第01話:不自然な自殺
高岩 京一は警視庁捜査一課の刑事だ。階級は警部。
今日も彼のデスクに一本の電話が入った。
「はい、捜査一課。……はい、分かりました!」
受話器を置く京一。
「坂巻、事件だ」
京一は坂巻 渉警部補に言うと、彼と共に事件現場へ向かった。
現場は警視庁前の桜田門駅からほど近い、住宅街に建つマンションの駐車場だった。
死亡したのはこのマンションの四階に住む三十五歳の男性、倉田 仁。どうやら屋上から転落して死亡したと見られる。
京一と坂巻は屋上に上がり、鑑識の下沢 健に訊いた。
「下沢、何か出たか?」
「いいえ、犯人に繋がるようなものは何も」
「そうか……。第一発見者は?」
「下の階に住む黒沢 聡という方です。今、部屋で待機してもらっています」
「坂巻、行くぞ」
「はい」
京一と坂巻は黒沢の部屋へ向かう。
ピンポン──と、京一はインターホンを押す。
扉が開き、若い二枚目の男性が出て来る。
京一は黒沢に警察手帳を見せた。
「警視庁捜査一課の高岩です。遺体発見時の状況を聞かせてくれますか?」
「はい。あれは僕が家を出る時です。ドアを開けた瞬間、上から何かが落ちて来て、急いで下を見たら人でした。その後、すぐに屋上も確認しましたが、誰もいませんでした」
「そうですか。黒沢さん、貴方のご職業は?」
「警察学校生です。事件を目撃したのは警察学校に戻ろうとした時でした」
「そうか、頑張れよ。で、本当に屋上には誰もいなかったのか?」
「はい」
「亡くなった倉田さんと面識は?」
「全くと言っていいほどありません」
「そうですか。では」
京一と坂巻は会釈をしてその場を離れる。
「警部、どう思います?」
「恐らく自殺だろうな。倉田さんの部屋、確認してみようぜ」
京一と坂巻は倉田の部屋に移動した。
倉田の部屋には、遺書が置いてあった。
遺書にはこう書かれている。生きることに疲れた、と。
「警部、これパソコンで打ち出されてますね」
「そうだな」
「ということは、誰かが倉田さんを突き落として、パソコンで打ち出した遺書を置いたってこともあるのでは?」
「いや、これは自殺だよ」
「そうなんですか?」
「ああ。だって黒沢くんが言ってたじゃないか。屋上を確認したが誰もいなかったって。それに鑑識の下沢だって犯人に繋がるものは何もないと言ってるんだ。だから自殺と判断したんだ」
「そうですか。じゃ戻りますか」
「ああ」
京一と坂巻は警視庁へと戻っていった。




