22──黄泉路へ その2
山の中腹にある崖のような場所に佇む。
時間は夜。もうすっかり深夜の行軍が板に付いてきた。魔術による探知と明かりがあれば、何も恐れることはない、むしろ動物たちが静かな分快適に進める。
かつてハックとオペラと眺めたあの場所をもう一度眺める。分かっていたことだが、変わり映えしない夜の森しか見えない。というか、暗視の魔術を使っていなければ何も見えないだろう。
さて、ハックの言っていた遺跡はどの辺りだったか。村人の病気を治すために薬草を摘んだ場所の近く……土砂崩れか何かあったんだったか。まぁ、しばらく腰を据えて探せばいいだろう。時間ならある。面倒なことになりそうだから、村にはバレないように、こっそりと夜間に探索した方がいいか。
日が登る頃に山中に見繕った寝床に戻り、空が赤く染まる頃に起きて移動をして、薬草を摘んだ辺りに到着する。
そこから、土の中を探ることのできる魔術を頭の奥から引っ張り出して、遺跡があると思わしき一帯を調べる。
詠唱をして、地面に向かって手を当てて、それで周辺十数メートルを探って、一つズレての繰り返し。対象が山の斜面だから、しらみ潰しにするとしても、範囲も勾配もきつい。万が一ないだろうが、さらに深くに埋まっていた場合、どうにかして掘り起こす必要も出てくる。
そうはならないでくれよと、祈りながら、探索を続ける。
一日じゃ終わらなくて二、三日に分けて探した。が、一向に見つからない。当たり前か、今まで誰にも見つかってないんだから、見つからないような仕掛けがしてあると考える方がいい。それに、探すにしても一気に大きな範囲を対象にした方が良い。詠唱が長くなろうが、その方が効率的だ。
二種類目の術式を試すのに一日使った。
三種類目の術式を試したところで、実は物理的な方法ではダメなのではと思い至った。
もっと根本的に、魔術そのもの、あるいはリッチー氏の痕跡そのものを探し当てるような方法でなければ──それが間違いだったと気づくまで三日消費した。村からの補給をしないと決めたので、物資を森の中で自給自足しているのも効率が悪い。だが、今どこかの村に行けば、指名手配されていて即座に捕まるということも考えられる。
最終的に、こちらの意識に働きかけるような魔術が施されていることが分かった。つまり、いくら探そうとも、その手応えじたいが自分の頭で理解できるよりも先に霧散するようになっていたのだ。これでは「探す」という方法では見つけられない。まったく認識に依存せず、かといって偶然入れる訳でもない特殊な空洞を、半ば力技で突破して、入口を見つけることに成功した。
空気の流れがない。
背伸びをすれば頭をぶつけるくらい狭い通路の突き当りに、扉だけがあった。扉にはドアノブがなく、木の一枚板で、均等な幅の円弧を組み合わせた模様が描かれていた。これは何かの魔術的仕掛けなのだろうと、触れて眺めて考える。
頭の中にある術式を引っ張り出してみるが、何かおかしい。このような模様は知識にない。ハックの中にも残されていなかった種類の魔術だろうか。確かに自分にはハックの残してくれた魔術がある。ただの知識ではなく、実践可能な知識として。だがそれだけだ、それだけじゃ知識にない系統には刃が立たない。
諦めて力任せに押したところで、もちろん開くわけがない。だがしかし、この入口に来るまでにもすでに、セキュリティーがあったのだ。ここで今更鍵も必要というのはやり過ぎな気もする。そうではない?
