16──僕は何を残せるだろうか その2
村から出て林の中を通る道。道幅は馬車がギリギリ通るくらいで、すれ違うなんてできない。
「通りたかったら金目のものを置いていけ」
くたびれた衣類を身にまとい、左から鎌、鍬、斧、鉈、長い棒を持った盗賊が道を塞ぐように立っている。
「お前らが盗賊か」
答えを聞かずに刀を抜く。
詠唱が開始。
「こ、こっちは五人だぞ。死にたくなけりゃ……」
喋ってるやつの目の前が小さく爆発する。相手が現象を理解するよりも早く踏み込んで刀で喉を突く。まずは一人。
「えぁ、あ。やっちまえー」
掛け声があってから、武器を振りかぶられるまでにもう一人斬りつける。致命傷にはならないものの、斬りつけた相手は倒れこんで気を失う。放置したら血が抜けて死ぬかもしれない。これで、二人目。
次に僕の左右から鍬と鉈が迫ってくる。ハックの発動した魔術が鍬を持っているやつを燃やす。振りかぶられた鍬は狙いを外して全然違う場所に着地する。鉈の方は振りかぶられた位置で前腕を狙って刀を上段から落とす。腕の筋を斬りつつ、骨の部分で止まる。相手が痛みで悶えている間に、刀を振り抜き、後ろへ振り返りながら、鍬をもう一度振ろうとしていたやつに下から斬り上げる。腹の辺りに深く入ったのを感じとりつつ、足払いをして転がす。三人目。
鉈のやつは必死に腕のあたりを押さえていて、攻撃して来そうにないので、最後の一人を警戒する。
「う、うわあああああああああああああああ」
長い棒を持ったやつがそのリーチを活かして殴りかかってくる。刀の側面で斜めに受けつつ、ハックの魔術が発動するまでの、少しの時間を稼ぐ。服が燃え全身が薄く焼ける。がむしゃらに棒を振り回されるが、簡単にいなして武器を弾き飛ばす。そして、刺し殺す。四人目。
最後に残った鉈持ちのやつに注意を戻す。ああ、最後のやつは右腕を左腕で必死に抱え込んだまま、駆け出す。
僕はそれを追いかける。
姿勢も崩れ崩れの相手を追いかけているはずなのに、地の利のせいか追いつくことができない。
そのまま追いかけていくと、古びた木造家屋が集まっている場所に出る。家屋が集まっていて、ところどころ畑や井戸があるところを見ると村なのだが、雑草が生えていて森との境目がなくなっているせいか、人が住んでいる感じがしない。
「助けっ、助けてくれぇ! イーもニーパーもプリコットもジャスもやられちまった!」
相手が叫ぶ。
そして、村の中で一番大きな建物の入口へ、三人、人が集まっている方へ逃げていく。
それ以外に村の中に人影は見えない。盗賊以外誰もいないのか、全員家の中に引っ込んでいるのか。
適宜背後にも気を配りつつ、また、できるだけ道の端を通って追いかける。
突然、頭に重い衝撃を感じる。衝撃を感じた方を振り返ると、一人の若者が建物の陰からこっちを睨んでいる。
反転して突撃。
怖気付いたのか反撃が来ずに間合いを詰められる。全力疾走の勢いをそのまま使って刺し殺す。五人目。
即死した若者を押しのけると、青ざめているやつがいる。一人が逃げ出そうとして、一人が近くにあったフォーク状の農具を持つ。農具を持ったやつがそれを振る前に斬撃。怯んだところを二太刀。六人目。
逃げ出したやつにピッタリくっついて走る。そのまま、一番大きな建物のところまで。無事扉の前まで来れたので、後ろから首に腕を回し固定。動脈を切り裂いて七人目。
お主、建物の中が静かすぎる。
待ち伏せか。わざわざ玄関から入る必要もないな。家の中の大まかな人の配置をハックの魔術で探って入れる場所を探す。
一階の窓に貼ってあった薄い板を割って侵入。近くにいた一人が振り向いて矢を射掛けてくるが、当たらない。八人目。
魔術を詠唱しながら、ゆっくり歩いて玄関ホールに入って、弓矢を持ってるやつへ魔術を放つ。九──死にきれてなかったみたいなので後回し。鍋と鍋蓋を盾に鉈を持ったやつが左右から斬りかかる。一歩後ろに下がって回避。相手の鉈同士がぶつかって不快な音を出す。どんくさそうな左のやつが持ってる鍋に蹴りを入れて崩す。右のやつの第二撃は、ハックが魔術による爆発でねこだまししたことで中断される。体を捻り回り込み背中から斬りつける。九人目。
さっきのやつが倒れると、もう片方と目が合う。鉈のリーチの外から下段、すねのあたりを斬る。膝をついたところ頭から斬る。十人目。
半殺しにしてあった、弓を持っていたやつのところに戻り、地面を這っていたところを刺す。十一人目。
病室を探して最初に襲ってきた五人の最後の一人も殺す。十二人目。
建物に火の手が上がるが、脱出の時間は充分にある。外に出ると、村の女性たちが六人固まって、こちらを見ていた。全員武器を持っていた。年配の女性が前に出る。十三人目。
十四人目。
十五人目。
十六人目。
十七人目。
十八人目。
まだまだ警戒を解くことはできない、村の規模的にもう少し人数がいそうだ。一軒一軒見て回っていると、クローゼットから子どもが飛び出してくる。十九人目。
今度はクローゼットも見るようにする。一通り見終わって、比較的綺麗な家の中で一息休憩、しているところに武器と呼ぶにもお粗末な鉄くずを持った子どもたちがやってくる。二十人目。
二十一人目。
二十二人目。
二十三人目。
部屋に絶望の臭いが充満したので、家を変える。ところどころ擦り切れ、使い込まれたベッドに横たわる。今度は誰も来なかった。
僕は一人になった。
活動報告に、今後の投稿予定と C105 の告知あります。
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