4・偏見とゲームは色々です
前回ご覧いただいた方は「あれれえ?」とどっかの眼鏡坊やの様に頭に「?」が浮かぶかも知れませんが、先週は間違えて一話飛ばして更新しておりました。
謹んでお詫び申し上げます。
今回は(ツイッター関係者は御存じと思いますが)秋風邪の最中でも更新を行うと言う心意気をくみ取っていただければ大変恐縮でございますと、自己弁護と言い訳を謀りたいと思います(言ってるし)
04
ええと……取り乱した。うん、取り乱した。
何だか一般的な日本人としては聞いてはいけない話を聞いた気がした……うん、気にしない気にしない。気にしたら負け。
宗教の話なんて判らないって事で問題なし……なしで良いよね?
「話を戻そう、そうしよう……。
それで、俺はこの世界で死ぬとこの世界で生まれ変わる?」
「絶対とは申せません、わたくしもお嬢様も人の身の上でありますので」
この世界の基準って偏ってる自覚があるから判らないけど……たぶん、アレクもカールも『普通じゃない美貌』の持ち主な気がする。今はまだ、二人ともそこまで年齢が行ってないからマシだけど。
美貌にマシって言い方もどうかとは思うけど、下手をすれば片方だけでも傾国の美女になるな……。
いや、片方は男性だけどね?
恐らく男性だけど……流石に、これだけの絶壁で女性って事はないと思うんだけど……。
「そうね、まだこの身体で死んだ事もないしね」
「この身体以外ならあるんですかね……?」
「さあ……私は判らないわね?」
ちらりと視線をカールに向けるのは何でですかね……これは聞いたら負けな話なんだろうか?
この主従、どうにも視線での意思伝達する事が多くて困る。いや、別に俺は元はこの二人の関係に割り込んだ形になるわけだから……あくまでも恋愛関係ゼロでね、ゼロ。
かと言って、この二人に恋愛感情があるのかと問われると俺みたいな鈍感野郎に理解とか判断とかを求めるのは間違いと言う気がします! とはっきり言いきれる……いや、自覚があるわけじゃないけど。自覚があるのならば鈍感だとか自分では言わないし。
あ、ちなみに言ったのは昔馴染みなんだけど。
「だから、とりあえず死なない様に鋭意努力してね?」
「すごい良い笑顔で言ったっ?」
「ここで悲痛な顔で言うとシャレにならないかと思って……」
「気遣い嬉しいけど余計かも知れないっ!」
「気遣いではないわよ、空気を読んだだけど。
あえて言えば、シオの為の気遣いではなくてこの三人でいる空気と言う所かしら?」
「ああ……なるほど……」
とは言っても、これまでお世話になった事やら当分は見捨てられる事も無さそうだと言う事を考えると足を向けて寝られるわけでもないわけで……結果的に同じだから、別に良いかなあ?
「シオ様はお可愛らしいですね」
「……俺、同性愛者に偏見は持っていないけれど自己対象になるなら全力回避は常に用意万端整えてるつもりなんだ」
「真顔で仰られなくても、わたくしにもお嬢様の御側を離れるつもりは毛頭ございませんので恋愛にかまけている時間は全てお嬢様のお世話に費やさせていただく所存であります。
シオ様は……そうですね、同性であろうと幼子が懸命に努力をする姿は可愛らしいと思われませんか?」
「……言いたい事は判らなくはないけど、外見的に無理ないかな? それ?」
「そうでもないわよ? シオの体格では平均的な少年の部類だもの」
「少年……」
確かに、まだ少年と言えば少年のくくりになると思うけど……。
いや、でも二人の言い方によると少年と言うより幼児に近い扱いって事の様な気が……。
でも俺、この世界に来てから森から出た事ないからなあ。正直言って、比較対象が美少女と美形の二人だけって……あ、召喚直後の事はまた別ね。召喚主の顔もろくに見た覚えもない間に追い出されたわけだし。
そう言う意味からすれば、された事を忘れる気はないけど。きちんと特定の相手にどうにかこうにかしてやろうと言う気はあまりない……覚えてる可能性が限りなくひくいからとか言わなくて良いから。
「これからの鍛え方次第と言う話もないわけではないけれど……それはそれで、伸びしろがあるのではないかと言う期待感は持てるのではないかしら?」
「……それ、本気で言ってます?」
「ご家庭の家系の事情は知らないから、何とも言えないと言う部分があるのは事実よ?」
「お嬢様、心から楽しまれておられている所を心苦しいですが。手加減をなさいませんとシオ様の御心が折れてしまわれるのではないかと……」
「スミマセン、もう少し早く言って貰いたかったです……」
「あらあら、シオは純粋ですのね?」
それ、純粋と書いて心が弱いとか言ってませんかね……言ってますかね?