半ばやけになって扉を揺さぶれないか、隙間に指をねじ込もうとしてみる。どうやって作ったのか、扉と壁の間には一分の隙もなく指どころかナイフすらねじ込めない。だがどうしてか、上下の方向には少し動くような。
もしやと扉の上方にナイフを差し込むと、今度はすんなり刃が通り隙間ができる。そしたら次は指を四本入れて、勢いよく扉を下の方向へと押しやることができた。
扉が開き、白い光が目に入る。
床も壁も真っ白で光沢のある石のようなものでできていた。そして、石よりも無機質で気持ちの悪い踏み心地がした。少なくとも人の住んでよい雰囲気ではない。昔学校にあった実験室に近いものを感じたが、誰もいない放置された実験室というのは怖い。第一、千年以上昔に作られた施設のはずなのだが、少しも劣化したり汚れたりといった部分がない。ここを拠点としていたリッチー氏はいったいどんな気持ちだったのだろう。
とにかく、当初の目的を果たすために僕は探索を開始した。
ラボはそれほど広くなく、入ったところが人一人が通れる程度の最低限の廊下になっており、その廊下には四つの扉がただ黙ってこちらを見ている。外の扉とは違って、ドアノブもあるし、どう開けるかも分かる普通のドアだ。
時間は腐る程あるが、未だにこの場所の空気に慣れない僕は、まず、全体を把握することにする。端からドアを開けて、一瞥だけして戻る。
最初の扉、寝室と生活スペース。清潔なベッドとさらに奥に続く扉があった。扉の先は多分水回りの施設だろう。
次の扉、資料室。ラベルもない棚に大量の紙束が詰まっていた。当たり前の話だが、紙は現代のものほど真っ白でなくて厚かった。にも関わらず、今日開封したかのように綺麗だった。
三つ目の扉、手術……室? 同じ形でマットのないベッドが二つ並んでいた。壁際の棚には様々な薬草がガラス瓶に入れられて並んでいた。幸いというか、人体を切り開くための道具はないようだった。もちろん血糊のたぐいもない。
ああなんでそんなに動揺しているんだ。血も肉も見飽きただろうに。
四つ目、最後の扉、倉庫。と言っても、単にものが雑然と置かれていた訳ではなく、鉢植えに植えられた植物が並んでいた。園芸でもやっていたのだろうか。そもそもこんな窓もない場所で植物を? そこで初めて僕は、暗視の魔術が切れているのにも関わらず、部屋が明るいことに気づいた。
光源は分からないが、施設全体を一定の明るさに保つ仕掛けがあるらしい。魔術を使わなくて済むのは楽で良いが、いったいどんな仕組みなんだ。千年以上経っているのに働き続けるなんて。まぁ、その答えもいずれ見つかるか。
とにかくハックに繋がるような手がかりを見つけないといけない。リッチー氏の研究ノートの類を見つけて片っ端から読み漁るのがいいだろう。あれだけの魔導書を一発で作り上げたとは考えにくい。なんなら習作も見つかるかも。
なら調べるのは資料室か。
床に腰を下ろし、片っ端から紙の束を見てみることにした。ハックの文字と似た達筆な筆跡で、この場所で行っていた研究の記録や村人の交流なんかが書かれていた。中身が暗号化されているということはなく、ただ古い言葉で書かれているというだけだった。それなら多少苦労するものの、読めないことはない。学院時代に読むことだけはひたすらやったからな。
ほんと、資料の発掘こそさせてもらえなかったが、送られてくる資料を片っ端から整理させられた。あの頃は、まさかこんなことになるなんて思ってもいなかった。というか、未来なんて何も考えていなくて、黒い靄がかかったような感じだったが。こんなことになるなら、真剣に夢でも持って、努力しておけばよかったーなんて、思えるやつならこうはなってない。
資料の解読が進んで、全容が分かるようになるまで、一日だったか二日だったか分からない。なにせ日の光もなければ、他に時間を知らせるものもない。かろうじて腹の具合から言うと、二日だろうか。そろそろ外に出て食料を調達しないとまずい。
一旦外に出るべきだろうか。この資料室を調べきるだけなら、もうしばらく時間をかければ充分な気がしてきた。大体、細かな魔術理論など一朝一夕で理解できないから、大体何を書いているか分かれば良くないだろうか。雑にまとめると、このラボでは、人に薬草を投与したときの反応を調べるのが主目的だったようだ。ああそうだ、分かるとも、全然魔術じゃないだろうって。僕もそう思う。
「あー分からん」
分からん分からん分からん。
確かに、この村には薬草が植えられていたし、ハックが前話していた内容的には、植物のことを調べていたんだろうが。なんだこれは、人体の反応がやけに細かく書いている。まるで医者のように。いや、医者でもここまで細かく系統立てて記録するだろうか。だって、どう考えてもここに書かれている内容は病気を治すのが目的ではない。
ならば、なぜ?
