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【改稿版】治癒術師の非日常─辺境の治癒術師と異世界の魔術師による運命物語─  作者: 物部 妖狐
第一章 【日常から非日常へ】

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第18話 栄花の魔導具

 日常が壊れて、非日常がやってくる。

不安なはずなのに、気付けば少し楽しくなっている自分がいた。


(ぼくの新術は、どこまで指名手配犯に通じるのかな)


 そんなことを考えながら、皆と一緒に森を進む。

ぼくはダートやコルク、栄花騎士団の二人と比べたら強くはない。

精々、自分の身を守ることができるくらいだけど、もしかしたら、新術がうまくはまれば、指名手配犯だって倒せるかもしれない。


「——詳しい内容は、書類の通りですが。【死人使い】ルード・フェレスが、ここフェーレン領の辺境開拓村……いえ、辺境開拓町クイスト付近にて、目撃情報がありまして……」

「護衛隊の隊長……グランツのおっさんからの協力要請に応えるついでに、捜索をしようって思ったんすよね」


 二人の説明を聞いていて思うけど、目撃情報があったとはいえ、こんな辺鄙な所に長くいるわけがない。


(部外者が来たら、嫌でも目立つし、ぼくの診療所に来る患者さんや、遊びに来たコルクが教えてくれるはず)


 ということは、目撃情報は嘘かもしれない。

そう考えたところで——


「なぁなぁ、それってなんかおかしいと思うんよ。ダーはともかく、レースも違和感を覚えてるんやない?」

「え? あ、あぁ……うん、そうだね。指名手配されるほどの危険人物の目撃情報があったなら、ぼくの耳にも入るだろうし、護衛隊の人たちが騒いでるんじゃないかな」

「……騒ぎはしないと思うけど、やっぱりこの話——変だよねぇ」

 

 ぼくに意見を求めたコルクが、二人を睨みつける。

すると困ったように、後頭部をケイが搔きむしり。


「アキさん、やっぱ俺……嘘はつけないっす」

「へぇ、嘘……ついてたんやね。なんでなん?」

「それは……ほら、こちらの事情に巻き込んだとはいえ、事情を全部話すわけにはいかないんすよ」


 腰に下げた道具袋から、ケイが板状の物を取り出す。


「ケイ、あなた。これをレースさんたちに見せることの意味が分かって——いるんですよね?」

「何か問題が起きても、俺なら大丈夫っすよ、多分。それに……今さら隠しても遅いっすし」


 ケイの言葉に頷いたアキも、本の中から同じ板状の物を取り出す。

指を上で滑らせるように何度かしていると、淡い光を放ち始める。


「この光る板に、なんの意味があるん?」

「あぁ……これは、栄花騎士団の最高幹部だけが持つ。特別な魔導具っす」


 アキは、ぼくたちにも分かりやすいように魔導具を向ける。

板の上には、さっき見せてもらった指名手配書と同じ内容が浮かび上がる。


「レース、これってどうやって使うのかわかる?」


 ぼくの手を引きながら、ダートが興味津々に魔導具を覗き込む。


「……わからない、かな」

「それでしたら、こちらの画面……いえ、魔導具に表示されている指名手配書がありますよね。そこでルード・フェレスの名前に指で触れてください」

「こ、こう? うわぁ……すごい!」


 アキの指示に従って、ダートが名前に指で触れる。

すると魔導具から、ルード・フェレスの顔が宙に浮かび上がり、彼が今どこにいるのかが、大まかに表示される。


(これって、どういう原理なんだろう。もしかして、魔力の反応を追ってる? ……でも、人の居場所がこんなふうに見えるなんて)


 宙に浮かび上がった映像に、ダートが手を伸ばして触れようとする。


「へぇ、触れない……凄いなぁ、ね?レースもそう思うよね? コーちゃんも!」

「せやねぇ。ねぇねぇアキさん、これってうちに売ってくれるとしたら、どれくらいになるん?」

「いえ、あの……これは売り物ではないので、とりあえず魔導具の詳しい説明させて頂きます」


 アキは倒木の上に腰を下ろすと、本を開き、中から一枚の紙とペンを取り出す。


「その本、なんでも出せるんやね」

「えぇ、空間収納の魔術が付与された魔導具でもあるので、便利ですよ?」


 物を取り出すたびに、本を開くのは本当に便利なのだろうか。

ここで指摘するのは違う気がするけど、今は話を聞くために黙っていよう。

そう思ったのに、隣で興味深そうに身を乗り出しているダートを見ると、張っていた気が少し緩んでしまいそうになる。


「さて、まず——コルクさんとダートさんはご存じかと思いますが、こちらは冒険者登録の際に記入する契約書になります」


 話しながら、アキは契約書へさらさらと文字を書き込んでいく。

しばらくしてペンを本の中に戻すと、契約書をケイに渡す。


「まず、こちらに名前を記入し、専用の魔導具で本人の魔力を登録します。そうして契約者の情報を管理し、冒険者資格証としてギルドカードを発行する仕組みになっています」


 ケイが、契約書をぼくたちに見やすいように広げる。

そこにはアキさんの名前と魔力属性が記され、その下に今説明された内容が整った文字で並んでいた。


「登録された情報は、冒険者ギルドを介して栄花騎士団へ送られ、冒険者が問題を起こした場合、ギルド職員や栄花騎士団の団員が対応するということになります」

「……それってさ、コルクはともかくとして、ダートは知ってるの?」


 冒険者になった時はまだ、ダートはこの世界に来たばかりだったはず。

本当に内容を理解した上で登録できていたんだろうか……そう思うと、胸のあたりが少し落ち着かない気持ちになった。

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