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お待たせ。Ⅰ 完結。

次は近い。


【Kindle】

上巻、済。ver.3.4.2

下巻、済。

これまでのOBLATIONは…



── 鋼の遺跡 ──


ここはどこ…。

僕は一体…。



── テネブラエ・深層コア ──


「ようやく救ったと思ったのに、また振り出しだなんて」

「あなたがこの世界を救ったのは事実よ。ただ、世界が小さかったってだけ」

「皆を救いたい。神の貴女なら知っているはず。僕はどうすればいいか教えて」

「焦らないで。あなたには時間が必要よ。相手は強大。しっかりと準備しなくちゃね。でも安心して、私があなたをサポートをする。あなたは時が来るまで、できるだけ力をつけておくのよ。今はそれしか言えないわ」

「その後は?」

「それはイニティウムの状況次第」

「イニティウム…全ての始まり」

「ええ、あそこに全てを解決する鍵がある」

「どうして僕を助けてくれるの?」

「一言では言えないわ。だけどあなたは種族の最後の生き残り。そして、共通の敵がいる。だからあなたにしかできない事なの。敵を知る唯一の種族だから」


──『ロードオブダーク(2016〜2018)』より ──


────

OBLATION ヴォイドの呼び声Ⅰ

全 Ⅰ章 〜 Ⅻ章

上 Ⅰ章 〜 Ⅵ章

────


────

Ⅰ章 新たな時代

Ⅱ章 混迷

Ⅲ章 カタルシス

Ⅳ章 ブラックハンド

Ⅴ章 烙印

Ⅵ章 新たな起点

────



── Ⅰ章『新たな時代』──



OBLATIONの束縛からは何者も逃れる事はできない。『真実の探求』より。著:ヒューバート:時の語り部。



目を開けると視界は暗闇に覆われていた。

全身に感じる圧迫感。気も優れない。


一体どうなっているのか。

何も思い出せない。

だが今はそれよりも早く、この耐え難い苦痛から逃れたい。


右手を思い切り突き出す。

鈍く木のへし折れる音。何かを突き破った。

突き破った箇所から冷たい空気が流れくるのを感じる。

そのまま突き破った穴掴み持ち上げる「ん」意外と軽いな。

腐っていたのか、掴んでる間に崩れた。

上半身を起こし、掴んでいた木の板を遠くへ投げ捨てる。

棺か。

外へ出る。


冷たい空気の流れる音だけが聞こえる。


静かだ。

辺りを見回すと、どこかの地下のようだ。見覚えはない。

暗闇に目が慣れてきたのか、視界がやけにはっきりとしてくる。


ここはどこだ。それに俺は…何故棺から。

棺を見る。

やけに立派な石の台座の上に、木製の棺が置かれている。特に変わった棺という感じはしない。

蘇ったのか。それともここは魂の行き着く場所か。

あまり良い状況ではなさそうだ。


薄暗い視界の中、天井や壁を見回していると、何故か眩しいほどに視界が鮮明になってくる。

まるで辺りが光で照らされているかのように見通せるようになった。


自分の両手に目をやる。

見えるのは剥き出しの骨。

色は白く悪くない。生前は健康だったようだ。

アンデッドか。

「ふむ(疑問)」

だが術者らしき者の気配はしない。


生前は思い出せはしないが、ろくな運命ではなかったようだ。

踏み出すと足に何かが当たった。

地面を転がっていく1本の骨。

取れたのか。

視線をやると、棺の台座の石にもたれ掛かるように死んでいる亡骸があった。


こいつは俺のように蘇ってはいないのか。

何故だ。

手に何かもっているな。


羊皮紙を拾い上げる。

亡骸の手ごと取れた。羊皮紙を抜き、手を捨て、羊皮紙を広げ読む。


──朽ちかけた羊皮紙。

この時まで貴方と運命を共にできた事を嬉しく思います。

死しても尚、貴方は私達の良き導き手となってくれました。

しかし貴方がいなくなってからというもの、私の心は…。