目的が分からない。
中には副作用で死に至ってしまったという記録もある。だが、概ね良い効果や意味の分からないものが多い。草の種類や量による眠気、苦み、痛み止め、高揚、覚醒、利尿、鎮静、喉の渇き、消化の具合、体温変化、眼球運動、反射の速さ、とにかくなんでも。魔術の研究も隅の方にあったが、散発的で、共通点があるとするなら、人体の生理現象を再現しているような。
とにかく不気味だった。
これ以上研究資料を読みたくない。せめて日記のような内容が残っていれば。
ただのデータとは分けて保存していたのかも。
となると、手術室の方か。
部屋を移って壁側の棚を開けまくる。
そしたら、あった。
別に鍵とか何もかかってない引き出しに。なんだろうな、別に日記とか書いてるわけじゃないのに、日記っぽいと分かるのは。
何の躊躇もなく開く。
1ページ目にいきなり、こう書いていた。
『神様のインタフェース──そう形容するより他にない──に辿り着かなければならない』
「神様のインタフェース」
つい声に出して読んだ。境界面の語があまりにも印象的だったからだ。
そのまま読み進める。
『その存在を悟ったのは、私がまだ自我を持たず、ただ言われるがままに魔術を行使していたときのこと。あの日は一際大きな魔術を行使しようとして、たまたま深い階層まで潜れてしまった。いや、登ったと言った方が良いかもしれない。外界から完全に解脱した先の場所で見たあの光景、自身の身体がなく、ただ平面で無機質な模様もない四角いマスで組まれたそれは、その先に、世界の全てがあることを、否が応にも要請してきているようであった。
あの先に行かねばならぬ。行って、真実を知らなければならぬ。故に私は、魔術とは何かを、知らねばならぬ』
「世界の全てがある」
背筋の凍えるような希望を感じた。
きっとこのラボも大量の実験も、神様のインタフェースに到達することが目的だったんだ。しかも、これが全てではないということを、僕は直感した。人類史上初めてのウィザードは、人生をかけて様々な方向からアプローチしたに違いない。
「そこに行けばきっとハックも」
否、それだけではない。全てが元通りに戻せるのかもしれない。やり直しだってできるのかもしれない。
さらに詳細を知りたくて次のページを捲ると、日記というか研究記録として残すほどでもない雑記が、日付の区切りもなく続いていた。神様のインタフェースについての深堀りはなくて、拍子抜けしたが、裏を返せば雑記ではない内容を一ページ目にわざわざ書いておいた、ということだ。まるで、試験合格なんて壁に貼って目標を忘れないようにするみたいに。
雑記から読み取れる範囲だと、魔術を使うのは私なのだから、人間について調べることが本質に近づく道だと考えていたみたいだった。そのために取れる方法は片っ端から節操なく試す方針だったみたいで、各地のラボ毎にテーマを設けてあちこち転々としているのだろうと推測される。
人かぁ。
僕が戦った教祖のやつも人をゾンビにしていたし、ハックも人を再現するような魔術だ。神様のインタフェースというのは、魔術で人そのものに近づくと到達できるのだろうか。
あとは、もうないだろうと思うが、ハックに繋がるような資料も探したい。資料室の方はここでの研究データに限定されていただけかもしれないし。
「さて、ハックのスペアか、習作がぽんと置かれていないかな?」
「起動。【ハック】に関する資料の有無を検索します」
「なに?」
どこからともなく声がする。幻聴とかではなく、物理的なものだ。しかもハックと似た声をしている。
「誰だ? ハックなのか?」
「検索終了。ハックに関する資料はここにはありません。ネットワークが機能していないためグローバル検索できません。私の識別ナンバーはH4です。次の要件を入力してください」
「えーと」
姿が見えない。それに、あまりにもマニュアル口調すぎる。抑揚がないというか相手を見ていないというか。
「はじめまして? H4さん?」
「次の要件を入力してください」
話が通じない。これは何かの魔術で作られたものということだろうか。本当に誰もいない?