何ですかカールさん、おやつの名前で人に生ぬるい目で見てませんかね? なんか丁寧な物腰と口調でごまかされている感がするけど、にこやかな笑顔仮面だけど、実は笑顔って言う無表情だけど。
「……所で、アレクはどうして俺の世界の宗教に詳しいの?」
確かに以前から、不思議と言えば不思議だった……まだ出会ってからそんなに日数たってないけど。
あと、アレクだけじゃなくカールもこの世界の基準とするには「異質」だろう。ほとんど覚えていない召喚主の男……たぶん、男は何か色々やって喚いて、それで人の事をぽいって捨てたわけだし。
そもそも、この世界にヘブライあるのか? 宗教とかは世界が違っていても似たような事はあると仮定しても、国や環境が違っても宗教って何となく名前が違っているだけでやっている事があんまり変わっていない気がするとかあるし。
「前にも言ったけど、私の特殊能力が最大の理由ね……それは技術とは異なり可能性や努力と言ったものである程度は何とかなるとか、そう言ったものではないの。だからこその『特殊』ではあるのだけど……通常、特殊能力は声を大にされる事は多くないわ。それこそ、人によっては忌避される事も少なくはないの。だからこそ、私も秘密だと言ったのよ」
なるほど……しかし、スキルとかあるって事はステータスとかあってもおかしくないよなあ?
日本人の憧れ、ゲーム世界へのトリップとかって頭悪いとは思うけど。字面だけ見ると。
しかし、アイテムボックスは青色猫型自動機械並に永遠の憧れって言えば憧れだ……実物大の奴を見た事あるけど、意外に小さいって感じた。確かに、身長も体重も頭周りも胴回りも全部同じサイズな立方体ってのが確か公式記録だからおかしくはないけど。
今じゃ、現実の化学が夢の想像に追いつき始めたと言うのに……何で単体でいきなり逆世界にすとんと落ちるかな……?
「スキルって言うのは、例えばどんなのがあるの? ステータスとかって見えるもん?」
「技術は文字通り技術ですから、練度により性能が変わるのは否めません。ただ、それとは関係なく生きる事は当然可能です。技術のみで左右される世界になりますと、それを商売や引き金となって起きる事件などが懸念されるからではないか、と言われていますが。下手の横好きと言う言葉もありますからね……それらを定めた神ならぬ我々には想像でしかものを語る事が出来ません」
「価値と言う意味からすると、それが高い方が良いと思われがちではあるけれど。場合によってはそれが邪魔になる事もあるから、こだわる必要はないと思うわよ?」
「価値?」
「そうね……地位や身分、状況や情勢を見極めると言う意味で使われる事が多いかしら?
