能力とステータス
今までにないくらい、リアリティのある乙女ゲーが発売。
そんな紹介文が、ゲーム雑誌に載っていたのを記憶している。
このゲームは一週間の内、五日が学校パート。二日が休日パートに分かれている。
学校パートでは、朝と昼と放課後の行動が選択できる。マップ上をどこでも移動可能になっている。
また、授業中と夜は自分の能力を上げられる。「知力」「体力」「容姿」の三つ。
それを上げると「信頼度」「魅力」「運」のステータスがあがる。
このバランスが、学校生活を円滑に送る秘訣らしい。
……私は、このゲームの売り「リアリティ」をなめていた。
「問1、『一握の砂』の作者名を答えなさい。」
「問2、四人でじゃんけんをしたときに、全員がチョキを出す確率を答えなさい。」
「問3、遣唐使の廃止を提案し、太宰府に左遷された人物を答えよ。」
「問4、唾液のなかに含まれる消化酵素の名前を答えなさい。」
「問5、上図で示した部分の骨の名称を答えなさい。」
……現在、前期中間テスト中です。5問の問題のうち、3問正解でクリアです。
制限時間は五分。高校一年生レベルと思われる問題がランダムで出題されてます。
……まったくわかりません。
三つの能力、「知力」「体力」「容姿」を上げるときに、授業時間中の選択肢があって、「真面目に受ける」と「内職する」が選べる。
「内職する」を選ぶと「知力」が少し上がるが、授業風景をショートカットされる。その分「体力」と「容姿」もちょっとずつ上がる。
だから私はバランスよく能力を上げるために「内職する」を選んでいた。
その結果。
「佐藤、お前は学校に何をしに来てるんだ」
担任の藤木先生に職員室に呼び出されました。
「前期末もこの調子なら、単位が出ない。最悪の場合留年もある」
留年!?先生、待ってください、まだ六月です!ゲーム開始から、三ヶ月経ってませんよ。
「とりあえず、お前はしばらく部活禁止だ。補充授業に参加しなさい」
えっ、強制参加で放課後の行動ができなくなるんですか。
「授業は大事だといつも言っているだろう。テストについても、授業中を真面目に受けていたなら、ちゃんとできたはずだ」
いつも内職してたので知りません。ショートカットしてました。
「今からこんなことでは、今後の学校生活が思いやられるな。学生の本分は勉強だ、それを肝に銘じなさい」
……その後、楽しいはずの夏休みまで、私は補充授業で学校に行く羽目になった。
そのおかげで、「知力」はしっかり上がったけれど、「体力」と「容姿」はまったく上げられなかった。
そして、ステータスの「信頼度」と「魅力」が大幅に下がった。
こういう所が無駄にリアルだ。
……よし、リセットしてやり直そう。そうしよう。
リアリティを追求しすぎだと思います。
乙女ゲーの鉄則(偏見)
④勉強ができなくても話が進む
※内職→授業時間中に、授業に関係の無いことや、違う教科のことをすること。