第13章「眠りの向こうで見た夢」
数日後の朝、リィナが店の前を掃いていると、小さな足音が駆けてきた。
それはあの日来てくれた年配の女性と――その手を握る、小さな男の子だった。
「リィナさん! リィナさん……本当にありがとうございました……!」
おばあさんは、目に涙を浮かべていた。
そして男の子は、リィナの前で、ちょこんとお辞儀をした。
「……ぼく、ねむれたよ。怖い夢、ぜんぜん見なかったよ」
リィナは小さく目を見開いて、でもすぐ、ふわっと笑った。
言葉じゃなく、小さなうなずきで返す。
男の子は照れくさそうに笑って、こう続けた。
「夢の中でね――きれいなお姉ちゃんが、森で歌ってた。
まわりにお花がいっぱい咲いててね……ねこちゃんもいた」
リィナは一瞬、体を止める。
(それって……)
男の子の夢の話は、どこか、リィナが住むハーブ園にそっくりだった。
もしかしたら薬の影響で、心が安らいで――リィナの気配を感じたのかもしれない。
ノアがそっとつぶやいた。
「……リィナの薬、やっぱり、ただの眠り薬じゃないね」
カナリアも、わっはっはと笑いながら、
「ほらみろー、やっぱりリィナの作るのは、ふつーじゃないって!」
リィナは静かに微笑みながら、男の子の頭をそっとなでた。
ミナトも、どこからともなく現れて「にゃあ」と鳴き、くるっとしっぽを巻く。
⸻
その日の夜、リィナも少し早めに布団に入った。
(……あの子の夢、わたしのことだったのかな)
そう思った瞬間――
ふと、頭の中に静かな歌声が流れてきたような気がした。
(風が歌ってる……?)
窓の外では、夜風が葉を揺らしていた。
月は優しく光り、リィナの眠りを包みこんでいた。




