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大人になんてなりたくない

 飽きた__。


 まぁまずは聞いてくれたまえ。

 まず、私は花山香凛。ハナヤマでもカリンでも呼び方はどっちだって良い。えっと…何歳だっけ…。忘れたわ。とりあえず中学三年生でいわゆる受験生だ。

 学年主任の先生がつらつらと話を初めて三分経った。三分しか経ってない?ハッ、よく考えてみろ。よく知らないおじさんが自分の人生について語っているのだ。ぺらぺら、ぺらぺらと。聞いていてつまんないったらありゃしない。「〜ですから…」「皆さんもこうすれば…」なんて言われても、みんながみんなあんたの人生なんか手本にしようとは思ってねぇよ。あんたの体験談なんかこれっぽっちも興味ねぇわ!

 こんな感じでちょっとイライラしながらおじさんの話を聞いているとやっぱり出てきたのはあのセリフ。


「皆さんのために」


 これさ、私だけなのかもしれないけどさ、ほんとにそう思っているのかなって思う。「皆さんのために先生は怒っているんです。」でもさ、完全に八つ当たりのときあるよね?シャーペン落とした音に反応して、「うるさい。集中してないから落とすんだよ。周りの集中力を削ぐようなことすんなよ。あんたのせいでみんなの学力が落ちるんだよ?」とか。意味わからないし。シャーペン落とした音で吹き飛ぶようなペラい授業をしているんですかあなたはって思う。というか先生チョーク落としまくるじゃん。

「先生だってチョーク落とすじゃないですか」

 おぉ、お前勇気あるな。

「口答えすんな、お前態度の点数落とすぞ」

 あ、逃げたー!!というか卑怯だろ!

 結局生徒のほうが舌打ちしながらもひいて終わった。

 正直なところ、言い合いが見たかったところではある。権力を振りかざすとはかっこ悪い。 

 大人って汚いし、所詮身体だけが大きくなった子供だし。絶対にあんなふうになりたくない。

「かーりーん!聞いてる?」

「え、何」

「もう、学年朝会終わったよ?」

「マジか」

 考えても意味のないこと考えていたらとっくに時間が過ぎていっていたらしい。

彩花あやか、結局あのおっさんどれくらい話してた?」

「八分。マジで長かった…」

「ガチぃ?現実逃避しててよかったー」

「ずるいよー」

 おっさんの話なんて聞いてられるかっつぅの!それにしても八分と即答したってことはこいつ、さては時計ばっかり見てたんだな…。私が言うのもどうかと思うがこいつも失礼なやつだなと思う。

「香凛、進路決めた?」

「…まだ。彩花は?」

「うーん…行きたい場所はあるよ」

 そうか、彩花は行きたい場所が決まっているのか…。


羨ましいな_。


 私は大人が提示してくれる将来への選択肢をここぞとばかりに蹴散らしているから、まだ何も決められていない。

 大人が言うことが全て間違っているとは言わない。というか正しいことのほうが多いだろう。でも、受け入れるのは言いなりになるみたいで嫌なんだ。

 分かってて何もしない自分が嫌いだ。

「彩花、ちなみにどこ行くの?」

「私?私はね…。就職」

「え?」

「あはは…。やっぱりそんな反応になるよね…。でもね、私決めたの。おばあちゃんのお手伝いをするって」

「そ、そうなんだ。頑張ってね。私応援してる」

「ありがと」

 正直、応援したくない。

 置いていかれたような、そんな気がした。彩花は、自分で未来を決めて、先に大人になるんだ…。

 大人になんてなりたくない。だけど、みんなに置いていかれたくない。なんてわがままなんだろう。

「香凛?どした?」

「いや、なんでもないよ?」

 精一杯の笑顔を作る。歪だろうか。そんなことは言ってられない。ここで笑わなければ、私が私として居られなくなる。そんな気がした。

「香凛…。あ、教室帰らないと。またね、香凛」

「うん、またね」

 彩花。その名前を呼びたかった。でも呼べなかった。なんだか申し訳なかった。

 私もそろそろ将来について決めなきゃ。

 みんなに置いていかれたくないから。

 将来を計画したところで追いつけるとは思わないが、身体は勝手に動いていた。

 勉強、ちゃんとやってみよう。

 私は教室に足を向けた。

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