カレの事なんてもうずっと前に諦めていたのに
ゴム走とは
2人で自転車のチューブの輪の中に入り、前後に並びます。
後方の人がチューブに体重を預け前の人が体でチューブを曳きながら走ります。
ああ、もうすぐ雨だな……
スマホにくっ付けたイヤホンがスマホのFMラジオのアンテナになるみたく……私の伸ばした髪の毛はボワボワになって、私に雨の訪れを知らせる。
入学式の日、同じクラスの悠李くんに一目惚れしてしまって……“長い髪と美肌は七難隠す”との格言?を信じて陸部上がりの半端ボブを必死にサラサラヘアにしようとしたけれど、それはニキビとの飽くなき戦いと同じで……私に勝利をもたらさなかった。
その悠李くんが恋に堕ちたのは……誰もが認めるクラス1の美女……サラサラ髪から覗く透ける様な肌を薄っすらピンクに染めている美桜で……実際、二人は付き合い始め、夏休みには色々あったらしい。
高校では陸部には入部せず“帰宅部”となって……学校の行き返りも日傘を必携、洗顔だって低刺激のものを使ってマメにやってたしチョコレートとかもずっと我慢してた!
もっとも……夏休み中に悠李くんと美桜が腕組みデートしてるのを目撃した時はチョコミントアイスそのものがトラウマになる位に爆食いしちゃったけど……
ま、とどのつまり、私は何をやっても中途半端で上手くいかない訳さ!
だからHR終わったし、もう帰るべ!
今日は体育があったので、スクバの他に陸部名残の遠征バッグを背負う。ホントは今更感が満載なのでイヤなんだけど、ウェアとか使わないとママがウルサイからね。
で、教室を出る段になって……
「同級生とかもういいわ!」
鈴の鳴る様な声を耳が拾ってしまった。
思わず振り返って声の主を確認してしまう。
「今カレは可愛いJKが好きなの。だからポニテ!」
そこにはこう宣いながらポニテの髪を指で遊ばせている美桜が居た。
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こんな事で私が怒るのは悠李くんにとっては大きなお世話だから……
私は独りでこの怒りに耐えるのよ!!って下駄箱のとこまで出てきたら
「心音~!今日雨降る?」って結衣から声を掛けられた。
結衣は同中のコで部活も陸部! 私はトラックで彼女はフィールドだったけどその頃からの仲良しだ。
「まもなく降るよ~」
「そっか!心音のアンテナ!最近ますます精度上げてっからセンパイに上申しなきゃダワ!」
「じょーしん??」
「今日は部活無しっしょ!」
「ああ、上申ね! 今日の雨は間違いないけど、今後は精度下がるかも」
「キミ!それはなしてかね?」
「“アンテナ”を短くカットするつもりだから」
「えええ!!髪切るの??!! 失恋でもしたんかい?!」
「んー失恋の失恋かな?」
「なんじゃそりゃ?」
「説明しろってか?! 部活の“ゴム走”よりウゼぇぞ!」
「んじゃ! 聞かね! けど髪切るのは止めとけ! ワタシャ! 心音の髪をモフモフするのが好きなんだから!」
「そーゆー事は恋人になってから言ってよ!」
「なんでワシがアンタに救いの手を差し伸べにゃいかんのよ」
「ひどい! アンタって私のカラダだけが目的なのね!」
「そうよ!傷心のアンタをたぶらかすつもりなんだから」
「だったらもっとキモチ良くさせてよ!」
「レズるつもりはございませ~ん!」
二人してド下手な漫才をやらかしてケタケタ笑った。
「まあ、そんなんだったら陸部へ戻ったら? アンタ!フォームだけは綺麗なんだからさ!」
「ええ、フォームだけはね! タイムは伸びないんだけね!!」
「自分でディスんなよ!」
「アンタがディスってんじゃん!」
「ハハハ許せ! ウチら今日は練習無いし、トラック空いてっから!気晴らしにひとっ走りしてみたら? シューズあるんでしょ?」
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なんて言われて本当に走ってる私って、バカ?って感じなんだけど……
何本か走ってると髪がボワボワと顔に纏わり付いて来て……ついに雨が降り出した。
レーシングウェアで走るのは久しぶりで……せっかく気持ち良かったのに!
でもいよいよ雨が強くなってきたので私は渡り廊下まで戻って来てコンクリの端っこに腰を下ろし、シューズを履き替えた。
「佐久間さん?」
聞き覚えのある声にギクッ!として振り返ると……
悠李くんじゃん!!
サイアク!!!
私、きっと“もののけ”みたいな感じで振り返ってる!
ああああ、こんな事になるんだったら髪なんか伸ばさなきゃ良かった!!
「……ビックリしたでしょ?! 変な事してるから」
「ビックリはしたけど……それは佐久間さんが走る姿がカッコ良かったからで……」
「へっ?!」
「ゴメン!でも女子にキレイって言うとセクハラになったりするから……」
「美桜にそう言われたの?」
「うん、まあ……」
「それは人によると思うよ。少なくとも……私はゆ……佐藤くんから言われてもイヤではないよ」
「そっか、アリガト」
「私の方がアリガトだよ。ってか佐藤くんも部活?」
「いや、帰ろうと思ったら降り出しちゃったからどうしようかなって」
「この雨、当分止まないよ」
「そうなの?」
「傘貸そうか?」
「いや、それは……」
「大丈夫! 2本持ってるから!」
「いいの?」
「うん!晴雨兼用のお花柄の日傘だけど」
「えっ?!」
「アハハ!嘘だよ! ちゃんとしたのあるから安心して!」
「ゴメンね。なんか贅沢言っちゃって! 何かお礼するよ」
「そんな大げさな……」
「いや、これはお礼をしなきゃいけない案件だから!」
「……じゃあ、デートとか?」
「うん!喜んで!」
この返しが余りにも意外だったので私は慌てて立ち上がった挙句、レーシングパンツのお尻をパンパン叩いてしまい、更にドツボにはまってしまった。
これが私の……諦め恋を拾ったお話♡
お・し・ま・・・・い!!!!(*^。^*)
とまあ、今日も他愛のないお話です!
この後、投稿予定の黒姉の連載が重いからこういうのが良いかなと思いました(^_-)-☆
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