──


これ以上は腐敗していて読めない。

羊皮紙を地面に捨てる。


この者が何者か心当たりはないな。


頭蓋骨を軽く擦る。

「安らかにな(哀憐)」

俺が触れた事で頭蓋骨は地面に落ち、転がっていく。落ちた拍子に一部が欠けてしまったようだ。


部屋の出口へ向かう。

ドアなどない出口から部屋を出る。


部屋の外に出ると植物の蔓や苔が生えた通路に出る。左の通路は天井が崩れ落ちていて進めそうにない。


随分と寂れているようだ。崩れないだろうな。

長い間外部とは隔たれていたのか。

広そうだな。

全てを見て回るのは無理だな。

一先ず出口を目指そう。

右の通路へ進む。


何かの足音が崩れた通路の先から聞こえてくる。

音の方を注視するが、隙間からは何も見えない。すぐに辺りは静まり返ってしまった。


独特な足音だな。

魔物か、遺跡荒らしか、他に俺のような奴がいるのか。用心しなくてはな。


手に力を集中させるが上手く力が入らない。

魔法は無理なのか。

まったく。


武器になりそうな物は…ないか。

しかし魂の奥底から無意識に力を感じる。

沸き上がってくるような…この感覚は一体なんだ。

咄嗟に抑えきれなくなった力を解き放ってしまった。

「はっ」

何らかの魔法を放ったが、特に変化はない。

今のは一体。

仕方ない。このまま進むしかないか。


通路を真っ直ぐ進んでいくと、遠くから剣を弾く音が微かに聞こえてくる。そっと耳を澄ます。


間違いない。

何者かが争っているのか。

音のする方へ向かう。

音は次第に大きくなる。


どうやらこの部屋のようだな。

でかい入り口だ。崩れたドアの1/4程度が残っている。

壁に背を付け、そっと中を覗き込む。

ジャイアントスパイダーと複数のスケルトンが戦っていた。

アンデッドか。

仲間と思うには早計だが、奴らも目覚めたのか?


スケルトン達は錆びた剣や古びた盾を手に取り、蜘蛛と必死に戦っている。戦況はあまり良くないようだ。

蜘蛛が勝つか、スケルトンが勝つか。

スケルトンが勝つ方が俺にとっては好都合かもしれん。


参戦するか。

まあ共闘すれば友情も深まるだろう。

ああ、最高だな…。


スケルトンらと共闘すべく蜘蛛の方へ静かに向かう。

スケルトンらは俺が見えている筈だが、こちらに見向きもしない。


仲間と思ってくれているのか、単に気付いていないだけか。


あの蜘蛛、少し妙だな。

地面に転がる錆びた剣を拾い、蜘蛛へ接近する。

「グハッ!」

蜘蛛の尻から白い糸が飛び出し、呆気なく壁へと叩きつけられてしまった。

無駄に目が多いわけじゃないようだな。

避けたつもりだったが、思うように体が動かなかった。

まったく役に立たん体だ。


錆びた剣で蜘蛛の糸を切り、地面に降りる。


この数相手でも蜘蛛はこっちに対処する余裕がある。

手を肋へ当て具合を探る。

痛みは少しあったが、それほどダメージは負ってないようだな。だが思った以上に衝撃が大きかった。

あの蜘蛛は見かけ以上にパワーがあるようだ。


蜘蛛が一体のスケルトンを弾き飛ばし壁に激突させる。

スケルトンは体の骨がバラバラになり、地面に音を立てながら散乱していった。


他のスケルトン達は俺と違い、比較的 蜘蛛の攻撃を上手く躱し凌いでいるようだ。

戦うスケルトン達を眺める。

特に言葉での意思疎通はしていないようだ。


ふと目に入るスケルトンの足元に発生していたオーラ。

こちらに最も近いスケルトンの足元に赤いオーラが出ている。

戦況を見るに、赤いオーラが出ているスケルトンのみが蜘蛛の攻撃を素早く交わし、蜘蛛に一撃を入れている。


すぐさまスケルトン達の後方へ向かう。

すると全てのスケルトン達に同様のオーラが発生した。

読み通り、俺には他者に何らかの力を与える魔法が備わっていたのか。

血のオーラ。頭によぎる。

なに!?


