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第08話:毒殺 後編

 京一は鑑識課にいた。

 課員から小瓶の情報を聞いている。

「小瓶には指紋が一切付着しておりませんでした」

「そうか……」

 京一は「三課行ってくる」と残して鑑識課を出て三課へ移動した。

猫田ねこた課長」

 三課の課長に声をかける京一。

「おお、高岩くん。一課に移動した君が私に何の用かね?」

「御子柴さんのことでちょっと。三課に青酸の盗難届が出ていないか調べていただけますか?」

「ちょっと待ってくれ」

 猫田がパソコンのキーボードをカタカタと叩く。

「うーん……これかな」

 猫田がモニターを京一の方に向ける。

「なるほど。どうもありがとう」

 京一はモニターに写された内容を覚えると、そう言って三課を後にして一課へ移動する。

「坂巻!」

「何ですか、警部?」

「坂田工業まで行くぞ」

「そこに何があるんですか?」

「青酸がある」

「まさかそこから盗まれたって言うんですか?」

「だから、話を聞きに行くんだよ。分かったら出発!」

 京一と坂巻は坂田工業に向かう。

「こんにちは」

 京一は坂田工業の従業員に警察手帳を見せた。

「こういう者です。青酸が盗まれたことについてお話を伺えないでしょうか?」

「それなら警察で何度も話しましたよ」

「すみません。部署が違うもので。我々は捜査一課です」

「捜査一課って殺人の? え? まさかウチの青酸が殺人に!?」

「恐らくは」

「分かりました。何からお話すればよいですか?」

「青酸が無くなったことに気付いたのはいつですか?」

「先週の土曜日ですね。出社した時、仕事で青酸を使おうと思って保管庫に行ったらケースが壊されていて……。因に、前の金曜日に確認した時はありました」

「では、金曜の夜から土曜の朝にかけてってことですね」

「そうなりますね」

「保管庫見せていただいてもよろしいですか?」

「どうぞ。こちらです」

 従業員が青酸の保管庫へと案内する。

 保管庫はガラスが粉々なっており、青酸が盗まれた痕跡が残っていた。

「ここに青酸があったわけですねえ」

 京一は辺りを見渡す。

「あれは動いてるんですか?」

 京一は監視カメラを指差した。

「ああ、あれですか。あれは盗難騒ぎの後に付けたんですよ」

「そうですか……」

「これじゃあ、青酸カリを誰が盗んだか分かりませんね」

「そうだな……」

(ん?)

 京一は坂巻の言葉に違和感を覚えた。

「坂巻、お前、今何て?」

「誰が盗んだか分かりませんね」

「その前、青酸カリ? そうだよ。お前、何で青酸カリだと分かった?」

「え? それは……」

「秘密の暴露。つまり、お前が犯人ということだ」

「証拠はあるんですか? 僕が御子柴さんを殺害した」

「今のところは」

「警部、そう言うのは証拠が揃ってからにしましょうよ」

「分かった。じゃあそうしよう」

 京一は一人、坂田工業を出て行く。



 京一は警視庁九階喫煙室に設置された防犯カメラの映像をチェックしている。

 映像には坂巻が懐から小瓶を取り出す瞬間が映っている。

 京一はその映像の一部を携帯に保存した。

 捜一に坂巻が戻ってくる。

「坂巻、証拠が出たぞ」

「そうですか。それは是非見たいですね」

 京一は保存したデータを坂巻に見せる。

「これ、お前が懐から出したように見えるが……」

「面白いですね。警部の推理、お聞かせ願えますか?」

「事件の一週間前、お前は坂田工業で青酸を盗んだ。お前はそれを青酸カリと断言した。そのことで俺はお前に疑いを持ったんだ。鑑識の調べによると、確かに青酸カリだった。そして俺は喫煙室の防犯カメラの映像をチェックした。すると坂巻、アンタが青酸の小瓶を懐から出すじゃないか。これはどう説明するんだ? え?」

「映像の通りですよ。僕が御子柴さんを殺しました」

「なぜ殺した?」

「言い寄って来たからです。僕には妻子がいます。なのにしつこいから」

パン──ッ!──京一は坂巻の頬をビンタした。

「馬鹿やろう! そんなことで人生を棒に振るんじゃねえよ!」

「すみませんでした」

「はあ……呆れてものもいえない」

 京一は席に着くと、書類を作成し、坂巻を東京地検に送検した。

何と、坂巻ング降板!

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