第10章「鈴の音と手紙の意味」
翌朝、リィナが玄関の扉を開けると――そこには、一通の手紙が置かれていた。
白い封筒。封には、赤い糸で編まれた小さな鈴の飾り。
「……?」
拾い上げた瞬間、ミナトが鼻先で封筒をくんくんと嗅いだ。
警戒している様子はない。少なくとも“敵意”はなさそうだった。
リィナは中を開けてみた。
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『君のお店に、とても珍しい薬草があると聞いた。ぜひ話がしたい。
明日の夜、そちらの裏庭にて。危害は加えない。約束しよう。 ――旅の薬師』
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「……旅の薬師……?」
首をかしげていると、カナリアが後ろから顔をのぞかせてきた。
「なになに? ラブレター? それともストーカー!?」
「……違うと思う。薬のこと……っぽい」
「ふーん。でも“夜に来る”って、ちょっと怪しくない?」
「……うん。ちょっと、気になる」
カナリアはしばらく考え込んでから、指をぽんっと立てた。
「よし! 明日の夜は、あたしが裏庭の物陰で待機する! いざってときは“ドゴーン”と一撃で片付けてやる!」
「……物騒」
「いやいや、これは店の安全のためだから!」
そんな会話をしているところに、ノアもやってきた。
手紙のことを聞いて、ノアは眉をひそめたけれど、最終的にはこう言った。
「でも、もしかしたら、薬の知識を持ってる人かもしれないよね。リィナの勉強にもなるかも……って、思う」
「……うん。私も……ちょっとだけ、会ってみたいかも」
リィナは手紙を握りしめた。ほんの少し、不安。でも、それ以上に――好奇心があった。
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そして、夜がやってくる。
裏庭には、かすかな月明かりと、リィナの小さなランタンの光。
ミナトが彼女の隣で静かに座っている。カナリアは物陰から見守り、ノアも店の中で待機していた。
そのとき――
チリン……
あの鈴の音が、風に乗って響いた。
リィナが顔を上げると、目の前に黒いフードの人物が立っていた。
「……初めまして。君が、“リィナ”だね?」
その声は、やさしく、どこか哀しげで――
けれど、どこかで聞いたことのあるような、不思議な響きを持っていた。




