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拝啓、世界の主人公達へ  作者: 藤基ねる
ラナンキュラス編

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1/1

第1話:拝啓、新たな一歩を歩む者へ

連載します。不定期です。所々専門用語が出てきます。よろ

 円卓6紀496年、3月8日、ハーデンベルギア


 本で囲まれた部屋の窓際の椅子に座り、頬杖をつきながら静かに本を呼んでいる青年。

 その窓に小鳥が一羽留まる。

 青年は、チュンチュンと鳴くその鳥に視線を向け話し始める。


「よう、最近の調子はどうだ?」


 それに答えるかのようにまたチュンチュンと鳴く鳥にそっか。と答える。

 すると部屋のドアからノックが聞こえる。


「アーヴァ様、お父様がお呼びです」


 その言葉に青年、アーヴァは少し顔を顰めながら答える。


「分かった、今行くよ」


 本をそっと閉じ、ため息をしながら部屋を出た。


 ーーー


 コンコン


 豪勢なドアを叩き、失礼しますと戸を開ける。

 目の前には少し髭が目立つ高そうな服を纏った男が座っていた。


「アーヴァ…」


 その男は俺を見て呆れた顔で言う。


「お前ももう19だ…、部屋に籠り本を読むのはいいが、もう少し王族の自覚を持て…。王位継承権に興味が無いのはもういいとして、何かやりたいことはないのか?」


 その言葉に俺は首後ろに手を当てながら、


「…いや、まだ無いよ…、これから探すつもり…」


 父さんはため息をつき、眉間に皺を寄せながら言う。


「お前は、特別な才能を持っている。それはきっと、人の役に立つ能力だ。それを分かっていれば、自ずと答えは出てくる」

「…」


 俺は言葉を詰まらしていた

 父さんはそんな俺の目を見ながら優しい口調で言う。


「とりあえず、少しは外に出たらどうだ?運動不足は体に毒だぞ」

「うん…そうするよ…」


 俺は逃げるように部屋を出た。


 ーーー


 父さんに言われた通りに、俺は城を後にし街に出ていた。

 それになぜだか兄さん二人もついてきていた。


「まぁ気にすんなって」

「やりたいことなんていつか自然に出てくるよ」


 励まされているがあまり俺の心には響かない。

 それにあまり隣に立たないでほしい。

 俺の身長が170前後に対し、兄さんたちは180を優に超えている。

 まるで俺が小さいみたいじゃないか。

 さらに一番上の兄さんは冷静沈着、もう一人の兄さんは活気に溢れている。

 それに加え二人とも容姿が良い。

 引け目に感じない方が無理である。

 逃げるようにふと周りを見てみる。

 国の中心にある街なのでそこそこ賑わっているが、所々荒んでいる。


「なんだ?」


 歩いていると、一番上の兄さんがなにかに気づく。

 ある一角だけ異常に人が集まっている場所があった。


「すみません。何かあったんですか?」


 それに近づき、集まりの外側の人間に声をかけてみる。


「あぁ…それが、何やら外国人の老人が倒れているらしいんだ」

「外国人?」


 最近では外国人は珍しい。

 すると人混みの中心から女性の声が聞こえてくる。

 俺は人混みをかき分けながら声の方まで近づく。


「誰か!助けてください!医者を呼んでください!」


 人混みの中心には、涙目になっている赤く肩ぐらいの髪の長さの女性とその隣に倒れている老翁がいた。

 彼女の助けの声は周りには理解できていないようだった。


「あの!うちに来てください!」


 俺は咄嗟に声をかけ、彼女はそれに反応すると同時に倒れている老人を背負い、俺の城へと向かった。


 ーーー


「いやー、どうもありがとう。こんなふかふかのベッドで寝かせてもらえるなんて、倒れた甲斐があったのう」


 城の空いている一室を使い、そこのベッドに老人を寝かせていた。

 ここに運んだ後、数分で目を覚ました老人はガハハと冗談を言っていた。

 …本当にわざと倒れたわけじゃないよな?


「とりあえず、落ち着くまでここにいさせてやれ。医者は呼んでおく」


 父さんは俺にそう言い部屋を出る。

 彼らは父の言葉を理解できていない様子だった。


「えっと、父は落ち着くまでここにいていいと、医者も呼んでいると言っていました」


 俺は父さんの言葉をそのまま伝えると、ベッドの隣で座っている女性が目を見開いて言う。


「あなたスゴイっすね!ハルジオン語ペラペラじゃないすか!勉強したんすか?」

「いや、別に勉強したわけじゃないんです。これはーーーー」

()()()()()、じゃろ」


 驚いた。

 老人の言葉に反応し、女性がグイッと顔を近づけ問いかけてくる。


「ファテシル?ファテシラーなんすか!?」

「あ、あぁ…」


 でもなんで分かったんだ?

