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第12話:怪しい男

 警視庁捜査一課。

 京一が机にへばりついていた。

「警部、どうしたんですか?」

 沼田が訊ねる。

「暇だな~って」

「事件がないのはいいことです」

 そのとき、事件の一報が入った。

「お、仕事だ! 行くぞ、沼田」

「はい」

 京一と沼田は事件現場へ向かう。

 やって来たのは、杉並区の住宅街にある、如月きさらぎ家だ。

 殺されたのは、この家に住む如月きさらぎ 春香はるか、十四歳。母親が買い物から帰ってくると、変わり果てた姿になっていたという。

「刑事さん、お願いします。どうか、どうか犯人を見付けて下さい。そしたら私がこの手で……!」

「如月さん……。犯人は必ず捕まえて豚箱にぶち込みます」

それで──と続ける京一。「春香さんには恋人はいますか?」

「分かりません」

「春香さんのことで何か変わったことは?」

「うーん……そう言えば、春香のことではないんですけど、この間、探偵さんが来て盗聴器を見つけて下さったんです。もしかしたら誰か家に侵入したのかも」

「盗聴器、ですか。如月さん、その発見して下さったのはどこの探偵ですか?」

「確か、稲川探偵事務所ってところの方だったと思います」

「稲川探偵事務所ですね。どうもありがとう」

 京一は沼田を見る。

「沼田、行くぞ」

 沼田と共に如月家を出る。

 車に乗り、稲川探偵事務所に向かった。

「ようこそ、稲川探偵事務所へ。私が所長の稲川いながわ つよしです。……と言っても調査員は私だけですがね」

「稲川さん、先日、如月さんという方のお宅で盗聴器を発見されてますよね?」

「ええ」

「その家の春香ちゃんが何者かに殺害されましてね、何か心当たりはないかと、話を聞きに来たんです」

「そうですか。え……実はですね、あの後、個人的に調査しましたところ、あの家にはお母さんと春香さん以外に男性が出入りしてるみたいなんですよ。あの家はお母さんと春香さんの二人しか住んでないのでおかしいと思ったんですよね」

「それ、どんな男か分かりますか?」

「小太りで髭面の人です」

「そうですか。貴重な情報、ありがとうございます」

 京一と沼田は現場へ戻った。

「如月さん、小太りで髭面の男にお心当たりございませんか?」

「えっと……もしかしたら、私の知り合いかもしれません。顔を見ればハッキリするかもしれないんですけどね」

「小太りで髭面の知り合いがいるんですね?」

「はい」

「その人の名前、分かりますか?」

川平かわひら 陽介ようすけと言います。その方が何か?」

「実は先程、探偵社に行って話を聞いてきたんですが、どうやら川平さんと思しき人物がこの家に出入りしているようなんです」

「そ、それじゃあ、その方が娘を?」

「まだ分かりません」

「そうですか……」

「取り敢えず、これから川平のところへ伺ってみます」

 京一と沼田は川平の下へ向かった。

 チャイムを鳴らす。

 出て来るのは小太りで髭面の男だ。

 京一は川平に警察手帳を見せた。

「警視庁捜査一課の高岩です。如月さん宅への不法侵入の件で話があるので署の方へご同行願えますか?」

 扉を閉めようとする川平だが、京一がドアに足を挟んだ。

「如月家の春香さんが殺害されています。貴方、何か知ってるのではありませんか?」

「う……」

「ご同行下さい」

 京一は平川を警視庁捜査一課の取調室へ招待した。

「川平さん、如月家に盗聴器を仕掛けましたね?」

「はい……」

「そして何度か出入りもしてますね?」

「はい……」

「それを春香さんに見られ、とがめられたので殺害した。そうですね?」

「俺は殺してない」

 京一は凶器の写真を見せた。

「うちの鑑識がポラロイドで撮影した凶器です。これには犯人の物と思われる指紋がついてます。貴方の指紋と照合してみませんか?」

「……すみませんでした」

「貴方が殺したんですね?」

「はい……」

「侵入目的は何ですか?」

「楓さんの家での様子を知るためです」

「それが盗聴器を仕掛けた理由ですか?」

「はい」

「春香さんを殺したのは?」

「全て刑事さんの推測通りです」

「川平 陽介さん、貴方を家宅侵入罪と殺人の容疑で逮捕します」

「はい。……すみませんでした」

 京一は東京地検に川平を送検した。


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