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6人の物語  作者: sanana
ふと気が付いた10のお題
18/26

ああ、居たんだ。

薔子視点。短めです。

平日にお互いの休みが合った木曜日、海ちゃんと美術館に出かけた。

それは私がずっと見たいと思っていたある絵画展で、その美術館自体は2度目。

前回、できたてのその美術館の展示が、すごく見やすかったのを覚えている。

平日の午前中ということで、もっと空いていることを予想していたけれど、

意外と人はいた。

それでも人で絵が見えない、ということはほとんどなくて。

それは作品の大きさによるところも大きいと思うのだけど。


そう、その作品は、ものすごく大きいものが多かった。

アボリジニの彼女は、80歳を過ぎてから初めて絵を始めた。

地面に板を置き、そこに描いていったため、展示方法はどの向きでもいい、

という、非常なるおおらかさに、また驚く。

極彩色の色づかいから、モノトーンの絵にいたるまで、

すべてからあふれる何かに圧倒されつつ、ゆっくりと見て歩く。


こういう展示を見に来たとき、海ちゃんと私は自然と自分たちのスピードで見始める。

初めは隣にいたのが、だんだんと離れていき、追い越し、追い越される。

私はなんとなく海ちゃんの存在を感じながら、絵と一対一になる。

私が先に見終わったときは、なんとなく海ちゃんの隣に立つ。

自分も見たこの作品を、この人はどんなふうに見ているのかな、って思いながら。

でも、あんまり近づいたりジロジロ見ていると、海ちゃんの邪魔をしそうで、

そっと隣に立つ。

しかも進行方向の逆側に、邪魔をしないように。

もちろん、声はかけない。


それでもいくつかを見ているうちに、海ちゃんがふと気づいてくれることがある。

「ああ、居たんだ。」

って、ふっと微笑んで言ってくれる。

私はその瞬間が大好きで、どうしても海ちゃんより先に見終わりたくて、

最後の方はちょっと急いで見てしまっている。

だから、一緒にもう一回見直してちょうどいいくらい。

いつ気づいてくれるかな。

今日も邪魔をしないように、そっと、そっと、隣に立つ。

あなたに気づいて欲しくて。


お題は【Abandon】様よりお借りしております。

http://haruka.saiin.net/~title/0/

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