「誰かいるのか?」
「私の識別ナンバーはH4です」
「あなたは人間ですか?」
「要件を入力してください」
「えーとじゃあ、あなたは何ができる?」
「登録された資料の検索、登録された物品の検索、明かりの調整、手術台の昇降、他、現在二十四のファンクションが登録されています」
うーん? なんだろうこれ、何かの拍子に起動したみたいだけど、分からない。
「あなたの本体はどこですか?」
「要件を入力してください」
「これは、反応しない」
まったく同じ声が繰り返される。何らかのルールに従って、声を音を出しているだけか。ハックの手がかりになるかもと思ったが、全然違う。話にならない。
いいや、腹が減った。一旦ここまでで外に出よう。どうやらここは、まだウィザードとして大成する前のラボらしい。それこそ、神様のインタフェースに到達した記録があれば良い。
ここはもう見切りを付けて次の、そうだな、行きたくないがオペラのいた村は、見つかっていない遺跡がまだありそうだ。スピム村付近を探索するか。他に手がかりがないのが本当に心苦しい。
「あっ、そうだ。他のラボの位置はどこですか?」
「ネットワークが機能していないため、検索できません」
「そうか」
ネットワークってなんだろう。僕の知らない魔術機能なんだろうが。これも他のラボに詳しい資料があるのだろうか。あればいいな。
さぁ、今度こそ出よう。
見慣れた白色の世界を後にする。
と、そこは以前ハックと薬草を摘んだ場所のすぐ横だった。
ラボに入った場所とは違う上に、そもそも洞穴とかそういうものもない。何もない空間に突如放り出されたように、僕は草むらの上に移動していた。
「ったく。いったい何をどうしたらこんな仕掛けができるんだ」
僕が思っていた以上に魔術の深淵は深いのかもしれない。
さてと、次の場所に行こうかと前を向いたところで、薬草を摘みに来ていた人と目が合ってしまう。もちろんすぐに目を逸らして森の中に逃げる一択。人に会うわけにはいかないんだよね。いやほんと勘弁してください。
「お久しぶりです。この村の救世主の方ですよね」
「救世主?」
そんな風に持ち上げられるような筋合いはないはずだが。
「ええそうです。覚えてらっしゃらない? 私のことも?」
振り向くと、丸メガネをした長髪緑髪、そんでもって山中に似合わない白衣を着て医者ですと自己主張の激しいやつがいた。
「会った気はします」
「名前は忘れてしまったと。当然ですね、お会いしたのは一度きりですし、少し説教をしてしまいましたから」
「そうですか。では、僕は忙しいのでこれで」
「そう急がなくても良いでしょう。どうやら先は長い。人生も長いのですから。少しばかりお茶に付き合ってはくれませんか。年寄りの戯言に付き合ってはくれませんか」
そう言って湯呑を持つジェスチャーをする。年季の入った落ち着きぶりではあるが、どう見たって年寄の見た目ではない。かといって何歳かというのも推定するのが難しい。
「いえいえ、本当に急いでるのでこれで」
「ほんとほんと。そう言わずに、神様のインタフェースなんて碌なもんじゃないですよ」
「──なんでその名前が?」
足が縫い付けられるような気持ちがする。神様のインタフェースとは、リッチー氏が発見したものじゃないのか。もしかして魔術界隈では有名なのか。
「ええ、そりゃ知ってますよ。もっとも、私は尻尾を巻いてその先には行けなかったですがね。お話してくれますか?」
そいつはメガネの位置をクイと直す。
「良かったです。すぐそこに丁度いい川があるんですよ。そこでお茶を沸かしましょう」
僕が逃げられなくなっていることを確信したのか、ゆったりとこちらに背を向けて歩きはじめる。追いかけると、本当に綺麗な水が流れる小川があって、お茶の準備を始めている。
