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【改稿版】治癒術師の非日常─辺境の治癒術師と異世界の魔術師による運命物語─  作者: 物部 妖狐
第一章 【日常から非日常へ】

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第15話 賑やかな一行

「詳しいお話は、コルクさんからお聞かせ頂いたので、本日はよろしくお願いします」

「ということなんで、俺とアキ先輩も幻鏡の指示に従うっすよ」


 ぼくたちを迎えに行く間に、コルクが二人に話をしておいてくれたらしい。

おかげで、ぼくから説明をする手間が省けて助かった。


「いやぁ……それにしても、開拓いいっすねぇ。まだ見ぬ冒険って感じで、心が躍るっすね!」

「ちょっ!あんた、走って先に行くのはやめーや!」

「……なんか賑やかだね」

「すみません、後で彼に言い聞かせておきますので……」


 賑やかな雰囲気に、これが今から危険な開拓に行く空気なのだろうか。

そんな気持ちになりながら、森へと入っていく。


「レース、ケイさんのことは、あんまり気にしないでいこう?ほら……私とコーちゃんがいるから大丈夫だよ?」


 集合場所へ向かう道中で、考えが顔に出ていたのか。

ダートがぼくのローブの袖をそっと引っ張り、耳元で優しげにささやく。


「……なら、いいんだけどね」


 しばらくして、目的地が近づいて来たのか。

見覚えのあるような気がする人たちの姿が見えてくる。

何回か目が合った以上は、挨拶をした方が良いのだろうけど、特に交流があるわけでもないから、そのまま進んでいく。


「ちょっとレース、目があったんだから挨拶しないと」


 そうした方がいいのは、ぼくだって分かっている。

けど……用事があって村に行った時に、こちらから話しかけても、何故か警戒されてしまうことが多い。

お互いに気まずい気持ちになるくらいなら、ダートの気遣いは嬉しいけど、黙っていた方がいいだろう。


「なぁアキさん、一応確認なんだけど、場所はここであってるん?」

「はい、ここで問題ありません」


 どうやら目的の場所に着いたようで、コルクとアキが顔を合わせて、ぼくたちにここで待機するように指示を出す。

けど、一人だけ、落ち着かない様子で、大剣を構え。


「いやぁ、思ったより早く着いたっすねぇ!んじゃあ、後は時間まで身体を動かしてっと!」


 と、言葉にしながら周囲の視線を無視して、ケイが振り下ろそうとするが。

アキさんが彼の隣へと早足で近づいて、腕を掴み。


「……ケイ、くれぐれも周囲の人に迷惑を掛けないように、大人しくしてくださいね」

「あ、えっと……その、はい、わかったっす」


 穏やかな口調で制止され、大人しくなる。

とりあえず、あの騒がしい人のことは、アキさんに任せてしまおう。

そう思いながら周囲の様子を伺う。


「……ふーん、思ったよりしっかりしとるやんか」


 ぼくたちの近くに来たコルクが、小さな声で呟く。

開拓に必要な道具を持った人たちの姿と、武装をした護衛の姿が見える。

中には、魔術師のローブを着ている人もいるけど、しっかりとしているかどうかは、ぼくにはわからない。


「てめぇ……俺が誘った時は、断りやがったくせに、お偉いさんが誘うと来るとか、良い度胸してんな!」


 すると、ぼくの視線に気づいたのか。

護衛の中から、一人の男性がこちらを睨みつけながら近づいて来る。


「……えっと、すいません、誰ですか?」

「だ、誰っててめぇ!ふさけんなっ!」


 誰か分からないから聞いただけなのに、急に怒り出すなんてどうしたのだろうか。

もしかして、気付かないあいだに失礼なことをしてしまったのかもしれない。

そう思って、必死に原因を考えていると……。


「ほら、レース……この前、私たちを誘いに来た人じゃない?」

「……あぁ、えっと」


 ダートが耳打ちをしてくれたおかげで、何となくだけど、かろうじて目の前の相手が誰か思い出す。


「その……ごめんなさい。あなたのことを忘れてました」

「え?……は?」

「あの時は、せっかく来てくれたのに、失礼な態度を取ってしまい。本当に申し訳ございませんでした」


 咄嗟に、思いつく限りの謝罪をしてみたけど、ぼくの言っていることに理解が追い付いてない。

そんな顔をした後に、めんどくさそうに髪をかきあげ。


「いきなり人のことを忘れてたとか、急に謝るとか……よくわからねぇ奴だな」

「……えぇ、よく言われます」

「なんつうかめんどくせぇから、どっか行けよ。あぁ……でも、ダートちゃんはここに置いていけよ?こんなかわいい子は俺が大事にしてやるかさ」


 腕を伸ばして、ぼくの肩を押そうとするが。

ダートがその手を払いのけ、護衛を睨みつけると。


「……ごめんなさい。あなたに大事になんかされなくても、私はレースと一緒にいる方が幸せなので」


 と言葉にする彼女を見て、いったい何を言っているのか意図が理解できずに、固まってしまう。


「……はぁ!?てめぇら、もうそんな関係なのかよ!」

「えっと、あーそういうのじゃ——」

「恥ずかしいからって言い訳すんじゃねぇよ。……ったくよぉ、ダートちゃん悪かったな、他の奴らにも言っとくから、残念だけど幸せになってくれよな!」

「ふふ、ありがとうございます」


 勘違いをした護衛が、ダートに手を振りながらぼくのことを睨むと、何も言わずに戻っていく。


「……ケイ、良かったですね。あなた以外にも騒がしい人がいましたよ?」

「あれと同じにされるのはちょっと、納得がいかないんすけど……まじで」


 勘違いしたダートとぼくの関係を護衛が話して回っているのか、やけに周囲の視線が痛い。

これは……彼らに、勘違いだと伝えに行こうとしたら、更に面倒なことになりそうな気がする。

そうなるくらいなら、今は何も言わずに黙っていよう。


「……結構、積極的やん。レース良かったなぁって、あぶなっ!石を投げんなや!」


 コルクの言葉に、返事の代わりに石を拾って軽く投げつけたその瞬間——森の奥から、抜き身の大剣を担いだ髪のない大柄な男が姿を現し。


【ドンッ!】


 地面に剣を突き刺す重い音が響き渡り、土が跳ね上がる。

男はゆっくりと顔を上げ、鋭い眼光で周囲を一瞥した。

その視線が、こちらを通り過ぎていく。



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