 この疑問を問おうとした瞬間、老人が口を開ける。


「勘じゃよ、勘」

「…はぁ?」


 よくわからないじいさんだ。

 ただその勘が合っているのは確かだ。


「大方、言語を理解できる能力とかじゃろ?」

「あ、合ってる…」


 これも勘か?

 当たりすぎて怖くなってきた。


「あなた達、一体何者なんですか?」


 他にも疑問はあるが、一番気になることを問いてみた。

 それに老人は答える。


「しがない旅人…名も無き小市民じゃよ」

「あたしはその護衛っす!」


 旅人とその護衛?

 ますます関係性が分からなくなってきた。


「えっと…、孫と祖父?」

「違う違う、ワシが依頼してるんじゃ」


 そうそうと頷く女性。

 なぜそこまでして旅に出たんだ?

 そんな事を考えているとコンコンと戸を叩く音が聞こえた。

 どうやら父が言っていた医者が来たみたいだ。


「すぐに診察を始めます」


 医者がそう言うと、慣れた手つきでテキパキと診察を始めた。

 でも、こんなに元気に喋っているんだ。

 きっと大丈夫だろう…。


 ーーー


「今夜が峠です」

「え?」


 診察を始めて数十分経過していた。

 医者は終始難しい顔をしていたかと思えば、スっと立ち上がりそう言った。


「あの、お医者様はなんと…?」


 不安そうな目でこちらを見る女性。

 少し言葉に詰まりながらも二人に事実を伝えた。


「その…今夜が…峠だと…」

「!」


 その事実に女性は動くことができなくなるほどに驚いていた。

 だが当の本人は、まるでやはりそうだったかと言いそうな顔をしていた。


 ーーー


「そうか…、本人がいいならここで峠を越えさせてやれ」


 俺は父さんに医者の診断を話した。

 まさかこんなことになるとは…。

 けれど、何故あの老人はあんなに冷静なのだろうか。

 普通、自分の死を伝えられたら取り乱すものだと思うのだが。

 父さんの提案に頷き、老人の部屋まで戻る。

 老人は上半身を起こしていた。


「あれ?」


 付き添っていた女性が居ない。


「あの子なら、ワシの食事を貰いに行ったよ」

「え?それなら使用人に任せれば…」

「ジッとしていられないんじゃと」


 老人は優しく微笑みながら言う。

 だが、すぐに眉尻を下げ悲しそうな表情をした。


「じゃが、約束は果たせそうにないのう」

「約束?」


 そういえば依頼とか言っていたな。

 すると老人は俺に手招きし、先程女性が座っていた椅子に座らせた。


「ワシが彼女に約束したのは、この世界の素晴らしい景色を見せる事じゃ」

「景色…」

「この世界には様々な景色がある、文化がある、個性がある。ワシはそれが見たかったんじゃ。」


 それが旅に出た理由…。


「あの子もそれについてきてくれた。一緒に見たいと言ってくれた。じゃが、訪れた国は世界の半分も満たなかったがのう」


 歳には勝てんわい、と冗談交じりに言うが少し寂しげだ。


「ワシらの旅話、聞かせたろうか?」


 そう言うと、爺さんは生き生きとした声色で今までの旅の話を聞かせてくれた。


 黄金の砂で覆われた世界。

 様々な形をした建造物が混在している国。

 すべてが美しい服で着飾られている国。


 そんな物語に胸を踊らせるが、それと同時に俺はどんどん顔が下がっていく。

 その行動力が羨ましく、自分にはないものだと劣等感をひしひしと感じていた。


「夢がないんだ」


 自然と口から出てきてしまっていた。

 正面を見ると、まるで言えよと言わんばかり表情をしており、そのまま流れるように喉を鳴らす。


「あなたはーーーー」

「爺さんと呼べ」


 ふふんと鼻を鳴らしながら言ってきた。

 堅苦しいのはやめようということだろうか。


「…爺さんはやりたいことがはっきりしてる。けど俺は、何事にも興味が湧かない。自分のしたいことがわからない」

「…」


 こんな事、話しても意味ないかもしれない。

 そんな劣情を爺さんはふっとばしてくれた。


「夢がないなら探せばいい」

「え?」


 探すったてどうやって?

 爺さんは体を少し前に倒し、そうだ、となにか思いついたように言う。


「したいことがないなら、ワシがそれを与えてやろう」

「…」


 それって一体?

