16・辿り着いたと思って途中なのはよくある事
wiki先生に言わせると…
脊椎動物亜門・両生綱・無尾目(カエル目)に分類される動物の総称。古称としてかわず(旧かな表記では「かはづ」)などがある。
と言う事です。
て、手抜きじゃないヨ!
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とりあえず、俺の中でアニマリア=カエルと言うのが成り立った。
後で聞いたんだが、アレク曰く「そう言えば、学術用語でアニマリアとはカエルの事を指していたと思う」と言うからこの世界に学術用語があるのかと思えば、『アレクの知っている地球の知識』なんだそうだ。
なんだ、そのご都合的なんでもあり? とか思ったのは当然だろう。
もっとも、アレクに言わせると「惑星一つの誕生から死亡までの全ての記録」をアレクは持っているから咄嗟に検索出来なくて探せない事もあるのだとか……うん、まあ仕方ないかな? よくわからんけど。
「それにしても……アニマリアは基本的に水生生物だと言われているので最も近郊の水場を想定しますと……」
「あ、そうとも限らないかも? カエルは両生類で、ある程度は水が無くても生きていられるから水分があって、出来れば水源が側にある緑の豊かな土地にいるんじゃないかな?」
いや、こっちのカエルが水生生物ならアウトだけど。
とは言っても、アニマリアについては知られていない事の方が多いらしくて……何しろ、発見されたと言う話さえ割と眉唾物扱いなのだそうだ。
見つけたからと言って縁起物扱いだし、見つからないからと言って特に何がある訳でも無い。そうなれば、確かに一定数は常にいるみたいだけど大々的に研究をすると言う意欲はわかないだろう。確かに……てか、一定数って何?
「どんなジャンルにも好奇心をお持ちの方が滅亡しきる事はないと言う事で、ございますよ」
「何ソレ……」
親戚の姉ちゃんの本人曰く「知り合い」とやらの「いばらの道こそ生きる道!」を地で入ってる人みたいなものかな……マイナーカップリングこそ正義とか言われても知らんがな。
どうでも良い話だけど、親戚の姉ちゃんは「友達」と言う言葉が嫌いなんだそうだ……学生の頃は幼稚園から始まって中学校までいじめられていた過去があるらしい。俺が生まれる前の話だから、実際にはどういう扱いの話なのかは知らないけど親達の噂で聞いた事があって、「学校の教師は単に同じ教室に割り振られただけの同類を『友達』と言う言葉でくくって一まとめにし自分達に都合よく問題を外部に出さなければそれで良いと言う放牧状態でいる癖にいざとなったら素知らぬ顔をして逃げるから、あんな奴らが『友達』だなんて言うのならばその程度の奴らに価値は認めない」と言っていたそうだ……変な人だよな。
なので、親戚の姉ちゃんに言わせると「知り合い」が最上級な扱いで「友達」と言うのは土足で踏みにじっても何とも思わない。一族郎党生きたまま火あぶりで滅亡しても大して心が動かない自信がある相手、何だそうだ……怖ぇぇぇぇぇぇぇぇ。
あ、実行したって話は聞いた事ないから。念の為。
「どちらにしても、そう言った方々は無害である事の方が圧倒的に多いので。仮に見つかったとしても気になさる必要はあまりないかと……今の所」
「今の所って何っ?」
「現物が無ければって意味ではないかしら? 人生で一度出会えれば行幸と言われているアニマリアだもの、生息分布図など判ったら高く売れるでしょうねえ……」
なるほど、そう考えると確かに「地図」と言うのは広がれば良いってものでもないと……あと、他に考えられるとしたら領地の住人の数が簡単に変動されたら困ると言うのもあるんだろう。逃げられたら収益にも繋がるだろうし、あまり冒険者とか旅人を職業にしている人は多くはないみたいだし?