例えば、家庭の主婦と暗殺者では嫌な話だけど技術に頼るなら『短刀』などの刃物に対して技術を習得しておけば活用出来てしまう、けれど熟練の主婦が暗殺を出来るかと言えば難しいだろうし。逆に伝説の暗殺者が高級料理と言われるものを作れるかと言えば、必ずしもそうでもないと思うの」
乱暴な話ではあるけど、主婦は生き物を殺す事が出来るかと言えば。この世界でも流石に肉屋や魚屋と言った物はあるそうだから、自分で狩などをしない限りは出来ないだろう。
一流と言われても暗殺者と呼ばれる様な人も、流石に芸術的な料理を作るのは……立ち振る舞いや目利きと言った物が必要なので必ずしも出来るとは限らないらしい。一般家庭の料理程度ならば個人によるらしいけど。
そもそも、ゲームの画面で見る様な数値としての判定はしないらしい……残念、と言えば。残念かなあ?
「ゴールが見えると思えば、少しくらいの無理は通そうとされるかも知れませんが。己の見極めが出来ずに無茶を行い結果として取り返しのつかない事もございます。時に良い方向へ傾く事もあるかも知れませんが……」
「他の人はともかく、シオに関して言えば悪手なので賛成するわけにはいかないわ」
そう言えば、と思いだす。
アレクは突然目の前に現れて助けてくれた……カールは気が付いたらアレクの側に控えていたけれど、どうして二人は助けてくれるのだろう?
こうして、食事を与えてくれて、戦う術を教えてくれて、戦えない間は守ってもくれた。
しかも、これからは魔法についても教えてくれるらしい……テンション上がるけど!
最初の記憶が悪かっただけに、これは心の底から感謝するけど。
「どうして、助けてくれるの?」
感謝はしている、確かに。
けれど、同じくらい不思議だった。でも聞けなかった。
そんな余裕も無かったと言うのはある……今でもあるとは思わないけど。
「わたくしはお嬢様がお望みだからです」
「ああ……うん、カールにブレがないのは判ってる。なんか悲しいけど判ってる。気がする」
むしろ、そうじゃなかった場合の方が予測がつかない。
と言うより、逆に何を腹黒い事を考えているのかと……。
「何か?」
「イイエ」
逆に予測が着かなかった……うん、知らない事は知らないままでいた方が良いと言う事なんだろう。
多分、恐らく、それはそれとしてそれなりに?
「私は……そうねえ、呼ばれたから。かしら?」
「呼ばれた?」
以前の、この世界に現れる前ならば電話とか誰にとか言えた気がする。
元の世界でも、それなりに色々な局面に立ち会う事はゼロでは無かったから召喚的なものが理論上ではないわけではないと言うのも判らなくはない。想像と言う意味では、実体験したわけではないから厳密にはどう言う事かとは説明出来ないけれど、それを実体験した事がある人って言うのは会った事がある。
そう言う意味からしても、元の世界は平和……平和かな?
親の実家は、「そう言う事」に関して関わり合ある一族だから大多数の人に比べると関わる事は確かにある。幸か不幸か、家族でも他の誰もが「そう言う事」に関われる才能……才能? 体質? は持っていなかった。
でも、上を見ても下を見ても切がない位置に居たから孤独では無かった。一人では無かった。
「同時に、仕事を押し付けたかったからと言うのも否定はしないけれどね?」
くすくすと笑う美少女は世界の宝です、とは思う。
掛け値なしに。
でも、言っている言葉の内容は気にした方が良いのか悪いのか正直判らない。
「そうですね、お嬢様は年齢や地位に似合わずに酷使されておりますので。この様な事も時には必要ではないかと……へい……お父上が何時頃気づかれるかは難しい所ではありますが」
……もしかして、今「陛下」とか言いかけませんでしたかね? カール(仮名)さん?
思わずじっと見つめてしまうと「何か?」と更に笑みを深くされてしまってコメントに困る。
何か不穏当な発言をしようとした、なんて事はないですよね! とすごく言いたいけど「不穏当な発言とは?」と聞かれてしまうと更に答えようがない。
常識がないと、比較検討出来ないから困るなあと言う気はする。1111
続きます
2015/09/26現在で第4話として割り込み更新(初!)機能により差し込みます。
前回ご覧いただきました方は、お手数ですがこちらからご覧いただけば嬉しく存じ上げます……あとがきで言う事じゃないかしら?