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第1章「わたしが消える前の夜」
日が沈むのが、最近すごく早い気がする。
でもきっと、それは気のせいじゃなくて、わたしがこの町で立ち止まってるせいだ。
28歳、フリーター。特に得意なこともなくて、バイトはコロコロ変わる。
家に帰っても誰もいないし、スマホをいじるだけで一日が終わる。
「このまま歳を取ったら、どうなるんだろう」
そんなことばかり考えてる。いや、正確には考えたくないのに、勝手に浮かんでくる。
夜のコンビニで、パスタと安いワインを買った。
今日はバイトをクビになった。理由は“笑顔が足りない”って。
――そんなの、わたしだってわかってるよ。
帰り道、アスファルトの上に小さな影を見つけた。
黒い猫。細くて、よく見ると少し傷もある。
「……なにしてんの、こんなとこで」
もちろん、答えは返ってこない。でも、わたしはその場にしゃがんで、コンビニの袋からハムを出した。
猫はちょっと警戒したけど、やがてぺろりと舌を出して食べ始めた。
「……あんたも、居場所ないんだね」
つぶやいたその言葉に、自分でびっくりした。
なんで泣いてるの、わたし。
その夜。
泣きつかれて、ワインを飲み干したあと――わたしは、眠るようにして息を引き取った。




