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聖剣の勇者と歌姫  作者: ウケッキ
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第一話 二人の日常

※新企画進行中の為、一時凍結中です※


お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです


この小説の挿絵・関連イラストを相棒のあきがニコニコ静画にて書いてくれています。

ニコニコ静画、あきのURL

http://seiga.nicovideo.jp/user/illust/46765238

村はずれの草原。

そこには安らかな風が流れている。

生きとし生ける者、死したモノ……その全てを癒やすかのような安らかな風が。

その風にちなんでこの草原は『鎮魂の草原』とも言われていた。

そんな魂さえも鎮めてしまう草原の風に抗えない少年が一人。

彼は草原に寝転がり、むにゃむにゃと惰眠を貪っている。

日差しも暖か、風も優しいとくれば襲ってくるのは眠気と相場が決まっているのだ。

眠気に抗う事は無意味であると言いたげに彼は寝息を立てて眠っている。

「ぐぅぅ……すぅぅ……ん、うう」

「あ、こんな所にいたんだ。もう、今日は畑の手伝いがあるっていったのになぁ……レオっ! 起きてよっ!」

一人の少女が気持ちよさそうに寝ている少年――レオを起こそうと試みるが彼は微動だにしない。身体を揺らされてもなお、夢の中なのである。

困った顔をした少女は幻想世界の住人エルフの如く、細長く伸びた彼の耳をつまむと思いっきり引っ張った。ぎゅうううという音が聞こえそうな程に。

「いだだだだだっ!? なにすん……あ、アーシャ」

「あ……じゃないよ、今日は朝からおじさんの畑の手伝いがあるって伝えたでしょ。サボってないでちゃんと手伝ってよー」

「えぇ……アーシャがいればいいじゃん――って、いででいだい!いだいって!耳が取れる!わかったからその手、離してくれぇっ!」

「だーめ。離した瞬間、絶対また逃げる気でしょ。その手には乗りません」

レオは少女――アーシャに耳を引っ張られながら泣く泣く草原を後にすることとなったのであった。



「うへー……つっかれた。もう腕が上がらないって」

畑仕事の手伝いを終え、家に帰りついたレオは腕をだらっと下げ、疲れたことをこれでもかとアピールしていた。

その表情は若干、暗い。

対照的にアーシャはというと暗い顔一つせずに寝床の用意をしている所だった。

畑仕事の後、夕飯をおじさんの家でご馳走になった二人が家に帰りついた頃にはすっかり日は沈み、時刻は深夜になろうとしていたのである。

寝床の用意を終えるとアーシャは衣服を脱いで一糸纏わぬ姿になると寝床に潜り込む。脱いだ衣服は綺麗に畳まれて寝床の隣に積まれている。

ちなみにアーシャの身体つきはスリムであり、女子として出るであろう所はほとんどといっていい程にでていない。

スレンダーボディといえば聞こえはいいが、要するにちっぱいである。

まあ、双子の兄しかいないこの状況では余り関係のない事ではあるが。

一切疲れている所を労ってくれないのをみて諦めたのか、しぶしぶレオもアーシャと同じ様に服を脱いで寝床に潜り込んだ。脱いだ衣服はアーシャとは対照的に乱雑に散らばっている。

ことさら多く溜め息をつくレオを見て仕方ないなあといった様子でアーシャは喋りかけた。

「ふふっ……レオってば疲れたーなんて大げさなんだから。いつも剣を振って鍛えてるんだし、あのぐらいは朝飯前じゃないの?」

「うるせぇよ。ああ、なんていうかさ、剣とクワじゃ違うんだよ」

何か違うと言われ、自身に毛布をかけ直しながらアーシャはレオに尋ねた。

「違うって……どの辺が?」

「どの辺ってそりゃぁ……うん、あー……あれだよ、あれ……先っぽの形? とか」

「先っぽの形……? 確かに違うけど、そんなに変わるものなの?」

「変わる変わるってっ。重心とか射程距離とかさー」

ここまで突っ込まれると考えていなかったのであろう、割と適当な答えを一生懸命に返すレオの姿にアーシャはくすりと笑う。

そんな風に双子の兄妹である二人の夜は更けていき、いつのまにか眠りに落ちていくのであった。



「……て。だれ…………き…………は……おね、が…………お」

「んん? 誰だよ……?」

見知らぬ声が耳に入り、レオが気が付くとそこはまっ白い世界だった。

辺りを見回すが誰もいない。

「あれ? アーシャ? おっかしいな、さっきまで俺は家で寝てたはずじゃ……」

次第に風景が色をなし、形をなしていく。

そこは古びた神殿の様な場所であった。

壁には見たことがない模様や紋章が刻まれ、朽ちかけた帯や布が力なく垂れ下がっている。柱に備え付けられた燭台には灯りはなく、ロウソクの類も見受けられなかった。

「どこだ、ここ。見た事ない場所だけど……」

彼が辺りを見回していると、目の前に黒い影が出現する。

それはゆらゆらと揺れ動きながら奥にある大きな扉へと手を伸ばしていた。

その手が触れるか触れないかぐらいの距離になった時、ばちんっと火花が散り黒い影の手は大きな扉に弾かれてしまった。

余り驚いていないのか、黒い影はゆらゆらと揺れているだけだった。

「なんだありゃ。影?」

その声にまるで反応したかの様にぐるりと向きを変えた黒い影は身体を大きく広げると、レオに向かって襲い掛かる。

長く伸ばした黒い手の先端には鋭利な爪が光っていた。

上段から振り下ろす様に迫ってくる爪をレオは咄嗟に横に転がって避ける。

「うわぁっ!? いきなり攻撃ってありかよっ!?」

彼が立ち上がるよりも早く黒い影は地を這う衝撃波を繰り出した。

地面を削りながら迫ってくる風の一撃をレオはまともに受けてしまう。

「ぐぅぅあああーーーっ!」

鈍器で殴られた様な強烈な痛みに襲われながら彼は錐揉み回転しながら吹き飛び、地面へと叩きつけられた。

「い、ってぇ……何なんだよ、ちくしょう……っ!」

とどめとばかりに黒い影は姿勢を低くすると両手を交差させ一直線にレオへと突っ込んでくる。

「やられてばかりだと……思うなぁっ!」

黒い影が到達するよりも早くレオは立ち上がると地面を強く蹴って跳躍、黒い影の突進を上空へ逃げて避ける事に成功した。

眼下では黒い影の爪が交差する様に振られ、空を斬っているのが見える。

「でりゃぁぁっ!」

体重を乗せたレオの右足が上空から眼下の黒い影を急襲する。

そのまま踏み付けた黒い影を足場にして再び跳躍したレオは空中で一回転すると少し離れた地面へと着地した。

黒い影はふらふらとよろめくと空間に溶ける様にして消えていく。

「聖、剣……守護、者…………貴様、覚え……た…………報、告……」

そう呟いて黒い影は完全に消失する。

「聖剣? 守護……? 一体、何の……あれ、な、んか……眠……気が、急に……」

レオは黒い影が呟いた言葉を考えようとしたが……急に襲い掛かってきた眠気に抗う事が出来ず、その意識は深い眠りの海へと沈んでいく。

『見つけた……やっと…………彼なら……』

そう、古びた神殿に見知らぬ誰かの声が木霊するが……それを聞いている者は誰もいなかった。

まずは第一話の読了ありがとうございました。


第一話ですので少し短めです。

次回からはもっと長くなりそうな気がしてます。

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