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anacra  作者: 源 三津樹
11/27

10・偉い人が暴走すると止められる人がいません

ある日突然、見知らぬ場所で意識を取り戻した。

ホラーですね?

ある時突然、鏡を見たら別人だった。

疑いませんかね?

現実を。

無駄に高い能力を持っているシオは、1秒弱で現実を認識してしまったので余計に暴走感激しいと言う感じです。

二度ネタ禁止とも言いますかね?

10




「どこの出入りで討ち入りなのコレっ!

 て言うか、止めないのカール!」」


 自分自身の形状を鏡……最初に作ったのは、魔力で作ったから影響を受けて出来たものだったから黒かったのだと説明された。

 ちなみに、戻ってきて見せてくれたのはカールが持ち歩いている普通の鏡なんだと……とは言っても、ガラス素材ではなくて銅鏡に近いそうだ。薄いガラスを作るには高い技術が必要だとかで、気軽に持ち歩いて衝撃を受けると直ぐに割れるから。そう言う意味でも持ち歩くとなると気を使うそうだ……昔は置き鏡くらいしか無かったらしいから、カールが持ち歩いている時点で時代の最先端って事なのかな?


「参りますわ」

「お供いたします、お嬢様」

「まさかの同意っ?」


 現状を説明すると、ある朝に突然アレクが「シオの召喚主に物申しに行きましょう」と言われた。ちなみに、朝と言ったけど夕食だと思う……徹夜で「せっかくなので夜間訓練などいかがでしょうか、お嬢様?」と言うと言うカールの言葉にアレクが許可を出したわけだ。

 いかに蹴り一発で魔獣を倒せるアレクとは言っても美少女だ……いや、女の子だ。美少女なのは否定しない。

 でも、まだ幼いって程ではないけど成人はしていないだろうと言う気はする。この世界の成人が何歳かは知らないけど、女性なんだし夜はきちんと寝た方が良いだろう事は賛成だ。

 と言うわけで徹夜で森の中に(おど)り出たわけだが……正直、昼間の森の中しか知らないから「慣れて来たかも知れないなあ」なんて余裕が出て来たのは甘かった。返す返すも甘かった……もしかして、気が緩んだ隙を狙って捻じ込まれたと言う事なんだろうかと言う気がしたけど、時間が足りないと言っていたのだから教育を速めたとか、そう言った方向性なのかも知れない。スパルタ具合が増殖した気がするし。

 こっちは寝不足だし疲れてるし、アレクは血界の中で寝ていただろうからいつもの様にお肌つやつやできりっとしているし、何で一緒に徹夜明けの筈なのにカールがピンシャンしているのかは……もう、カールだからで良いけど。


「て、人が目を離した隙に……!」

「さあさあシオ様、一晩の徹夜ごときで顔色を悪くされるなど若くていらっしゃるのに修業が足りませんよ? わたくしなど……」

「一晩じゃなくて一昼夜なんだけど!」

「あら、カール? もしかして一日中シオを運動させていたのかしら?

 卒業試験前には、流石にハードではないかしら?」


 どうしたものかと、働かない脳みそで必死こいて考えていたらいつの間にかカールに二の腕からスクラムでも組むのかと言わんばかりにがっしりと腕を組まれていた……野郎にひっつかれて喜ぶ性癖はありません!

 反射的にと言うのもあって外そうと努力するが、すでに(何をしていたのかは知らないけど)支度を終えたらしいアレクと、いつもと同じ姿のカールがピクニックにでも行くかの様なノリで「じゃあ、行こうか」と出入り宣言をする……。

 いや、だからどこに行くわけっ!


「あら嫌だ、言いませんでしたかしら……いえ、言わなかったかしら?」

「……アレク?」

「これから先、私は旅の途中の少女と護衛で行こうと思うの。

 その途中で死にかけたシオを拾い、その製造責任者を相手に喧嘩を売る……で、良いかしら?」

「アレクぅぅぅぅぅぅぅぅっ?」

「はい、お言葉は最初は崩されている方が効果的かと思われます」

「ちょっと、カールっ?」


 え……ちょっとコレ、どう言う事?

