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ニート、お土産を持っていく。1


 今日はいい天気だ。絶好の外出日和である。

 ダンジョンに行く予定はないので今日は普通の、外出用のドレスに着替えさせてもらう。

 今日はシンプルに薄青のドレスに灰色のボレロを合わせている。

 頭が寂しいので青色のカチューシャをすれば、清楚お嬢様っぽい格好の出来上がりだ。

 パステルカラーも似合うじゃないか――これはパステルカラーじゃないのか?

「お嬢、そろそろ行きますか?」

「そうね。それじゃあ、行ってくるわ、エリーザ」

 こちらもダンジョンとは違い普通のシャツと濃灰色のズボンのハルに声をかけられ、ダンジョンとあまり変わらないように見える普段用のメイド服に身を包んだエリーザに声をかける。

 エルデ達も見送りに来てくれたが、そんなに遠出でもないんだからそこまでしなくても、なんて少し思ってしまった。


「シュタール、シュタイン、御機嫌よう。エルヴィーラ・フォルツァーノですわ」

 ババーンと心の中で効果音をつけながらその店の扉を開いた。

 後ろから「ども」なんて言いながらハルがついてくる。君ももっとやる気だそうよ。

「おや、フォルツァーノ様。ようこそおいでくださいました」

 私たちを迎えてくれたのは少し驚いたような顔をしたシュタインだけだった。

「御機嫌よう、シュタイン。シュタールはお仕事かしら?」

「はい、なにせ急ぎの注文が入ったもので。こちらにどうぞ、お茶をお持ちいたしましょう」

 シュタインに勧められた椅子に座る。確かに耳をすませばごおうごおうとものすごい勢いで燃えている炎の音が聞こえてくる――気がする。

 さすがに炎が燃え盛る音なんて耳を澄まさないと聞こえてこないし耳を澄ましても聞こえないものは聞こえない。

 ハルをちらりと見ると聞こえているのか、それともほかの何かで判断できるのか気にせずお茶を飲んでいた。

「フォルツァーノ様、今日はどうされましたか? ダンジョンの攻略は順調でしょうか」

 世間話としてシュタインがにこにこと尋ねてくる。

 彼は私がダンジョン攻略の途中に気分転換に立ち寄ったと思っているらしい。まあ、確かに早すぎたとは思うけれども。

「攻略は終わったわ。ドラゴンの素材が手に入ったから持ってきたのよ」

「え……?」

 ぽかんとした顔になるシュタインにほら、とドラゴンの血を見せる。

 皮はちょっと大きすぎるし、骨も見たからと言ってわからない気がしたから血を選んだが、目の前に座ったお嬢様がおもむろに赤黒い液体で満たされた瓶を取り出すとかちょっとしたホラーだな、これ。

「少々失礼します」

 まだ実感がわかないらしいシュタインが私に断りを入れて瓶のふたを開ける。

 血液と直接空間がつながったため、この状態で鑑定するようだ。

 使うのは私の魔法を見てヴェッターが欲しがり、試行錯誤して二人で作った≪鑑定≫用の魔法道具だ。

 これまではそれこそ遺跡やダンジョンで見つかった希少な≪鑑定装置≫を使って国王や教会が独占的に利用していた≪鑑定≫魔法だったが、この魔法道具が開発されたおかげでそれなりの商店ではこれが普通に使われるようになった、らしい。

 さすがに権力者のトップが独占していたものを簡単に流通されては困るというわけで、この魔法道具は国預かりとなり、国が許した商店の、首都にある本店のみで使用が許されている状況だが開発者であるヴェッターと協力者のシュタールシュタイン兄弟の店にはこっそりおいてあるのだ。

 虫眼鏡みたいな形なのは国のトップとこの2店にしかない形状で、一般に知られているのはもっと仰々しい、大きな機体だ。

「おお! これは、これはまさにドラゴンの血!! さすがはフォルツァーノ様! こんなに早くダンジョンボスを倒されるとは!」

「うるせえぞシュタイン!」

 あまりの衝撃に普段のシュタインとは思えないほどテンションが上がっていた彼は大声で私を称賛する。

 そんなにうるさいとシュタールが怒らないかしら、と思っていたら案の定、眉間にしわを寄せたシュタールが仕事部屋から飛び出してきてしまった。


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