そりゃ、商人とかはどうした所で流通とかないと商売は広がらないらしいから? 物好きな旅の商人とかはいるみたいだけど。普通に考えたら、生死の保証もない所に護衛が付いていると言っても魔獣とか普通に出る様な所には商売人もなかなか来ないだろう。特に人形姫の城って言うあたりは僻地も僻地って感じだから、仮に人々が集まるにはどうしたってこれからって事になる。
あと地殻変動とかが起こるのかどうかは不明だけど、アレクとカールの会話から考えると派手な魔術を使う様な、世間で言う「魔法使い」と言われる人もいるのだろう。人気は低いかも知れないけど、こっそり魔法剣士みたいな魔法も剣も使える人はいるのかも知れない……カールは普通に出来そうだけど。
「所で、もし現物とか分布図が見つかったらどうなるかなあ?」
「まあ……シオはチャレンジャーですのね?」
「お止めはしませんが……ご武運をお祈り申し上げる程度でございますね……」
「どんな目に合うのっ?」
にこにこしてるだけの二人って……怖ぇぇぇぇぇぇぇぇ。
何か判らないけど、色んな意味で。
「あれ、でもそうなると……アニマリア? カエル? と他の魔獣とは違うって事?」
確かに、形状としてはカエルは両生類だし他の魔獣は陸上動物とか鳥類とか色々あるよな?
ちなみに、結構旨かったです。
いやだって、普通に食卓に上がったら食べるし! 魔獣の卵とか魔獣のベーコンとか、言われても違いが判らなくてすみませんって感じだし!
……別に言い訳する様な事じゃない、かな?
捌くは慣れた様な慣れない様な……元の世界に帰っても役に立つとは思えないんだけどなあ? とは言っても、こっちの世界でアレクやカールと別れたらどっちにしても必須技能なのも確かだし。うん。
「根本的に異なると言えば異なるけど……その点も、アニマリアの研究者がゼロにならない理由の一つらしいわよ? 比較検討が出来なければ判断つかないもの」
やれやれと言った感じで言うが、言ってる事は間違いではないし……。
「アニマリアは最初から魔獣だったと言われていますが、他の魔獣は途中で変質したものだと言われているのですよ……記録を取ると言う習慣が各国には無かったので言い伝え程度にしか伝わっていないのが残念な所ですね。
ですが、それまで世界には魔獣と呼ばれる存在は無かったと言われています……もっとも、魔力が沸き起こると言うのも無かったそうですから、その辺りに関連性があるのかも知れません。
その辺りの事も、人形姫が絡んでいるのではないかと言われているのです」
「人形姫って、そんな古い話なわけ?」
「いいえ、100年も経っていない話よ? 大体、50年周期くらいで『オカシナ存在』が必ず出て来るんだけど」
その「オカシナ存在」って何……なんで周期が決まってるわけ?
「話に聞いた人形姫の存在について調べたがる者が、時代に継承するのが周期的に起きている。と言えば、想像がつかれるのではないかと思われます」
「……何なんだろうね、それ?」
「本当にね、一体どんな風に前任者が後任者に言うのだか……どちらにしても、親から子だったり師匠から弟子だったりで必ずと言うわけではないのだけど、何故か一人や二人は研究を希望するものが必ず発生するのよ。
生活するにも不便で、それこそ面倒この上ない所だと言うのに。これからは、もしかしたら新しく立ち上がる場所のために少しは住みやすくなる可能性は否定しないけれど、あくまでも可能性に過ぎないのだから物好きとしか言い様がないわ」
「財宝でもあるのかね?」
「さあ……あるのかも知れませんね?」
「あら、そうなの?」
「わたくしは出向いた事がありませんので、何とも申し上げる事は致しかねますが」
「でもさ、本当に財宝があるとしたら見つかってないって事になるんじゃないか? 見つかったのなら大々的にうっぱらうなり何なりするだろうし?」
アレクと二人で顔を突き合わせて考えてみるが、これと言った決め手の話はみつからない……俺もアレクもカールは何か知っている筈だと言う直感はするんだが、何だかカールは口を割る気配もない。それとも、本当に何も知らないんだろうか……?
