アイの場合
SENSES アイの場合
日常の中には不思議なことがある。
例えば時間が遅く感じられる瞬間。
私は自分に危機が訪れたとき、その力が現れる。
段差で躓いてこけたとき。
車が自分に突っ込んできたとき。
その時々に応じて私は時間が遅くなり『視野が広がる』。
私だけじゃないはずだ。
こんな経験は誰でもしている。
だけど、これからする話はどうかな?
【世界は死んだ】
ドラゴン、魔物、エルフに天使、悪魔とかとにかく色んなものが世界にあふれかえってしまいました。
人間は無力です。
何を持って奴らに対抗することができますか?
私は何もできませんでした。
力もなく、知力もなく、体力もない。
何を取っても私は非力でした。
しかし、私は生き残っています。
え? 人間か?
よく分かりましたね。人間ですよ。
私は人間です。
簡単に言うと逃げたんです。
父も母も、友人も近所のおじさん、おばさん、先生だったり知らない顔の人、赤ちゃんが泣いていても、犬や猫が吠えて鳴き、奴らに無謀にも挑み、死んでいく。
私は逃げたんです。戦ってなんていません。
でも、私は正しいと思います。
勝てない戦いから逃げて何が悪いんですか?
いつか勝てる日が来る?
そうですね、いつか勝てる日が来るかもしれませんが私が生きている間は無理ですよ。
どんなことをしても奴らに勝てるわけがない。
天使に悪魔ってファンタジーの世界ですよね。
ドラゴンとかもそうですか。
でも、事実……現実に奴らは私の前に現れて大切なものを何もかも奪っていったんです。
奴ら側からすると新天地の開拓とかそんな感じだったんですかね?
本当にいい迷惑です。
私は平和に……平和に過ごしたかったです。
とはいっても何もやられてばかりではありません。人間も馬鹿ではなかったですからね。
武器を持って戦おうとしました。
銃でしたり大砲でしたり、戦車も登場したときは白熱の戦いが見られる……私たちの世界は取り戻せると思いましたよ。
まぁ、そんなの夢物語です。
実際には片手で全てつぶされました。
あぁ、戦車とかそういうのは一撃ですよ? 武器に対しては片手でひねりつぶされました。
夢と武器をかけてみたのですが笑えない冗談でしたね。
ですが、私たちの夢なんてそんな簡単になくなってしまうものです。
最近では奴らも秩序が必要とかいって私たちのことを襲わなくなってきました。
しかし、秩序を守らない奴らはいまだに遊び感覚で弱いものを殺しています。
私は正しくて利口ですが、そういう奴らは許せない。
ですが、逃げます。でも、今回は違いました。
私の周りには悪魔がいます。
すばらしいですね。
あなたも私と会ったばかりにこんなことに巻き込まれて残念でしょうがありませんでしょう?
一対八ですね。
はっきり言うと逃げられません。
私の読みではたとえ逃げられたとしてもそれはこいつらにとっては遊びの一環に過ぎないことです。わざと逃がしてギリギリまで楽しむつもりでしょう。
将棋を思い出します。
王以外の全てを相手から取っているくせにジワジワ追い詰めて本当に駄目だというところで止めを刺す。
本当に【いいご身分】です。
ですが、いいでしょう。
あなた方から私たちが逃げ切れると思っていますか?
『くくく、逃げる気があるのなら逃げられるんじゃないのか?』
あなた方は私とこの人を殺すつもりですか?
『あぁ、遊びだからな。そのまま殺してもつまらない。だからできれば逃げてくれよ?』
そうですか、ルールを決めませんか?
『そんなものを決めてどうする? 俺達がそのルールに従うとでも?』
いいえ、思っていませんがはじめはそのルールを適用したほうがあなた方が楽しめると思うのですよ。だって、ルールなしだと5秒かかりませんよ?
『いいだろう、お前のくだらない考えにのってやろう』
ありがとうございます。では、ルールを言います。ルールは3つ
【一つ、私の目を一度全員見ること】
【二つ、私が逃げてから10秒後に追いかけること】
【三つ、死んでも文句を言わないこと】
以上の三つのルールでどうですか?
『最後のが意味わかんねぇがいいだろう。お前らもいいな?』
他の悪魔たちも頷いてくれました。
よかったです、
【これで逃げられます】
私は全ての悪魔と目をあわし逃げました。
10秒後に彼らはある物を失いました。
怖いですよね、本当に怖いです。
彼らは【仲間を失いましたとさ】。
私は彼らから逃げました。
おや、追いかけてきたのですか?
説明? 必要ないですよ。
私は私が生きるために私のもてる力を全て使っただけです。
それにルールどおりに私は逃げているわけですから問題ないです。
……説明になっていない? 説明する気がないのですから当然ですよ
――――仕方ないですね、そんなに私のことを知りたいなんて困った人です。
私は【正義の魔眼】という力を持っています。
とある条件下で、私が私の正義、私が正しいと思ったことに対して使うことのできる能力です。
そしてそれは【眼に関係ある全てのこと】を実行できます。
さっきの奴らには視力を0にしてそのあと私が幻覚を見せました。
そのせいで自分たちであいつらは殺しあったんです。
今までも何度か使ってきたのですが、先ほどいったようにこの能力はとある条件下で使えます。
その条件は【自分のためにだけ】に使うことができるらしいです。
だから誰かを助けようと思って使うことは私にはできません。
以前奴らに襲われていた人を助けようとしたのですが能力は発動しませんでした。
代わりといいますか、その人が死んで標的が私になった際に発動しました。
だから私には人を助けることなんてできません。
私の目がこんな力を手に入れたのは猛いつ高も忘れました。
ですが、こんな世界ですからね。
私の能力が自分のためだけにしか使えないというなら私は自分のためだけに使っていくだけです。
あぁ、一つ言い忘れましたが、さっきの奴ら一体残っていてあなたの後ろにいます。
能力を使わないか? 残念ですが、今狙われているのはあなたです。
あなたが死んだあとにでも使いますよ。