Five Nights at Freddy's 〜逆転の発想で“最後の安全地帯”を潰した傑作ホラー〜
深夜警備員として朝まで生存することが目的の人気ホラーゲームのシリーズ1作目。
防犯カメラを駆使して殺人ロボットの位置を探り、襲われそうになったらシャッターを閉めて侵入を防ぎます。
皆さんホラーゲームで絶対に怖くない方法って知っていますか?
答えは簡単。コントローラーから手を離すことです。
遊ぶのをやめてしまえば絶対に襲われることはありません(もちろん敵が目の前にいる状況で離せば死にますが)。
これはゲームというものがプレイヤーの操作によって進行する仕組みであることによる宿命であり、『バイオハザード』も『零』も進むと怖い目にあうというシステムで作られています。
このシステムはプレイヤーにおばけ屋敷のような恐怖を体験させてくれる反面、プレイヤーが恐怖を覚悟してゲームを進めている時にしか相手が襲ってこないというジレンマも抱えています。
そんな“コントローラーに触れなければなにも起きない”という絶対の安全地帯を潰しに来たのが本作『Five Nights at Freddy's』です。
このゲームではプレイヤーはピザ屋の警備員となり店内を徘徊する殺人ロボットから身を守ることになります。
操作はマウス移動とクリックのみで
“監視カメラのモニターを見る(遠くにいる敵が見える)”
“警備室の出入口をライトで照らす(入ってくる直前の敵が見える)”
“警備室のドアを閉める(敵が入ってこれない)”
の3つの行動しかとれません。
そうです。
このゲームには移動の操作が存在しないのです。
ゲームが始まると殺人ロボットはプレイヤーを探して店内を歩き回ります。
プレイヤーは監視カメラでロボットたちの位置を把握し、近づいてきたらドアを閉めて身を守ります。
プレイヤーは一歩も部屋から動かず、敵がプレイヤーに向けて進んでくるという普通のホラーゲームの逆の立場でステージが進んでいくのです(敵が進んでくる仕組み自体はインベーダーゲームの頃からあるでしょうが、ホラーで採用されたのは珍しいのではないでしょうか)。
1ステージの制限時間いっぱいを、いつ敵に襲われるかもわからない恐怖とともに過ごします。
そしてこのゲームを傑作に押し上げたもう1つの要素が電力のシステムです。
ピザ屋の経営者は超がつくほどのケチで、店が閉まっている間は電線ではなく日中に充電したバッテリーに電力を切り替えています。
使い切ったらそれまでで、残りの時間は電気なしで過ごさなくてはなりません。
電力切れ=ゲームオーバーなのですが、ゲーム中はカメラを見る(消費電力小)、ライトをつける(小)、シャッターを閉める(大)というすべての動作に電力が必要で、なんなら警備室の電気がついているのでなにもしなくても電力は減っていきます。
あまたのホラーゲームが
“プレイヤーが自発的に進んで”“敵に対処すること”で恐怖を作り出しているのに対し、
このゲームは“敵がプレイヤーに迫ってきているのに”“なにもしないこと”を強いられるのです。
これほど怖いことがあるでしょうか?
いましも殺人ロボットが自分を見つけているかもしれないのに、あえて節電のためになにもせず一呼吸置く際の緊張感はすさまじいものがあります。
冒頭でコントローラーを追いしまえばいいと書きましたが、このゲームの恐怖はその瞬間に最大風速を迎えるのです。