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【改稿版】治癒術師の非日常─辺境の治癒術師と異世界の魔術師による運命物語─  作者: 物部 妖狐
第一章 【日常から非日常へ】

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第14話 傍にいる彼女

 翌日、コルクは朝食を食べ終えると、椅子から立ち上がり。


「別にうちは、ダーのもんを取る気は無いから安心してええんよ?」


 と何やら、よくわからない言葉を残して、こちらの返事を待たずに帰ってしまった。


「……えっと」


 今日は何故か、ダートがやたらと、ぼくの事を気に掛けてくる。


(これは……さすがにちょっと気まずいな)


 昨晩、コルクといったい何を話したのかわからないけど、常に視線の中に入ってくる。

それに、新術の開発を続けようとすると、何故か部屋に入ってきて、何も言わずに隣に座ってくる。


(今日も何も言わずに、ずっと隣にいたけど……どうしたんだろ)


 特に何かを言われることもなく一日を終え、次の日になっても、同じように隣にいて、そのまま三日が経っていた。

さすがにここまでくると、気にしないようはしてはいたけれど、彼女が何を考えているのか気になってしょうがない。

邪魔はされなかったから、順調に新術の開発には集中できたとはいえ……。


「あのさ、ぼく……君に何かしたかな」

「……ん?別に何もしてないよ?」


 ぼくの問いかけに、何でそんなことを聞くのかとでも、言いたげな顔で振り向き。


「ただ、あたしがレースの傍にいたいなーって思っただけ」


 と言葉にするけれど、いきなりそんな事を言われても、反応に困る。


「……あのさ、さすがに用がもないのに、ずっと近くに居られるのは気まずいっていうかさ」

「そう?私は別に気まずくないよ?」

「えっと……ほら、ダートが気まずくなかったとしても、君がぼくの立場になったら、どう思うかな」

「んー、別に嫌でもないから大丈夫だよ?」


 これはダメかもしれない。

いくら、ぼくの気持ちを伝えようとしても、どんどん変な方向に行ってしまいそうで、コルクとは別の意味で、めんどくさい気がする。


「でも珍しいね。レースが。人の気落ちを慮ろうとするだなんて……何かあったの?」


 何かあったのかと言われたら、今のこの状況がそうだと言いたい。

けど、この気持ちをぼくが口にしてしまったら、とんでもないことになる気がする。

そう思いながら椅子から立ち上がると、今のやり取りを誰かに見られてないか、外の様子を伺ってみる。


(……今日が休診日で良かった)


 今のこの状況を誰かに見られていたらと思うと、気まずくて暫くは村に行けそうになかった。


「窓から外を見てどうしたの?」

「あぁ、いや……ほら、そろそろ開拓に同行する日が、近づいて来たって思ってさ」

「近づいて来たって、今日だよ?」

「……え?」


 確か……この前、一週間後とか言っていたような気がしたけど、もしかしてぼくが自分のことに集中している間に、その日が来ていた可能性がある。

ぼくは治癒術師としての装備を持ち出せばいいけど、ダートは準備が出来ているのだろうか。


「ダート、準備はできてる?」

「当然できてるよ?それに、レースの分もできてるから大丈夫だからね?」


 いつの間にぼくの分まで、準備をしてくれていたのか。

そう思いながら、椅子から立ち上がると、深い森を開拓するのに必要そうな道具を空間収納の中から取り出す。


「たぶん、私たちの役割的には使わないとは思うけど、コーちゃんのところで一通り集めておいたよ?」

「そうなんだ、えぇっと……ありがとう」

「ふふ、どういたしまして」


 嬉しそうに笑う彼女を見て、何て返事を返せばいいのか分からなくなってしまう。

とりあえず、この気まずい状況をどうしようかと悩んでいると、玄関とドアを誰かが勢いよく叩く。


「——先生っ!レース先生っ!迎えに来たっすよ!」

「……あぁ、来たみたいだね」


 彼女には悪いけど、良いタイミングで来てくれた。

二人で急いで玄関へと向かうと、より激しくドアが叩かれ……。


「ケイっす!アキ先輩と幻鏡も外にいるっすよ!早く出てきてくださいよーっ!」

「今行くから、少しだけ待っててください!」

「お、わかりましたー!じゃあ少しだけ待ってますんで、直ぐに出てきてくださいよ?」


 あまりの勢いに扉が壊されるかと思った。

そっと胸をなでおろすと、声の主が遠くへと離れていく。


「もう少しドアを叩く時くらいは、静かにしてくれたらいいのに」


 とはいえ、外にコルクと二人がいる以上。

既にこちらの準備もできているのだから、直ぐに外に出た方がいいだろう。

そう思って、玄関のドアノブに手を掛けた時だった。

腕をダートに掴まれ……。


「……ねぇレース、お願いがあるんだけど、いいかな」


 と外に聞こえない程に小さな声で、ぼくの耳にささやきかけてくる。


「別にいいけど、お願いってどうしたの?」

「うん、あのね?お願いだから……レースは絶対に私たちの前に出ないでね?」

「……わかった」


 とはいうけれど、できることなら彼女に守られるよりも、守りたい。

けど……今の実力では、それができないことは分かっている。

力不足を感じてしまってもどかしいけれど、ここで気持ちを伝えてもダートに失礼だ。

そんな思いを抱きながら玄関のドアを開けると、ケイたちと合流した。

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