第2話:出発、次の行き先と剣の鋭さ
出発から数時間、俺達は馬車に乗っていた。
他にも客は何人か乗っており、ガコンガコンと車体の揺れを感じる度、旅が始まったという実感が増していく気がする。
外を見ると、生い茂る木々たちの隙間から太陽の光が差し込んでいた。
「そういえば、最初の行き先はもう決めてるんすか?」
周りの話声が小さく聞こえる中、隣に座っているオリアが尋ねてきた。
「もちろん決めてるよ。でなきゃあんな意気揚々に城を出ない」
「では…ズバリ!その場所は!」
オリアは冗談交じりに聞いてくると、それに乗るように俺は発表する。
「最初の国は、ラナンキュラスだ!」
高らかに発表すると、周りの客に少し注目される。
というかこの馬車がラナンキュラス行きな時点で分かるだろうに。
俺は恥ずかしさを感じつつ、小さく咳払いをし話を続ける。
「ま、まぁ理由としては、隣国って事と爺さんから聞いてた国だからかな。まずは爺さんが周った国を見てみたいんだ」
「ふむ…」
「ラナンキュラスは初めてかい?」
向かいの男性がこちらに話しかけてきた。
見たところ普通の世帯の人っぽいが、その格好に似合わない高価そうな耳飾りをつけているのが分かった。
男性の質問に頷くとラナンキュラスについて説明をしてくれた。
「ラナンキュラスは通称衣服の国と言われていてね、服や靴、帽子まであらゆる衣類に長けている国なんだ」
隣国ということもあり、ハーデンベルギアとは交流が多い。
なので国の概要ぐらいは知っている。
男性は向かい側から俺の隣まで近づいて話を続ける。
「実は私は、ラナンキュラスの王族が運営している博物館の招待券が当たってね、今日はそれを見にーーーー」
ヒヒーン!
ガシャーン!
すると突然馬の鳴き声とともに馬車が大きく揺れ、馬車が慣性で横に倒れる。
どうやら馬車が止まったみたいだ。
自分や乗客は無事だが、乗客は何だ何だと困惑をしている。
俺は外の様子を確認するため、馬車から降りると…
ギャース!
確実に人ではない雄たけびとともに馬車の前に見えたのは、視界に収めるのがやっとの大きさの蜘蛛の魔物がいた。
その蜘蛛は馬車の行方を遮るように、周りの木々に蜘蛛の巣を張り巡らせ、それに張り付いている。
「乗客の皆さん!早くく逃げて!」
運転手の掛け声を聞き俺を含め乗客たちは逃げようとするが、それに反応したのか魔物はこちらの方に糸を出してきた。
まずい…避けれない…。
一瞬にして悟った俺は、諦めるように腕でガードするように顔を伏せる。
だがその糸は俺達に届くことはなかった。
ジュッという音が聞こえたと思えば、眼の前まで迫っていた糸は何処かに消えていた。
上を見上げると、そこにはあの魔物よりも二、三倍ほど高く飛び上がったオリアが剣を抜いていた。
蜘蛛の糸はオリアが切ってくれたのだろう。
そう思ったが、オリアの持っている剣に違和感を感じた。
「刃が……ない?」
そう、オリアが持っている刃は潰されている刃引きされた剣だったのだ。
あれでどうやって糸を切ったんだ?
そんな疑問を切り捨てるように、空中落下の勢いに乗せて、蜘蛛の魔物の頭と胴の間を狙い剣を下ろす。
ジュー…
魔物はオリアの動きに反応出来ず、体が上下に真っ二つに切り落とされた。
その断面をよく見ると、切られているのではなく溶けているようだった。
オリアは無事に着地しており、あの化け物と対峙しても傷一つなく、凛とした姿勢で立っていた。
「ふぅ」
「お客様、助けてくださりありがとうございました!」
オリアが一呼吸すると、馬車の運転手が彼女にお礼を言った。
それに対してオリアは少し微笑みながら言う。
「いえ、私は護衛の仕事を全うしたまでです」
他の乗客たちも彼女に感謝を述べていた。
それに続けて、俺もオリアに近づき感謝を伝える。
「ありがとうオリア。俺の護衛としての初仕事にしては獲物が大きかったかい?」
オリアは剣を鞘に納める。
「いえ!まだまだ大きくても問題なしっすよ!」
さっきと同一人物とは思えない元気な返事に少し笑ってしまうと、先程まで話していた男性が俺達に声をかけてきた。
「助けてくれてありがとう。お礼と言ってはなんだが、さっき言った博物館の招待券、ちょうど二つ余っているんだ。受け取ってくれないか」
男性の手には二枚の券が握られており、それを俺達に差し出してきた。
「いいのか?レア物じゃないのか?」
「あぁ大丈夫。これは妻と娘の分なんだが、生憎二人とも用事ができてしまってね。使わないのはもったいないだろう?」
じゃあ……とオリアと顔を見合わせ、その招待券を受け取った。
「乗客の皆さん!出発の準備が整いました!」
運転手の方を見ると、倒れていた車体が起き上がっていた。
馬も無事みたいだ。
俺達は馬車に乗り直し、衣服の国ラナンキュラスへと向かった。
これからもマイペースに投稿していきます。
不定期ですが13時に投稿していこうと思ってます。