「ああそうだ。改めて名乗っておきましょう。訳あって偽名なのですが、パラケルススと名乗っております」
「僕は」
「キャニーさん。ですよね? 驚かないでください。意外とあなた有名人ですよ」
「どこで聞いた?」
「うふふふ。内緒です」
パラケルススはわざと気持ち悪く笑って誤魔化す。指名手配されているなら、素直にそう言えばいいだろうに。それとも、僕の知り合いから? オペラと会ったのか。いや、前に会ったときに名乗った線もあるか。
慣れた手つきで近くにあった枝を拾い、ポットや火打ち石を準備していく。木屑から火種を作ろうとしていたので、僕は魔術で先に火を付けてやることにした。
「ありがとうございます。やっぱり魔術は便利ですね」
「神様のインタフェースまで行ったんですよね?」
「ええ、行きましたとも」
「じゃあ魔術は」
「そりゃ使えますよ。人並み以上に。でもやめちゃいました」
「どうして」
「その『どうして』は、理解できないって感じですね……うん。そう、ですね。人の手に余るものだということを悟ったから。ですかね」
それは、お前が臆病だったからだろと、それほど恐ろしいものなのかという二つが頭の横を掠めていった。
「それで、ですね。あなた、前に連れていた人がいなくなってるじゃないですか」
それはオペラのことを指しているようで、それ以上の含みがあった。
「悲しいとか寂しいとか、色々あると思います。でもね、元に戻らないものを戻す方法はないんです。それは人の手に余ることですから。だから、神様のインタフェースのことは忘れなさい」
「あんたに何が分かる?」
「分かりません。私はあなたのことをほとんど何も知らないし、第一家族だって心中まるっとは察せないでしょう」
「ならなぜ、諦めろと言われないといけない。関係ないだろ。神様のインタフェースについて教えてもらえないなら。僕は行く」
「そう、ですね。人は人を本当に止めることはできないんですよね。あの子のときもそうでした。あの子のことこそ止めないといけなかった。ええ、だからこれは、年寄りのおせっかいですよ。神様のインタフェースなんて万能じゃない。むしろ、人の道を外れるだけの外法です。その先に行けば、本当に大切なものを失ってしまいますよ。だから、止めてはもらえませんか。私はただ、人がおかしくなるのを見たくない」
ちょうど茶が湧いたところだった。
焚き火とポットから立ち上る煙の向こうで、パラケルススは土下座していた。
僕は何も悪くないのに。悪いことはいっぱいしたけど、僕はそれをこれから埋めにいくのだ。どうやら実在するらしい神様のインタフェースの向こうへ行くのだ。
何か感情が結晶化しそうでしなくて、胸の中にある弁を塞いだ。
「分からない。ですよ。なぜ? 僕とあなたは関係ないでしょう」
「ああ」
「僕がおかしくなって、あなたに何があるんですか?」
「何も」
「どうして、そんなことが出来るんです? あなたは何なんですか!」
「私は旅の医者です。そして、かつて神様のインタフェースを目指した先輩です」
「医者が人の事情に口を出せるんですか? 医者だったら? 似た境遇だったら何なんですか? それが頭を下げる理由になると。勝手に憐れむな!」
「そうですよね。まだ理由はあります。神様のインタフェースの向こう側に行ってしまって壊れた人を知っているんです。詳しくは言えません」
「だから、それがっ」
「だから、できるのは、こうして頭を下げることだけなんです」
畜生。まるで僕を悪者みたいに。僕はハックを救いたいだけなんだ。邪魔をするな邪魔をするんじゃない。
知らない。
僕は駆け出した。
逃げてなんかない。逃げてなんかない。
こんなことしている暇なんてない、早く次の遺跡を見つけて、ハックを救いたいんだ。




