最強の力を振るっているのかと思いながら、俺は空を見上げた。


どこかでまた、警報が鳴っている。




学校も終わり、いつもなら気落ちしているやつらを適当に煽るだろう時間も飛ばして早々に帰った。


組織の服を鞄に入れ家を出る。


由恵に電話をしたところ、現在の戦闘区域は二ヶ所だと判明。


俺はそのうちの翔がまだ参戦していない方へ向かった。












そうして俺はこれで約17時間ずっと戦い続けている翔を、唯々(ただただ)眺めている。


超能力を使用している翔に、最初程の動きのキレはなかった。


また一つの戦場を鎮圧し、仲間の制止も振り切って、また次を鎮めようとする。


その強い正義感が故に、誰かが戦っているのを助けずにはいられないから、周りの人間が傷付くのを極端に恐れているから、自分が傷付くのはいとわずに、翔はその手を奮い続ける。


「終わった?それじゃあ次のとこへ見にいく?」


「いや、そろそろ頃合いだ。」


和久はいつものように、順調に進むのが面白くて、そこに自分の手で物語を作り上げる楽しみを感じるように、


「…介入する。」


人に知られない場所に佇み笑う。












戦いは最初から和久のシナリオ通りに動いていた。


自由奔放協会に依頼して組織に持久戦を採決させ、直ぐ退却出来る敷陣を敷き、交代で波状攻撃を仕掛け続けさせている。


組織の有利な点、人員の多さを利用した戦法。


翔ならば、休めと言われても落ち着けず、回復する間もなく立ち上がるだろう。


そこを突いた戦力潰し。


和久は次の舞台へ先回りして、軽くウォーミングアップのようにセイバーズと戦っていた。


由恵は少し離れた場所でもう一つの準備をしている筈だ。


と、そこへセイバーズの援軍が一人やってくる。


それはボロボロになった翔。


翔は疲労に満ちているその体に鞭打って、翔の超能力・肉体強化を使用して密集地帯に突っ込み、交通事故のように一気に四人程薙ぎ倒す。


他の組織の戦力が退却に入るなか、俺は一人物陰に隠れて待つ。


しばらくして、組織の退却は終わる。


セイバーズが被害の確認や報告を行うなか、翔は再び歩きだす。


恐らくまた次の戦場へ行くのだろう。


俺はその翔に真正面から歩いて近付く。


翔は疲労の溜った目をしていたが、それでもこの黒い服を見て敵と認識し、取り残された様な俺を狙いに定めて人間離れした速度で迫る。


力強過ぎると評されたその力は、腕を以って真っ直ぐにこちらの胸に放たれた。


俺はその拳を、


右足を軽く踏み出して避け、


左手で巻き込むように流し、


右手を翔の腋に添えて、


勢いに従い体を捻って右足を引っ掛け、


―勢いよく投げた。


“力強過ぎる”それは強いという意味ではなく、無駄に力が入っているということ。


確かに力強い方がより大きなダメージを与えられるだろうが、それはまともにぶつかり合った場合のみに適応されること。


避けられればより大きな隙を生み出すし、今のように投げられればより大きなダメージを負う。


そして和久にとってフェイントも無ければ確実性も突発性もない攻撃は脅威の対象になり得ない。


一瞬動きが止まった翔だが、直ぐに跳ね起きてこちらに構え直す。


警戒してか、向こうからは仕掛けて来ない。


ならば、


翔に向かって走りながら右手を振りかぶり、射程に捉えると同時に掌底を繰り出す。


翔はその一撃を防御し、その腕を跳ね上げて弾こうとして、


その腕は何にも引っ掛かからず、空を切る。


防御か回避をさせるためだけの牽制の掌底に、大した力は入っていない。


そして思惑の外れたことで生まれた僅かな隙に、和久は翔に肉薄して、右足を軽く上げて、


ダンッ!


大外刈り。


それも、禁じ手の両足刈り。


そして、倒れる翔に合わせて翔の前に構えてあった右手に力を込めて掌底を叩きつけた。


肉体強化していなければ脳に異常が出るような一撃が、戦場を揺らした。




沈黙が流れる。


セイバーズの面々は、自分たちよりずっと強いと妄信していた大黒柱が一瞬で倒されたことが理解出来なくて、呆然とその光景を眺めている。


和久はまた歩きだす。


組織が制圧しようとしていた建物の方へと。


ようやく硬直状態から回復したセイバーズは、和久を化け物でも見るかのように遠巻き取り囲む。


数の多い敵にも物怖じせず毅然と歩く和久の後ろで、カサリと何かが動いた。


振り向かずとも和久には分かっていた。


それが諦めの悪い正義の味方のものだと。


(そうだ。それでいい。)


