第21話:スタントマン殺人事件 後編
クアック・ジャック。
事務員の話で、宮本と仲の悪い人物がいることが分かった。所長の谷丘 尚子だ。
二人が谷丘に直接話を聞くと、谷丘は死亡推定時刻には仕事をしていて、宮本には会っていないと説明した。
「裏取るか」
京一はそう言って、荒川と共に谷丘が事件当夜に仕事をしていた現場へと向かう。
訪れたのは、月活という都内の撮影スタジオ。谷丘は事件当夜、ここでミラクルマンという子ども向けの巨大変身ヒーローのスーツアクトレスをやっていた。
「──と、言うのは事実でしょうか?」
と、撮影スタッフの前橋に訊く。
「ええ、確かに彼女はここにいましたよ。彼女が何かしたんですか?」
「実は、まだ公にされていないのですが、谷丘さんの事務所に所属する宮本さんが殺害されたんです」
「え? 彼、殺されたんですか?」
「ええ。宮本さんに会われたことはありますか?」
「いえ、一度も」
「そうですか。ちなみに、貴方はどこにいました?」
「僕ですか? 八時なら僕は撮影スタッフとして入ってましたけど、何なら他のスタッフに訊いてもらっても構いませんよ」
「そうですか」
京一は考える。真犯人はこの男だ、と。
(だが決定的な証拠がない)
「行こうか」
京一と荒川は他のスタッフの下を訪ねた。
「前橋さんは昨晩の八時ごろ、こちらにいましたか?」
「いましたよ。警察の方が訪ねて来られるってことは、彼が何かしたんですか?」
「いえ、そう言う訳では……」
「事件のことで嘘吐くと犯人隠避になる恐れもありますよ?」
と、荒川。
「バカやろう、そんなこと言うなよ」
「え、そうなんですか?」
「ええ、まあ、そうですね」
「じゃあ言うわ。殺したの前橋くんだよ」
「詳しく話してみて下さい」
「あれは昨夜の七時五十分ごろでした。前橋くんから電話がありました」
事件当夜、前橋から電話がかかってくる。
「ああ、前橋くんか。どうしたの?」
「谷丘さんとこの宮本さん、殺しちゃったよ。どうしよう?」
「と、取り敢えず逃げろ。アリバイは証言してやるから」
「うん、分かった」
「──と言うやり取りをしました」
「そうですか。どうもありがとう」
京一と荒川は前橋の下に急行した。
「あ、刑事さん、どうしたんですか?」
「前橋さん、宮本さんを殺害したのは、貴方ですね?」
「はあ!? そんな男、僕は知らないし、会ったことないですよ!」
「それ。それですよ」
「何が?」
「会ったことないのに、なぜ男だと?」
「そ、それは谷丘さんから聞いてたから」
「では、なぜ殺害時刻をご存知なんです?」
「そ、それは……」
黙りする前橋。
「同僚の方が全て証言しましたよ。昨夜七時五十分、電話をかけたそうですね?」
「……じゃない」
「はい?」
「僕じゃない! 僕はやってない! 第一、凶器のダンベルは見付かったんですか!?」
「ダンベルで殴ったんですか?」
「え?……あ!」
口を押さえる前橋。
「前橋さん、署までご同行願えますね?」
荒川が前橋に近付こうすると、彼が拳銃を取り出した。
「来るな! 撃つぞ!?」
その場で固まる荒川。
京一は荒川の陰で拳銃を出す。
「しゃがめ荒川!」
素早くしゃがむ荒川。
バキュン!──京一の放った弾丸が前橋の拳銃を吹っ飛ばした。
「殺人と銃刀法違反で逮捕します」
京一は前橋に手錠をかけ、拳銃を回収した荒川と共に警視庁へ連行した。




