ニート、考える。
炎と水が激しくぶつかると水蒸気とか出て危険である。水蒸気爆発というやつだ。
そんな普通に貴族生活を送っていれば必要がないことをこんな場面で知り賢くなったわけだが、感心している場合ではない。
私の出した水の壁とドラゴンの炎がぶつかり、両者譲らなかったのだろう。水の壁が水蒸気に代わり、爆発のような現象を起こしたのだ。
幸い、水と風の膜にひびなども入っておらず、私は無事だ。二つの壁にさえぎられて熱風も水蒸気も体にあたることはない。膜の中の温度も快適なままだ。
視界が一時奪われてドラゴンが怒り狂ったように吠えているのも見えている。
私は≪第三の目≫のおかげでドラゴンの居場所もどんな状態化も見えているが、あまり有利になったとは言えない気がする。
ドラゴンが怒りのままに暴れているのでどこもかしこも危険な状態なのだ。しかも鱗が鎧の役割をしているから気を引く程度の攻撃では傷をつけることは難しいだろう。
ドラゴンがとてつもなく強いことはこれで分かった。
このドラゴンを仮に黒炎ドラゴンとしよう。
他の種類のドラゴンとも戦ってみないと比較はできないが、これまで戦った宝喰いと比べれば防御力も攻撃力も段違いである。
「まあ、いいですわ」
このままドラゴンを暴れさせ続けるとエリーザたちも被害を受ける可能性があるしこの部屋がつぶれてしまう可能性もある。
そろそろご退場いただくために、私も少し本気を出すことにした。
まあ、そういうこというやつは大抵主人公に負けるんだけどね、マンガだと。
「エル様……」
「お嬢なら大丈夫ですよ」
私を心配するエリーザの声と、大丈夫だと言いながらも少し不安げなハルの声が聞こえる。
そうね、ここにいるのは私の仲間とドラゴンだけ。
それに、私はラスボスって柄じゃないから負けはしないでしょうね。
私は体中に魔力が巡るイメージを固める。
足に魔力を巡らせ、脚力を上げる。床を蹴って天井に飛び移れるくらいのジャンプ力を手に入れるためだ。
腕には水を纏わせる。炎には水だろ、というとてもシンプルなイメージだ。
ひんやりとする感覚が腕を覆う。
水に腕を付けた、というよりも水を棒状にして腕にぐるぐる巻いているような感覚だ。
そこまで終わると視界が晴れ、≪第三の目≫を使わなくてもドラゴンとエリーザたちを視認できるようになった。
ドラゴンは私を見つけることができたからか少し落ち着いたようだ。
ちょうどいい。
今度は、私の魔法がドラゴンにどれだけ効くか、実践だ。
すぐに倒れない程度には防御力があることを、期待しているよ。