 誰か翻訳してくれる人を……いや、想像はつく。想像はつくんだ……。

 聞かれるままに、大体夕食の席ってキャンプファイヤーの様に火を囲んで各々が食べたいものを火であぶって食べるスタイルなんだけど。何故に朝が欧州式なブレックファーストで、お昼は大体がお弁当サイズになってて。夜がキャンプなのかは不明な毎日だったなあ……馬鹿みたいに運動量が多いのに疲れすぎるって言う事も無ければ元の世界なら絶対に筋肉痛とか食べ物が受け付けないとかありそうなのに、回復力は時計が無くても格段に早いって言うのがよく判った。

 その際、朝と昼はともかく夜は元の世界の話を聞きたいと言われて。アレクに言わせると元の世界は「歴史として残存しているサンプルの中でも割と初期に近い中期の歴史に近い」と言う話だった……意味が判らない。でも、なんか聞いたら不味そうな空気をカールが出しているから、一応は「ふうん」で流してみたのは、空気を読める日本人だからです。

 と言うより、割とフランクな言葉遣いだとぽろっとこぼす単語がアレクにはある気がする。

 その中で、うっかり出した日本の心時代劇……いや、自宅ではそうでも無かったんだけど祖父母とか本家とかでは高齢者も珍しくなかったから、時代劇が普通に見られていたりしたわけで。そうなると、子供の数は大人よりは少ないから構いたがりがそれなりに居たりしたわけで、そうなると彼女と一緒にテレビや動画を見るのも少なくは無かった。

 んで、普段は平凡な朴念仁(ぼくねんじん)を演じてるけど後半になると人が変わったかのような事をする系統の人の話をした記憶はあります。確かにあります。いやでもだからって、真似しなくても良いと思うのは気のせいですかねぇぇぇぇぇぇぇっ!


「それに、どうせですから一度はこう言う事をしてみたかったと言うのも本音よ?」

「思い切り本音で来たっ!」

「お嬢様がこれほど喜んでおられるのですから、シオ様もお世話になりました身の上である以上は……」

「是非ともお力添えをさせていただきますよ……微力ながら……」


 ちなみに、すでに自力で歩いていません。半分だけ担がれた様な感じで引きずられています……カールの方が身長高いからね、別にチビじゃないからね、平均だから!

 ……すみません、前から数えた方が早いですが彼女の呪いではない事を祈りたい。

 まさかと思うけど、昔「あんまり大きくなったらイヤ」なんて可愛い事を言われてデレたのがダメですか? その直後に彼女の義兄にゴルフクラブで脳天唐竹割り寸前まで行ったなんて言う出来事が、ワンセットでついて来ているんですけど。

 ちなみに、その後で彼女が眼力で義兄を抑えつけたが。その話を聞いた彼女の義父が判る様に舌打ちしてきたものだから、彼女の義母に麺棒で叩かれて半泣きにさせた所。それをたまたま見ていた別の大人に「調理道具で夫を殴るなんて!」と言われたが、事の次第を最初から説明したら義父と義兄が揃って説教を垂れられ……と言うルーティンが一晩中続いた。なんて言う事まで続き、彼女は休ませて貰ったけど全部付き合わされたなんて言う過去もあったりしますけどそれが何かっ?


「と言うか、世界地図的なものなら見せて貰った気がしないでもないけど。森の中の地図なんて知らないからどこからどうやってどの方向でどうするって知らないんだけど、どうするつもり?」

「ああ、そう言えば逃亡防止に周辺諸国の地図しかお見せしておりませんでしたね」

「逃亡防止っ?」

「それは仕方ないわ、どこの方向にどれだけ行けば人がいる。なんて判ったら、好奇心がかられない保証なんて出来る?」

「……ああ、それは難しいかも?」


 別の意味で。そこまでは言わないから、バレていないとは思わないでもないけど。

 だから別にバレても、良いと言えば良いんだけど。

 とは言っても、別に復讐とかそんな高尚な事を考えているわけではない……高尚かな? 単に、そこに召喚した奴がいると言う事は。そこを基点として召喚に関して必要な情報を得られるのではないかと思っただけ。もしかしたら召還出来るかも知れないし? 当人が嫌だって言ったら……今は出来るけど、当時は色々と画策しなければならないと思う。

