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7 病院へ行こう




晴夏「よく来たな」


博士「お久しぶりです」


本日の目的地、鈴乃原医院。


大学の先輩で医師の鈴乃原晴夏がロビーで出迎えてくれた。


博士「先輩の実家こんな近所だったんですね」


晴夏「なんだ知らなかったのか」


博士「あんま病気とかしないもんで」


晴夏「そかそか、健康はなによりだね。そんでその二人が」


弓菜「獣道寺弓菜です」


晴夏「え?」


弓菜「獣の道に寺と書いて獣道寺、弓矢の弓に菜の花の菜で弓菜です」


晴夏「常識的に考えてお寺にそんな名前はつけないと思うが」


まあそうだよな、仏教的にはありえないよな。


弓菜「先祖は中国から渡ってきたって聞いてますけど」


中国にもねえだろ。中国ばかにすんな。


晴夏「で、こっちの小さい方は」


歩「愛新覚羅歩」


晴夏「え!?」


歩「愛新覚羅歩。べつにアイシンギョロ歩でもいい」


晴夏「ダメだ、僕にはとても高度すぎて突っ込む気も起きない」


博士「いやいや嘘じゃないですから、こいつん家の表札も昔から愛新覚羅ですから」


晴夏「そっかー、なるほどなー」


先輩には珍しく変な汗が出ている。


晴夏「じゃあ明治期に先祖が清朝皇族にあやかってそう名乗ったんだろう、うん、絶対そうだ」


そうでないと俺も怖い。ガチで満洲国の血族なら俺はこれまでに十回は殺されるぐらい失礼なことをしている。


晴夏「んで、この二人が君の変な薬でオナラが止まらなくなったと」


博士「面目ありません」


晴夏「いやいや、失敗は成功の母だよ、そのチャレンジ精神は評価する、実におもしろい」


チャレンジしたつもりはない。こいつらが勝手に飲んだだけだ。


晴夏「ここのところ僕の仕事は老人の治療がメインだからね、下手にチャレンジすると動かなくなったりするんだ」


ほそろしいことを言うな。


晴夏「最近の年寄りは軟弱だよね」


いつの時代も老人はそんな強靭ではない。


しかもあんたが普段相手にしてるの老人の中でも弱った人たちだからな。


博士「これがその薬と二人から採取したサンプルです、内容データはこちら」


家から用意してきたものを渡す。


先輩はまず薬の方から確認した。


晴夏「ふんふん、匂いは確かにスクルトに似ているね」


データを見ながら鼻歌。


晴夏「スクルト~スクルト~防御力があが~る~スクル~トアト~ムズ~」


この先輩歌ヘタだな。


それからプレパラートを透かし見る。


晴夏「ちょっと訊くが、これどうやって採取したんだい」


ドキッ!


博士「い、いや、それはそう、普通に、普通にしましたよ、それが何か」


晴夏「そうか、普通か、普通にやったか」


ニヤニヤ ニヤニヤ


博士「あ、う、その、少しは普通でなかったかもしれません」


晴夏「普通でないとはどういうふうに普通でないのかい?普通でないやり方とかあるのかい?僕は普通のやり方しか知らないから教えてくれるとありがたいんだが」


ニヤニヤ


博士「い、いえ、やっぱり普通です、普通にやりました」


晴夏「なんだ、やっぱり普通なのか、そっか」


やれやれ。そんなデリケートな部分には食いつかないでほしい。


晴夏「あゆ君、これはどうやって採ったのかね」


歩「ふつうにこうやってやった」


博士「どわあ」


その時のポーズを再現された。


歩「こうやっておしりだして」


博士「ち、違」


晴夏「そうか、そんな格好だったか、じゃあ普通だな」


あゆ、ちょっと考える。


歩「うーん、ふつうよりきもちよかった?」


晴夏「普通より気持ち良かったか、それは何よりだ」


歩「うん、またやりたい、はかせやってくれなかった」


晴夏「それはいけない、ちゃんとしてあげないとな」


ちゃんとって何だよ!


弓菜「ちょっと博士!あゆに何やらせてんのよ!」


博士「ちがう!お前と同じこ……」


ぺちん


博士「どえふっ!!」


ぐわしゃん。


ちょ、その分は昨日殴られただろうが、しかも誤解だ。


まことに理不尽、どれくらい理不尽か三国志に例えると麋芳ぐらい傅士仁。そりゃ関羽もやられますわ。


そして相変わらず擬音とダメージ量の比率がおかしい。


今回は「ゲバス!!」ぐらいの勢いだと思う。


昨日よりは「!」マークがいっこ少ないのでまだ意識は保てている。


縦方向にちょっとだけ潰れたけれど。


晴夏「だが安心したまえ、僕は君たちの博士の先輩だ、彼がやってくれなかったことは僕がやってあげよう」


歩「やったー」


弓菜「やったー、じゃないわよ、何する気よ!」


晴夏「診察に決まってるじゃないか」


弓菜「怪しすぎるわよ!」


晴夏「大丈夫、もっとちゃんとした診察だから」


弓菜「すこしも具体的でない!」


晴夏「わあ嬉しいな、中高生の診察とか久しぶりだ!しかも美少女をダブルで!夢みたいだ!」


くるくるくるー。


踊るな、回るな。どうしようもない本音を口にするな。


晴夏「僕は実家の病院なんて帰ってきたくなかったんだ、こんな死の匂いに満ち溢れた場所なんかには!」


ひどい言い草だな。


晴夏「僕は本当は保健の先生になりたかったんだ、できれば女子高の。中高一貫ならもっといい」


いや保健の先生は養護教諭で医師とは違うだろうが、つか知ってるだろうが。


弓菜「ねえ博士、この先生大丈夫なの?」


博士「腕は確かだ。頭はちょっとな」


一応は信頼している。できれば期待は裏切らないでいただきたい。


見ての通りこの先輩、女の子好きすぎるんだよな。


晴夏「じゃあ君たちはこっちの部屋に入りたまえ」


先輩が診察室への入室を促す。


俺も一緒に入ろうとすると、


晴夏「おいおい、何で君までついてくるんだ、ここからはガールズトークの時間だよ」


ガールズトークて。オバちゃんに片足突っ込んでますやん。


晴夏「うるせえ」


心の声を読まれて追い出された。


博士「俺はどうすれば」


晴夏「どっかで一時間、いや二時間ばかし潰してくればいいよ」


長いな、おい。


晴夏「ああ、ここに折り紙が一枚あるから進呈しよう、暇つぶしに使ってくれ」


ばたん。


扉が閉ざされた。


がちゃり。


ご丁寧に鍵までかけやがった。


仕方ない、鶴でも折ってまた皺をのばしてそれからやっこさんでも拵えてまた元に戻して兜でも作ろうか。ちまちま。


って、やるかい!


誰も見ていないのにしょうもないノリツッコミをしてしまった。


とりあえず一旦家に帰って二時間後にまた迎えに来るとしますか。





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