第17章「町の小さな依頼人」
その日、お店の扉がコツコツと、小さくノックされた。
「……?」
リィナが戸を開けると、そこにはまだ幼い男の子がひとり。
6歳くらいだろうか。麦わら帽子をかぶって、よれたズボンの裾を引きずっていた。
「……あの……ここ、くすりやさん……?」
リィナはうなずいて、しゃがみ込んだ。
「うん。どうしたの?」
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「……おねーちゃんが、びょうきで……あんまり食べられなくて、ねてばっかで……」
「おかーさんも、おしごとで、つかれてて……」
男の子は必死に話す。幼いながらも、誰かのために何かをしたくて、
ぎゅっと手に握りしめていたのは――泥だらけの、小さなコイン2枚。
「……これで、おねーちゃんが元気になるおくすり……ありますか?」
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リィナはそっと、男の子の頭をなでた。
「うん。……ちょっと待っててね」
静かに、でもいつもより丁寧に棚を見て回り、
胃に優しく、体をあたためてくれる薬草を何種類か選んで、調合をはじめた。
ミナトが机の上からのぞいて、ニャッと一声。
ノアとカナリアも、いつの間にか黙って手伝っていた。
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そして、ほんのり甘くて飲みやすいシロップ薬と、
体をあたためるハーブティーのセットができあがった。
リィナはそれを、丁寧に包んで男の子に渡した。
「……お金は、いらないよ。そのかわり……」
「……?」
「今度、元気になったお姉ちゃんと、一緒に来て。お話しに」
男の子はキョトンとしたあと――笑った。
「……うん! やくそく!」
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夕暮れ時。
3人と1匹は、ほんの少しだけ静かになった店の中で、お茶をすすっていた。
「なんか、今日は……いい日だった気がする」
カナリアがぼそっと言って、
ノアが「うん」と短くうなずいた。
リィナはミナトを抱きしめて、ほんの少しだけ笑っていた。