 元の世界から消え失せた事は、恐らく速攻でバレる気がする。

 本家が才能は持ち合わせていても「向こう側」に入らない事を選んだ子供と周辺を守らなければならないと言う仕事が増えて、一人でも何とか生きていける程度の能力しかない。一定以上には踏み込まないと言う事を判断出来る様になれば守りは外されるかも知れないが、少なくとも能力が開花したばかりで制御も出来ず、ついでに「こちら側」に居座る予定の子供なんていつ爆発するか不明なランダム地雷でしかない。そうなると本家でも余計な仕事が増える事は確かなんだが、そう言う場合はある程度の見極めが済んだ場合は割と暇な人種が送り込まれて来るらしくて「いやあ、多分相手がアレなだけ最終的には無理だと思うけど今の内だけでも本家に入らなくて済んでもらって良かったわ。一度本家に入るとなかなか外に出にくいからなあ」と言うノリの軽い人が派遣されて、うちで時々だけど定期報告がてら夕飯食べてってるから……良いのかどうかは知らないけど。

 とは言っても、別に本家が出入りを制限しているわけではない。とは言っても、大きなお屋敷に出入りすると言うのもなかなか周辺の人目って気になるものだと思う。

 基本、正式な客としては大門(結構でかくて飛び越えるのは無理だと思う)から車で入る事になるけど、あちこちに抜け道じゃないけど人が通れるくらいの小さな門が幾つかある。中には壁にしか見えない偽装扉もあったりするから、教えて貰った時には「どこの忍者屋敷だ?」と思ったものだ。とは言っても、そんな建物がある場所って言ったら都心部とか大都会には難しい話で、そうなると人里離れた場所とか大きな屋敷が建っていても違和感のない環境にしか置けなくなる。有名でないとしても、昔の小ぶりのお城跡地とかね。

 つまり、娯楽に乏しいと。

 流石に一般人を選んだ人は働きに出ないといけないから都会に出る人もいるし、そう言う場所を一時的な仮宿(セーフ・ハウス)として使わせて貰う事もあるそうだ。大体は三人一組くらいで行動しているらしくて、色々と状況に合わせて動いているんだと……どこまで本当かは知らないけどね?


「シオも最低限の知識は会得したと思うし、ある程度は戦う術もあるとは思うの。

 でもね、相手がもしも隷属(れいぞく)の術を魂にかけていたとしたら。どれだけ努力しても簡単にはいかなくなると思うのよね、だから私がやりたいからシオを召喚した相手の顔を見たいの」


 謝らないけどね、とは言われたが。

 本来のアレクの立場からすると簡単に頭を下げたりしてはいけない立場ではないかと言う気がして、でも今は本来の立場ではないから内緒だよって言う意味なんだろう。唇に人差し指をたてて「しぃ」とか言われると可愛いなとは思う。別に恋心は抱かないけど。


「隷属……」


 ぞっとして、首元に手を添えてしまう。反射的に。

 隷属って言うのは、奴隷(どれい)って言う意味で人間扱いもしないと言う意味だ。

 もし、召喚した相手とやらが自分に逆らう事を想定して術を組み込んでいたとすれば。下手をしたら、相手を殺さなければ一生。少なくとも、この「器」が破壊されて魂を取り出すまで相手の良い様にされるかも知れない。

 そう言う意味では、本当にもしもそうだとすれば余程うまい手を使わない限り元の世界に戻る事なんて確率的に低すぎる。と、同時に別の問題が起きる。


「絶対に何とかしないと……」

「シオ……」

「顔色が宜しくないですが、シオ様?」

「気にしないで下さい!」


 ざっ、と足に力を入れる。

 感覚的に判ったのか、カールが僅かに力を逸らして一人で立てる様に重心をずらしてくれるのがありがたい。同時に腕からも力を抜いて拘束を解いてくれた……多分、二人は与える情報を制限していたのだろう。そうして、暴走しないように見守ってくれていた。

 確かに、出会って数日だったら速攻で森の中の物を使って作って旅路の支度を整えて出ていただろうと言う気はする。そこまで器用じゃないけど、木の実や果実をどれだけ揃えれば良いのかも判らないけれど、そうして数日も立たないで獣や魔獣の食事になっていただろう。

 単なる、普通の野営ならばともかく「命を奪う」と言う行為も「リアルアクションゲー」も生死の聞きなんて夢物語でしかなかった日本人では、それは無理な話だから仕方がない。

 でも。

続きます。

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