その4 或るメイドのつぶやき
私の名はマリエ・ブラウニー
地方領主ハイブリッジ家のお屋敷で現在メイドをやっております
ちなみに私は前世の記憶を持っておりまして、前世においては私はチキュウという世界のニホンという国に住んでいました
そこでの私はしがないジョシコーセーというありふれたジョブを持った一般人の一人でした
あ、いま電波設定乙
とか思いました?
でもホントなんだから仕方ないです
前世において私は不慮の事故により若い身空で死んでしまったのですが身体から離れた私の魂的なモノは天国?的な死後の世界に行くべきところ、胡散臭いなんか神的な存在の手違いによりこの世界へと転生することになったのです
どういうわけか世界のゲームバランスを壊しかねないデタラメなパラメータを持って
これがラノベだったとしてタイトルをつけるならば
『私が転生したら無双だった件について』みたいな
そんなチート設定でもって私はこの世界へと転生したのでした
魔王が討伐され、全ての魔物が駆逐されて半世紀ほど過ぎた
平和なこの世界へと
・・・どうしろと?
ゲームみたいな世界とはいえ何もせずともお腹はすくわけで
転生してから4、5日ほどは目を覚ました古びた教会のある森の中で暮らしてました
幸い冬の季節ではなかったので眠っても凍え死ぬことはなかったし食べ物も果物が木になってたので飢えることもありませんでしたが・・・
あー、でも肉食いてー
とか思ったりもして・・・
まあ、私のデタラメなパラメータを持ってすれば森の動物達を狩って食料にすることもできたんですが、さすがに自分の手を汚してそれをするのはちょっと躊躇われました
ほら、私もともと一般人のジョシコーセーですし
『森のどうぶつたち』とかひらがなで書いちゃったりすると・・・
ブロック肉とかになってれば調理可能ですけどさすがにまるのままはちょっと・・・
そんな事を考えてたとき少し離れた場所から戦闘の雰囲気がしました
なんとなく解っちゃうんです、私
駆け付けてみると一人の少年がオオカミの群れのなか、必死に戦ってるのが見えました
うーわ、素手なのによくやるなー
気絶させられたオオカミが2、3匹、彼の足元に転がってるのが見えました
でも、さすがに多勢に無勢
彼のHPは徐々に削られていきます
あ、転生した私の特殊能力の一つがこれなのですが
全ての対象物のパラメータが解ってしまうのです
彼のHPはまだまだ残量がありましたがそれでも無限ではありません
この状態が続けばいずれは0になってしまうでしょう
私は彼を助けるため飛び出していきました
しかし相手はオオカミとはいえ殺すのは忍びないです
とりあえず平手打ちで気絶させることにしました
30匹ほど張り倒すとさすがに動物でもヤバいと思ったらしく一匹残らず逃げ去っていきました
あー、すごいな私
普通のジョシコーセーはオオカミなんて一匹でも無理だって
「大丈夫ですか?」
そう言って振り返ると目を円くしている少年の顔がありました
おお、なかなかの美形!
どことなく転生前の世界で片思いしてた隣のクラスの桐谷くんに似てるじゃありませんか
「助けてくれてありがとう・・・君は?」
「私はマリエ・・・茶・・いや、えーと、ブラウン・・・ブラウニー・・・そう、マリエ・ブラウニーです」
名を問われた私はそう答えました
前世での名前、好きじゃないんですよね
茶臼岳鞠絵っておばあちゃんみたいじゃないですか?
苗字の一文字を英語にしてブラウン、それだと芸がないのでちょっと捻ってブラウニー
うん、結構かわいいぞ
私のステータス欄にはカタカナでマリエとしか書いてないし別にいいですよね
「マリエ・・・か。可愛らしい名前だね。僕はキリヤ。キリヤ・ロブ・ハイブリッジ。よろしくねマリエ」
ズキュンときました
可愛らしいとか同年代の男の子に初めて言われましたよ
しかも、名前もキリヤって・・・
なんか運命を感じます
惚れた
一目惚れです
よし、決めました
イマイチこの世界での自分の存在理由が見出だせなかったんですけど
彼を攻略してみることにします
タイトルをつけるなら
『勇者として転生したはずの私はなれなかったので男子を攻略することにした』
的な
そう思いつつ彼のステータスを窺いました
おお、線の細い見かけによらず結構高スペックです
でもどんなに目を凝らしても好感度に準じるパラメータは見えません
それどころかこの特殊能力欄にある一文・・・『無自覚に女の子から好感度を得る』ってなんですか!?
つまり勝手にライバルが増えてくってこと?
なんて厄介な・・・
まあいいでしょう
やってやろうじゃありませんか
私の全チート能力を駆使して彼を攻略してやります
そしてハッピーエンドを迎えてやるのですよ、くふふ
その日、私はそう誓ったのでした
(微妙につづく)