 俺は答えを待った。

 何故か心を踊らせながら待っていた。



「この世界の素晴らしき景色を見ろ。彼女を連れ、ワシの願いを引き継げ」



 その言葉は俺の脳裏に衝撃を与えた。

 それと同時に様々な景色を想像していた。


 活気高い宴のような町並みの楽しい景色。

 果てしない水平線が見える海の景色

 一面が純白で埋め尽くされている雪の景色。


 それはあまりにも心が弾む光景で、自分もそこに行きたい、見てみたいと思うほどだった。


「どうじゃ?引き継いでくれるかの?」


 その問いの答えに迷いはなかった。


「やるよ。俺は世界を見に行く。素晴らしき景色をこの目に焼き付ける」


 その言葉を聞いた爺さんは安心したように笑って寝転ぶ。


「そうか。それは良かった。それなら心配はいらないのう。彼女を頼んだぞ」


 爺さんは今まで聞いたことがないほど弱々しく言葉を放ち、目を閉じる。


「爺さん…?爺さん!」


 二人で話したこの数分は、これから何があっても忘れることがないだろう。

 確信していた。

 これが俺の人生の分岐点なのだと。


 部屋のドアの奥からは、鼻をすするような音が聞こえた。


 ーーー


 次の日の朝。

 まだ日が登りきっていない時間。

 少し城の庭へ出ていた。


 ここへはあまり来たことがなく、井戸があることに初めて気づいた。

 その井戸で水を汲んでいる赤髪の女性がいた。

 昨日の女性だ。


「やぁ、水を汲んでいるのか?」


 俺は女性に近づき声を掛けると、それに気づき笑顔で答えてくれた。


「はい!なんか手持ち無沙汰で…メイドさんにお願いして、仕事をもらいました!」

「そうか…」


 少し無音の時間が流れていた。

 彼女の顔を見ると、目元が少し赤く腫れているのが分かる。


「俺、あの爺さんと同じように旅に出ようと思っているんだ。あの、もしよかったら君もーーーー」

「オリアっす」

「え?」


 昨日、爺さんと話した通りこの女性を連れて行くために、旅に誘おうとしたら、彼女はそれを遮って話始めた。


「あたしの名前、オリアーヌ・ヘーリオス。オリアって呼んでほしいっす」


 彼女は続けて話す。


「旅に行くんすよね」

「あ、あぁ」

「あたしも連れてってくださいっす!お爺さんの見たかった景色…あたしも見たいんすよ!」


 願ってもない言葉だ。

 俺は片手を伸ばし、握手を求める。


「じゃあ、よろしく」

「はい!あなたの剣として、じゃんじゃん使ってください!」


 彼女と握手を交わし、すぐに出発するから準備しといてくれと伝え別れた。

 俺はその間に、父さんに旅に出ると報告するため父の部屋へと向かった。


 ーーー


 父の部屋の前で息を深く吸い、それを吐いた。

 説得できるだろうか。

 なんて言われるかわからない。

 そんな不安を抱えながらも、俺は戸を叩きドアを開けた。


「父さん、失礼します」


 俺は目を見開いた。

 眼の前に見えるのは、旅に必要な道具や資金だった。


「国を出るんだろう?」

「は、はい…、でもなぜ知って…」

「さっき、庭であの女性と話していただろう。使用人がそれを聞いていてな、急いで準備させた」


 驚きを隠せない。

 まさか出てきたのは否定ではなく肯定、しかも準備も整っていた。


「息子の門出だ。準備はするもんだろう。だがお前も王族だ、とりあえず建前上お前はこの国の外交官として扱う。まぁそんなことは気にせず、旅を楽しめ」

「あ、ありがとうございます。でもなぜそんなに?」

「私は嬉しいのだよ。どんな理由があろうとお前が決断してくれたことが」


 はっはっはっと大笑いしている。

 こんな父さん初めて見た。

 そんなに嬉しいものか?

 でもそんな嬉しそうな父さんが見れて俺も少し嬉しかった。


 ーーー


 城の門の前で、両親や兄弟、使用人たちが俺の旅の始まりを見送ろうとしていた。


「元気でね」

「苦しいよ母さん…」


 俺は母親に抱きつかれていた。

 19歳には少し恥ずかしい。


「兄さんたちも元気で」

「あぁ、いつでも帰ってこいよ」

「でも、心が折れて帰ってくんなよ」


 母さん抱きつかれながら、冗談を言い合っていると後ろから声をかけられる。


「仲いいんすね!」

「ん?まぁ兄弟仲は悪くないかな」


 そんな事を言っていると父さんが近づいてきた。

 母さんはそれに気づき、俺の体に巻き付けていた腕をゆっくり外した。


「アーヴァ、気を付けてな」


 父さんのぶっきらぼうな言葉に、少し苦笑し


「あぁ、もちろん」


 と言った。

 それに頷いた父さんはそのままオリアに目を向け口を開く。


「アーヴァを頼む」


 オリアはその言葉を理解できていなかった。


「俺を頼むって」


 俺がそれを伝えるとオリアはパァと笑顔になり、父さんに言う。


「はい!任せてください!」


 父さんは俺の翻訳を待たずにして頷き、母さんたちの方へ歩いていった。

 俺とオリアは互いに目配せして門の方に体を向かせた。


「じゃあ、行ってきます」


 父さん達に別れの言葉を告げ、オリアとともに歩んでいく。

 後ろからは門出を祝う言葉が飛び交っていた。

用語は追々説明してきます。これからも何卒。

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