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3 饒舌なるヒップ



再び弓菜の尻に対峙する。


こやつめなかなかやりおる。このプリプリマンは七人の悪魔超人にエントリーされるぐらいにはやりおる。


とはいえ、もう同じ轍を踏むわけにはいかない。


このままでは尻を堪能するどころではない。


否、診察どころではない。


博士「あのな、先に溜まってるオナラ全部出せ」


弓菜「なっ!バカじゃないの。何でそんなことしなくちゃならないのよ」


博士「いや、わかるだろ。こう至近距離で何度も屁をかまされる身にもなってみろ」


俺はそう言いながら弓菜のお腹に手を伸ばす。


これ以上屁を食らう気にはなれない、ブラックホールでも二発食らえば死んでしまうのだ。


弓菜「あっ、嫌だ」


有無は言わせない。わずかも躊躇うことなく弓菜のお腹を押さえる。


ぎゅっぎゅっぎゅっぎゅっ。


腸を絞るようにゆっくり優しくマッサージを始める。


弓菜「あーっ、あーっ、あーっ、あーっ」


博士「ほら、出せ、全部出せ」


弓菜「あーっ、いやー、あーっ、出るー」


博士「はい、はい、はい、はい」


弓菜「嫌ーっ!いやぁぁぁぁ!出るぅぅぅぅ!オナラ、オナラ出るぅぅぅ!オナラ出ちゃうぅぅぅぅぅ!」


ぎゅっぎゅっぎゅっぎゅっぎゅっぎゅっぎゅっぎゅっ。


更にリズミカルにマッサージを続ける。


弓菜「嫌だっ!くはっ!出るっ!かはっ!出る出る出る出る、オナラ出る!オナラ来ます!来ます!オナラ来る!」


弓菜「あがっ!がーっ!あっ!あっ!あっ!あっ!うわ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


ぶぶーっ


溜まっていたガスの一発目が低い音とともに放出される。


弓菜「んっ、んっ、んっ、んっ」


ぶっ、ぶっ、ぶっ、ぶっ


弓菜の呼吸に合わせて小気味良い連発音、そして


弓菜「ふわわわわわ~~~」


ぶぶう、ぶう、ぶぶぶぶぶう、ばび、ばび、ばびびびびいん、ぼばあ


いまだかつてない大量の放屁で世界が埋め尽くされる。


視界がかすかに黄色がかったような錯覚に囚われる。


弓菜「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


一仕事終えたように速い呼吸を繰り返す弓菜。


ふしゅー、ふしゅー


その肛門も呼吸するように音のない屁をたれる。


博士「まだ出るか」


弓菜「うっ、うん、まだ何か出そう」


博士「何か、って何だよ、オナラ以外のもん出すなよ」


弓菜「出さないわよ、って、ああっ!」


ぷしゅっ。


今度は何かが圧縮されたような音が響く。


博士「あ、痛ッ」


右手に軽い痛みが走る。


見ると血は出ていないが10センチほどにわたって皮膚が切れている。


博士「こっ、これは」


博士「カマイタチか!」


博士「すごいな!お前の尻は風を友とし、風の中に真空を走らせるな!」


弓菜「ばかあ!恥ずかしいこと言うな!」


博士「もうちょっと頑張れば五車星の一角に食い込めるぞ」


弓菜「食い込みたくない、全然食い込みたくない、オナラなんかで拳王の進軍は食い止められない」


博士「まあ科学的にはカマイタチの原因は風の中に真空が起きるからじゃないけどな」


博士「たぶん腸の中に残ってた小さなウンコがオナラで勢いよく飛んで皮膚を切っただけだ」


弓菜「わああ、そっちのほうがもっと恥ずかしい」


博士「飛んだやつはあとで探して掃除しとくよ」


弓菜「探すな!してない!ウンコしてない!」


博士「たぶん相当硬いやつだと思うし、どうせあんまり汚れてないよ」


弓菜「黙れ!語るな!あたしのウンコ語るな!」


博士「はいはい、うるさいな」


博士「ほら、お尻にガラス棒入れるぞ、危ないからじっとしてろ」


そう言って彼女のお尻をぺちぺち叩いて四つんばいを促す。


弓菜「こら、叩くな、お尻叩くな」


ぷう。


弓菜、屁で抗議。


博士「むう、怒りを屁で表現するとか新しいな、近未来のスタンダードにもなりうる表現革命」


弓菜、もはや黙して語らず。


ようやく饒舌が墓穴になる愚を悟ったか沈黙で自分の尊厳を守る。


弓菜よ、お前は正しい選択をした。


この隙に直腸内の粘膜を採取する。ガラス棒ずぶり。


弓菜「ほわあ」


妙な声が漏れたが気にしない。さらにぐりぐり。


弓菜「みょわああ」


これぐらいで充分なのだが念のため、ぐりぐりぐり。


弓菜「ほへっ、へっ、はひ」


おもしろいので駄目押しをしておく、ぐりぐりぐりぐり。


弓菜「あっあっあっあっ、んあああああああーっ」


この様子は後で思い返すかもしれないし、思い返さないかもわからないがとりあえず目に焼き付けておく。


博士「はい終わり」


ちゅぽん、とガラス棒を引っこ抜く。


弓菜「んあ……ん?終わり?」


ちょっと残念そうにしているようにも見えるがどうせ藪蛇になるので突っ込まない。


博士「これから今採取したサンプルを調べるから、今日はもう帰れ」


弓菜に帰宅を促す。


弓菜「終わるまでここにいちゃダメ?」


帰りたくない気持ちもわからんではない。たとえ家族にでもこんなうすらみっともないオナラたれまくり女子となってしまったことは隠しておきたいに違いない。


博士「ダメです、これから顕微鏡を使って細かい作業をします、その際あなたのオナラによる音と臭いと振動は非常に迷惑です」


たいへん心苦しいが冷徹に現実を告げる。


弓菜「ううー、お母さんに何て言おう」


博士「何も言わんでいい。何か訊かれたらヤキイモ食いすぎたことにでもしとけ」


博士「まあでも気の毒すぎて誰も突っ込めないって、きっと弓菜のお母さんも見て見ぬふりしてくれるよ」


弓菜「うわあああああああ」


ごろごろごろ。


おい、床を転がるのはいいがパンツを履け、パンツを履くんだ。


ばふんばふんばふん


追加でオナラ、その勢いで転がっているようにすら見える。


もはやいやらしい感じはまったくしない。


しばらくは幼馴染がどんどんかわいそうな子になっていくのを見守るしかなかった。





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