そうでなければ、まだ小手調べなのに、この人形劇は終わってしまう。


振り向いた和久の目に映ったのは膝が震えているのに挑もうとする友人の姿。


(まだしばらく動いてくれよ。)


糸が切れてしまうのは御免だ。


舞台は整えてある。人形も仲間(ゆえ)が集めた。偶々会った商人(フリースタイルコミュニティ)から道具も買った。序章の終幕まであと少し。後は脚本家(かずひさ)のシナリオ通りに動けばいいんだ。だから、大切な人形(しょう)よ。どんなに傷付こうとも、糸に従い踊り続けろ。


そうヘルメットの下でほくそ笑みつつ、迎撃を繰り返す。


投げ、蹴り、転がし、殴る。


しかし、それでもなお立ち上がる。


思惑通り。正義のヒーローなら立ち上がり続けろ。あと少しで助けが来る予定だから。


倒して、引っ掛けて、流して。


壊れないように、限界を狙って、起き上がる度に地に寝かせる。


そして、やっと待ち侘びていたセイバーズの車が来た。


幾人かの人が降りてきて、迷わず俺に超能力を打ち出す。



―序章、成功―



後はエピローグのようなもの。ちょっとした飾り付けで十分だ。


攻撃は翔から離れることで回避。


その間にそいつらは翔の周りに集まる。


「みんな……やめろ………あいつは…つ……よい…だから…俺が………俺がやらなくちゃ…」


「三沢くん。何もかも一人で背負おうとしなくてもいいんですよ。」


「でも……」


「私たちもセイバーズの一員なんだ。何のために訓練を受けていたと思っている?戦うためだ。お前程ではないが戦える。…それに、一人じゃ出来ない事だってみんなで力を合わせれば出来る。そのための仲間なんだ、こっちの事も信頼してくれよ。」


「…みん…な…」


それでいい。綺麗事でいいんだ。それで強くなるのなら、いくらでも綺麗な舞台で追い詰めてやる。


今度は翔が参戦しない代わり、それ以外の大勢が攻めてきた。


無数の超常現象が縦横無尽に飛び交う中、和久はその全てを避けて戦場に舞を舞う。


爆発、閃光、(つぶて)、それらを見極め誘導し、タイミングよくその中へ身を投げた。


轟音が響き視界がなくなる。


つまりそれは相手からも見えない位置にいるということでもある。


かすり傷一つ無いままその場で片膝と片手をつく和久。


セイバーズからはこう見えるだろう。


大量の攻撃を食らってしまい、倒れるのを何とか耐えようとするように。


視界は明けたが、攻撃は止んだままだった。


達成感に満ちているだろうセイバーズの人間の配置を見て動きを探る。そして緊張感が抜けたと感じた瞬間、最も包囲が薄い場所を突いて駆け出した。


俺は慌てて止めようとするセイバーズに軽く拳を当て逃走した。












「お疲れ様。」


今日は自宅に帰り、家の縁側に出て差し出されたお茶をすする。


「いやぁ、『仲間なんだ、こっちの事も信頼してくれよ。』なんて………なんだか青春って感じだね〜。」


赤く染まる庭を見ながら、由恵は穏やかな顔で語る。


空には既に鳥の姿も無く、傾きつつある太陽は唯一空に浮かぶ雲を照らし、部活帰りと思われる一団は長い影を連れて笑っている。


「大成功だったね。『三沢翔への妄信と自身の過信を壊す』作戦は。」


「俺自ら舞台に上がったんだ、これくらい成功させるさ。」


翔だけに負担のかかるセイバーズの意識の低さが問題だった。


だから、今回はこうして翔を削った状態で人質(しょう)をいたぶり続けた。


「そっちは上手くいったか?」


「もちろん。だから助けも早く来たし、二カ所とも落としたし。」


由恵に任せたのはセイバーズへの偽造報告と扇動。それに、組織の操作だ。


今回の戦いで組織は二カ所の公的機関を落とし、情報を手に入れた。こちらの思い描く通りに行けば、組織はもっと調子が上がっていく筈だ。


「劇は始まった。そうである以上、俺は意地でも脚本通りに進めてやるさ。」


「うん、そうだね。」


ジリジリと山の陰に隠れていく陽のように、ゆっくりと湯飲みを傾ける。


倉石和久、G―13、瞬間破壊(セカンドブレイク)、総帥、囲い込み師(ミスター・エンクロージャー)


いくつもの名を持つその男の舞台が


        始動した。





















「それじゃあ成功祝いに夜と…

「親が心配する前に帰れよ。」






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