表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蘇生人   作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

第4話 未完成のプロダクト

渋谷の雑居ビルの五階。

エレベーターを降りると、壁一面に貼られたホワイトボードと、空のエナジードリンク缶が並んでいた。


「今川です」


返事はなかった。

奥の会議スペースで、若い男たちがモニターを睨んでいる。



このITベンチャーは、社員十五人。

資金調達には成功していたが、プロダクトは完成しない。


「全部、足そうとしてますね」


昇太は初日に、そう言った。


CEOは苦笑した。


「ユーザーの声を全部拾いたくて」


「拾わなくていい声もあります」


冷たい言い方だったが、否定ではない。



昇太は、全員を会議室に集めた。

そして、ホワイトボードに一行だけ書く。


《最初の三人のために作る》


「今、このサービスを“本気で困っている人”は誰ですか」


沈黙。

誰も、即答できない。



午後。

エンジニアの一人が言った。


「僕ら、評価されるのが怖いんです」


「完成させた瞬間、ダメ出しされるのが」


昇太はうなずいた。


「だから、未完成にしている」



翌日。

昇太は、機能を半分、捨てた。


議論は荒れた。

だが、コードは軽くなり、画面は静かになった。


「これで、出しましょう」


「βでもいい。逃げない形で」



一週間後。

最初の三人が、使った。


小さなフィードバックが返ってきた。

褒め言葉ではなかったが、具体的だった。


CEOは、初めて笑った。


「……やっと、作ってる感じがします」



最終日。

昇太は、同じ言葉を残して去る。


「完成させてください」


それは命令ではなく、祈りに近かった。


渋谷の交差点を抜け、

キャリーバッグの音が、人混みの中に消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