「売り払えるものであれば、良いのですがね?」
「……どういう意味?」
「カール? 知っているのならば、きちんと教えてくれても良いのではないかしら?」
「いえ、お嬢様。シオ様。
何かを知っているわけではございません、単に……放って置いても城へはそのうちに着くのですから、御自身の目と耳で確かめていただいた方が感動もひとしおではないかと思われます」
嘘、ではないと思う。
本当、でも無さそう。
笑顔の無表情とはよく言ったもので、要するに顔ががちんと固まって動かないって事だもんな……よく出来るものだと感心する。アレクも出来る気がするけど。
実際、元の世界でも本家の奴らとか関係者で派遣された奴は笑ってたり笑ってなかったりする「無表情」は結構いたから見抜ける様になると辛いのなんのって……笑いを堪えるのが。
「んじゃ、カールさんや……その城はどこにあるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁ?」
森を突っ切る所を見られて、一般人に魔獣と間違われて攻撃されるのも色々な意味で困ると言うから森の外周を回って。駆け抜けたいのも山々だけど、速度的に見つかってもまずいからって、のんびりテクテク歩いているんだけど……正直、本当は今すぐ世界の壁でもなんでも壊して帰りたい。帰らないとまずいから。
この世界が。
俺の彼女が「神の愛し子」だと言う事が判って、流石に一瞬だけ顔色を変えたけれど。即座に顔色を固定する事が出来るアレクとカールの年齢が知りたい様な知りたくない様な……そして、出来れば面倒に巻き込まれたくない。
「あちらでございます」
「……あちら? どちら?」
「シオ、先ほどの様にご自分の『目』で見てはどうです?」
「……あ、そっか」
さっきのカエル騒動……アニマリア騒動? で忘れていたが、元は「身体能力」について検証と言うほど大げさではない実験をして驚いたのが始まりだ。やってみたけれどダメでしたになろうが何だろうが、とりあえずやってみなければ始まらない。
「……カールって、アレ見えるの?」
「シオ? 何か見えたの?」
「いや……アレクは見えないわけ?」
「見るつもりがないもの、だから見ないわ」
「……なんで?」
「カールが見るから、私には必要ないわ」
と言うより、周囲に対しては眼球で「見る」ではなく眼球以外の所で「視る」事をしているとかで……さっぱりわからん。
考えるな感じろの世界だと言われたら、そうなのかとしか言い様がない。
「眼球で見ると言うのは、視神経を酷使されますからね……それで弱い所を見せた場合はお嬢様への弱点と取られかねません」
実際、視界が遮られたりするのはかなりの問題だとは思うけど……別に戦闘職と言うわけでもないのだから良いと言う事らしい。確かに、カールもだけどアレクはなおの事「職業は足蹴り技が主体の戦士です」と言われたら色々と疑う……とりあえず世界を。
「遠距離で感知しているのに、同時に遠距離を視認するのは能力が勿体無いと思わない? せっかく等分出来るだけの技術を複数が持っているのだから、その辺りは臨機応変に使わないとね」
「頭が良い? 要領が良い?」
「素直に腹黒いと言ってくれても、構わないわよ?」
「いやいやいや」
確かに、可愛い顔してババンバンとは思うけど。
と言うか、それが日常ってどんな日常?
「一応だけど、純粋に褒める気持ちはあるんだけど?」
「……そう?」
「意外?」
「ええ、正直に申し上げれば……お嬢様の御立場の事もございますが、シオ様の経歴から想像すると別世界の出来事に思われるのではないかと」
「いや、いるし。その別世界」
文字通り別世界。
本当……こっちに来て、何日たってるのかなあ?
この世界の為にも、早く帰らないと。
続きます。




