寝転がって考えるのは貴方のことだった
「試してみようか」で、薔子の一言で海ちゃんがぐるぐるしている(というかさせている)間の、薔子の話。
「あ~、海ちゃんに会いたいよう・・・」
ベッドに寝転がって、考えるのは海ちゃんのことばかり。
昨日会って、ちゃんと充電してきたつもりだったのに。
ニューヨークについて、すぐにこのホテルに来た。
今日は時差ぼけもあるだろう、と言う配慮で、1日オフ。
最終日も買い物があるだろうと言うことで1日オフ。
なんて学会なんだろう、と思いながらゴロゴロする。
真夜中なはずなのに真昼間な街。
時差なんて大嫌いだし、飛行機も好きではない。
仕事だから仕方ないとはいえ、ホテルに着いたらベッドに転がり込むのも仕方ないと思う。
「う~、ねむい~。眠いけど、今寝ると明日死んじゃうな~。」
朦朧とした頭で、考えるのは海ちゃんのことばかり。
機内食に出たワインがかなりおいしかったこと、CAのおね~さんが美人だったこと、
機内で真理ちゃんが飲んでも飲んでも酔ってなくて、さすがに驚いたこと。
ニューヨークに着いたらいいお天気で、気候もよくて、散歩に行きたいと思ったこと。
でも、その散歩は海ちゃんと行きたいと思ったこと。
たくさんたくさん話したいことがあるのに、あなたはいない。
「タイミングあわなそうだから、電話もしないって言ってきちゃったしな~。」
昨日、大好きなカフェで海ちゃんとお茶を飲んでいるときに出張の話をしたのだ。
1週間会えなくて寂しいけど、多分タイミングがあわなくて電話もできないだろう、
ということを。
ベランダに出てみると、ほんとうにいい天気だ。
これはやっぱり外に出てみるしかないだろうか、と思っていると、電話が鳴った。
海ちゃんであるはずがないけど。
出てみれば、真理ちゃんだった。
「ちょっと~、何がっかりしてるよっ!お昼食べに行くわよっ!」
「は~い・・・・・」
ここで寂しがっていても仕方ない、と、思いながら部屋を出る。
しかし、今頃海ちゃんは何をしているのだろう・・・。
真理ちゃんに連れて行かれたのは、ハンバーガーの店だった。
ちゃんと分厚いハンバーグがはさまれているハンバーガー。
付け合せのフライドポテトも美味しい。
「おいしいね~、真理ちゃん」
「当たり前でしょ。一押しだから。」
真理ちゃんはニューヨークに詳しい。
高校を卒業してから1年間留学していたことがあったのだ。
「なんか元気ないわねぇ、どうしちゃったわけ?」
「う~、真理ちゃんが悪いんだよ、あんなこと言うから。」
「何?」
「1週間会わないと、遠藤君私のこと忘れたりしないかしら、とか言うから。」
「何、そんなこと気にしてるの?海君が忘れちゃうんじゃないかって?」
「そうは思わないけど、なんかすごい気になり始めたらどんどん海ちゃんに会いたいの。」
「・・・・・薔子って、じみ~、にかわいい性格してたのね、忘れてたわ。」
「なによそれ~」
「忘れるわけないでしょう、大丈夫、ちゃんと待っててくれるから。」
そうかなぁ、本当かなぁ。
信じているのに、時々不安になる。
いつも海ちゃんが近くにいてくれることが、いまだに奇跡、だと思う。
好きな人が自分のことを好きだと言ってそばにいてくれること、
それ自体が奇跡なのに、それが長く続くなんて。
「幸せすぎて怖いのかなぁ・・・。」
うっかりつぶやくと、目の前にすっかり呆れた顔をした真理ちゃんがいる。
「もう、一生言ってなさい。」
「それいいなぁ。」
「は?」
一生、幸せすぎて怖いと言っていたい。
ということは、一生海ちゃんが私のそばにいてくれる、ってことだから。
あー、早く海ちゃんに会いたいな。
会って話がしたいな。
「でも、こうして真理ちゃんと話してる時間も大好き。それも本当だからね。」
「はいはい、わかってます。思い出したようにフォローしなくてもいいわよ。」
大好きな人がたくさんいる私。本当に幸せだなぁ、って思う。
それも本当。ほんとだよ!
お題は【Abandon】様よりお借りしております。
愛したい10のお題
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