第17話:葬式後の殺人
前編です。お楽しみ下さい。
長野県長野市。
京一と聡美は聡子のお葬式に出席していた。
実の姉の前で涙を流している聡美。
「姉さん……」
京一が聡美にハンカチを渡す。
「ありがとうございます」
聡美はハンカチを受け取った。
棺の蓋についている小窓が閉められ、火葬炉の中へ入れられる。
部屋を出て行く参列者たち。
その後、火葬が終わったと告げられ、骨を拾いに戻る参列者たち。
全ての骨が骨壺に収められると、参列者たちは部屋を出る。
「さてと……」
京一は駐車場へ向かう。
聡美も後に続いた。
車に乗り込む二人。
「帰ります?」
「そうですね」
京一は車を発進させた。
駐車場を出て東京方面を目指す。
「あら? 何かしら」
「どうしました?」
「止めて下さい!」
京一は車を止めた。
「あれを」
聡美が指を差した先に、人が倒れていた。
「人形でしょ?」
「でも……」
「見てくる」
京一は車を降りて倒れている人に近寄る。
「なっ……!?」
遺体だった。
京一は携帯で警察を呼んだ。
長野県警の刑事たちがやってくる。
「長野県警の倉田です。あなた方が第一発見者の方ですね?」
「はい、そうです」
「お二方の職業は何ですか?」
京一は倉田に警察手帳を見せた。
「警視庁の方がなぜ?」
「亡くなった知り合いの葬式に出てたんですよ」
そうですか、と倉田は言ったあと、聡美の方を見た。
「貴方も警察?」
「いや、私は探偵です」
「では、発見時の状況を詳しく説明していただけますか?」
二人は倉田に発見時の状況を説明した。
「なるほど……」
「倉田さん、被害者の身元は?」
「おーい、マルガイの身元は?」
倉田の問いに被害者の所持品を調べていた刑事が答える。
「山沢 武です」
「山沢 武?」
京一は思い出した。
先日、東京で捜索願が出された人物だ。
「高岩さん、何か心当たりでも?」
「いや、捜索願が出てたなって」
「そうですか……」
「ガイシャの身分証見せていただけますか?」
刑事が山沢の免許証を持ってくる。
「住所は東京……こんなところに一体何の用が?」
「取り敢えず、聞き込みしましょう」
「そうですね」
京一たちは周辺で聞き込みをしたが、有力な情報は何一つ得られなかった。
「東京戻って調べてみるか」
倉田さん──と、京一は続ける。「この事件、東京に手掛かりがあるかもしれません」
「では、お預かりしていただいてもよろしいですか?」
「分かりました。何か進展がありましたら連絡差し上げます。では」
京一と聡美は車に乗り、走り去って行った。
東京に戻った京一は、山沢の家にやってきた。
「山沢 瞳さんですね? ご主人の武さんについてお話があります」
「主人が見付かったんですか!?」
「はい……ですが、残念なことに遺体で、ですけど」
「そうですか」
「そこでいくつかお聞きしたいんですけど、武さんに何か変わった事とかはありませんか? 些細なことで構いません」
「さあ、特になかったと思いますけど?」
「では、誰かに恨まれていたとか?」
「それもないと思います。主人は仕事では成績もよく、人付き合いもいい方でした」
「武さんのお部屋、拝見出来ますか?」
「ええ、いいですよ」
京一は山沢家に上がり、武の部屋へ入った。
「調べてもいいですか?」
「ええ。では、終わったら声をかけて下さい」
瞳が立ち去る。
京一は武の部屋を調べた。
机にメモ帳が置いてある。
そこには行方不明になった前日の日付と、長野市でKと会う、と書かれていた。
(Kって誰だ?)
京一はメモ帳からその一部を取ると、階下で瞳に声をかけて山沢家を後にした。