表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6人の物語  作者: sanana
ふと気が付いた10のお題
13/26

電話の音

うわあ。気が付いたら随分久しぶりになってしまった。

今回は小ネタ2個、って感じです。


携帯電話が鳴ったような、気がした。

音は、なぜかどこかの鐘の音みたいなんだけど。

気がつくと、ポケットになかった。

しまった、着替えた時に上着のポケットに入れっぱなしだった。

音は切ってあるから、誰にも迷惑はかけていないと思うけど。

個人用の携帯電話は、いつも問題ない範囲では、何も反応しない状態でポケットに入れている。

音もならない、震えない。

本当に緊急の知らせは、職場の電話にかかってくるから大丈夫。

友人たちも、出ないときは出られない時、と思っているので、

適当にメールを入れたり留守電を入れたり、その反応も様々だ。

まぁいい、後でタイミングを見計らって取りに行こう。


あまりの空腹感にピークを過ぎた食堂に行ったら、遠藤がいた。

その手元のものは…、小山じゃなくて、特盛りカツカレーか?

「これから昼か?」

「そう、って遠藤も?お疲れ様。」

190センチくらいあって、堂々たる体格の遠藤。

大学時代のアメフトではもちろんディフェンスでバリバリのプロテクターも付けていたから、

試合の時は本気で巨大な冷蔵庫みたいだったなぁ。

話さないわけじゃないけど、割と無口で、若干強面。

案外小さい子供は、その優しい内面を察知して寄ってくるが、逆に大人に一瞬驚かれている。

もう慣れっこみたいで、必ず初めて患者さんと接するときは、一人ではしない。

外来でも、看護士さんに案内してもらっている。

本当に優しいのになー。

たわいもない話をしながら食事をしていると、また電話が鳴ったような気がした。

「どうした?」

「あー。何でもないわ。ところで来週、バッカスのマスターの誕生日らしいよ。

 なんかお祝いしないとね。」

「そうだな、世話になってるからな。」

楽しい休憩時間はあっという間に過ぎ、まずい、時間がなくなった。

携帯電話、またあとで。


「ふう」

仕事が一息ついた。

ああ、もうこんな時間か。

今日はそろそろ帰るか。

着替えようとロッカーに向かうと、またも遠藤に出会う。

しかもなぜか薫先生までいた。

「お疲れ様です。…遠藤とは今日はよく会うな。」

ほんの少し笑った雰囲気を見せながら遠藤が言う。

「珍しくよく会うな。

 …ああ、そうだ、これからバッカスに行こうと話していたんだが、榊原もどうだ?」

「ああ、そうだね、いこうかな。」

着替えながら、携帯を確認すると、あ、着信。

「ごめん、ちょっと待って、留守電。」

これは、電話の音がした、と思った頃の時間帯だなぁ。

君から電話がかかってくると、なんだかわかるようになってきた、気がする。

しかも、鐘の音が毎回聞こえる。

どこの鐘だろう、まぁ、いいか。


留守電を聞くと、きれいな君の声。

バッカスに寄るって、そりゃちょうどいい。

「薔子も寄るって留守電入ってた。

 せっかくだから真理さんとか隆之も来られればいいのにね。」

真理さんと隆之の名前を出した途端、笑顔が返ってくる。

「ああ、真理絵も来るって言ってたぞ。」

「偶然ですね、斉藤さんも来るって言ってましたよ。」

「勢揃いだね、楽しみだ。」


いつか、君と、あの鐘の音を聞くことがあるんだろうか。

それよりもまずは今夜君に会えるのがうれしい。


*******************************************


どこからかヴィバルディの四季、第一楽章「春」の冒頭が聞こえる。

初めて聞いたのは小学校の頃だったろうか。

好きだなぁ、この曲。

と、思っていると、

「だー、もう、これ、どうにかしてくれよ!!!

 はい、捜査一課です!」

という叫び声が。

あ、そうか。

徹夜の仕事明け、少し仮眠をとって書類を作ってから帰ろうと、

俺は仕事部屋の片隅で、毛布にくるまって丸くなっていたのだった。

そしてヴィバルディの四季は、電話の音。


数日前から、なぜか捜査一課の電話の音が変わった。

誰かのいたずらだろうが、直し方がわからない。

わかりそうなやつを連れてくるのを忘れたまま、早数日。

電話と気づくのに遅れ、何回か怒鳴られている。。。


「いい加減に直さないとなぁ。。。」


そう思いながら、ふと考えた。

この電話、あの人の病院のと同じものだなぁ。

ってことは、あの人の部屋の電話の音も変えられるってことか。


俺は帰りがけに、電話の音の変え方がわかるやつを捕まえようと心に決める。

でもまだ捜査一課の電話の音は変えない。

そしてそのままほんの少しだけ、あの人の病院に行こう。

…数日くらい、電話の音がおそろいでも、許してもらえるだろう?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