先生を落とそう
三年は長い
乙女ゲームにはたいてい教師との禁断の恋がある。
いわゆる「大人な恋愛」がテーマのアレだ。
私は、今……それにチャレンジしている。
「藤本先生!私、先生が好きです」
このゲームのすごいところは「いつでもどこでも告白」システムがあることだ。
だから、やる気と勇気さえあれば、授業中でもすることができる。
ちなみに、一応気を遣って放課後を選んでみました。
藤本先生は困ったように笑っている。眼鏡の奥のタレ目が、さらに乙女ゴコロをくすぐる。
「……ありがとう佐藤、でもごめんな」
ソッコー振られた。
「こんなおじさんより、年が近い子と恋愛しなさい」 ……確かに、白髪とか交じった絵柄だけど。
いや、まだだ!藤本先生は優しいから、ぐいぐい押せば行けるはずッ。
ちなみに担任の藤木先生は、ツリ目で怖い。なにかあったら、すぐ職員室に呼んで叱るから、……苦手だ。
というわけで、私のアタックが始まった。
毎日、授業の質問をしに行き、積極的に好意を示した。
「……佐藤、早く卒業してくれ」
とうとうそんな言葉を言ってくれるようになった。
早く卒業して、先生の恋人になりたいなあ。
そして、二年生最後の日が来た。
春休みはどうやって先生を攻略しようかな、とか考えてたら、校長先生の言葉にうっかりゲーム機をぶち落とした。
「藤本先生は、一身上の都合により、イギリスの姉妹校に転勤されます」
えーーー!?なんでッ。
……どうやら、私の告白がPTAと職員間で問題になったらしい。
ついでに板挟みになった先生はノイローゼになって、軽いうつ病を発症してしまったようだ。
おかしい。
私の予定では、そろそろ「大人な関係」になるはずだったのに。
三年になって、先生はいなくなっていた。卒業式に戻ってきてくれて、告白とかあるかなぁとか思ったら、なんと夏休みに「結婚ししたらしい」情報がもたらされた。
……大人って、ずるい。
頑張ったのに……逃げられた……。
……そろそろこのゲーム、疲れてきた。
……リセット。
乙女ゲームの鉄則(偏見)
⑦先生ルートは大人展開
大人のほうが、色々な制約があって大変なのです。
大人だからこそ、大人な展開になれないんです。
……なってしまったら、別の「大人の展開」が待っているからです。……社会的制裁とか。
(シナリオ担当者のつぶやきより引用)