血のオーラを浴び、攻勢が増したスケルトン達が次々と蜘蛛の腹へ剣を突き刺していく。

勢いが増したスケルトン達の攻撃により、突き刺された蜘蛛の腹からは黄色い血が地面へ大量に滴り落ちていく。

蜘蛛の攻撃を全て躱していくスケルトン達。

蜘蛛はその後もスケルトン達の攻撃を受け続け、次第に動きが鈍くなっていった。


スケルトン達の猛攻が続き、蜘蛛はとうとう地面に横たわったまま動かなくなってしまった。

蜘蛛が倒れた後も、スケルトン達は容赦なく蜘蛛の体を刺し続けている。

スケルトンの持つ錆びた剣は蜘蛛の黄色い血で染まっていた。


そして蜘蛛を殺し終えたスケルトン達が一斉に俺の方を向く。

「おっと。良い戦いだったな」スケルトン達は俺の方を見たまま、沈黙し微動だにしない「分かり辛かったとは思うが、俺も助力したんだ」しかしスケルトン達からの返事はない「良かったら、ここは互いに協力しないか? ここから出るとして、味方は多い方が良いだろう? 違うか?」スケルトン達がじっと見つめ続けてくる「なんとか言ったらどうなんだ? 舌がなくとも話せるだろう(威圧)」

「…………」

「話せないのか?(困惑)」どいつからも返事はない「本当に俺のように話せないのか? 誰も? 頷くぐらい出来るだろう。おい、どうなんだ(威圧)」俺の声だけがフロアへ響いていく「分かった。それが答えなら、俺はもう行かせてもらう。構うのなら容赦はしないぞ」スケルトンらと目を合わせたまま、ゆっくり後退する。その時、スケルトン達が一斉に一歩踏み出しこちらへ近付いてきた「よせよ。無意味な戦いになる。互いに何の得にもならん」スケルトン達は相変わらずこちらになんのリアクションも起こさない。


まったく。なんて気味の悪い連中なんだ。

しかしこちらが一歩、また一歩と下がると、スケルトン達も一歩、また一歩と近付いてくる。

指差し、人差し指でこちらへ招く。

「お前、その剣を寄越せ」スケルトンは剣を両手で携え俺の前へと差し出してきた。スケルトンから剣を受け取り腰へ携える「お前はローブを」同じくこちらにローブを差し出すスケルトン。


ローブを着た後、スケルトン達に再び命令する「膝まずけ」スケルトン達は一斉にこちらへと膝まずく。

やはりか。

だが何故だ。何故俺の命令を。


こいつらには意思がないのか。

本当にただ喋れないだけか。

また頭によぎる。意思がない。

魂を囚われ、ただの心を持たぬアンデッドに成り果てた。


この感覚はさっきの奇妙な力と似ているな。

あの解き放った力で蘇らせたのかもしれない。だとしたら、一先ずは辻褄が合うか。

ヴォイドの呼び声。相変わらず知識が頭の中に自然とよぎっていく。


失った記憶は自身に関する記憶が殆んどだが、知識など基本的な事は問題ないか。

なら状況はかなりまずいかもしれない。

そうだと仮定した場合、なぜ知識まで奪わなかったんだ。

ただの考えすぎか、これはただの長い眠りの作用かもしれない。

憶測で考えても仕方がないか。

「あー(焦燥)」

答えが欲しい。


スケルトン達を見る。

状況の真相はまったく掴めそうにないが、こいつらは現状力強い味方だ。

今はとにかく出口を目指し先へ進むか。


だがその前に。いくつか魔法を試すか。


少し後……。


駄目か。どれも上手くいかないな。

だが死霊術だけは思った以上に洗練されている。

それに死霊術の知識だけは驚くほど頭の中に浮かんでくる。

目覚めた時よりも活力が漲っている気がする。


「スケルトン1、スケルトン2。お前達は入り口を見張れ」

2体のスケルトンが骨音を立てながら入り口に向かう

「スケルトン3、スケルトン4、スケルトン5。お前達は周囲に使える装備がないか探せ」

命令通り周囲に広がっていく。

「スケルトン6、スケルトン7。お前達は周囲を警戒しろ」


蜘蛛と周囲の繭の死体で少し死霊術を試してみるか。

横たわった蜘蛛の頭をそっと撫でる。

右手に力を込め魔力を集中させる。

目覚めた直後とは違い、自身の両目と右手に力を感じる。

まるで何かから力を得ているようだ。


しかしなんて心地良いんだ。それにこの感覚は随分と懐かしく感じる。

体の奥底から活性化していくのを強く感じる。

目の前が緑色の視界に覆われ、右手も緑色に発光し魔法をヴォイドの囁きを放つ。

生気の失われていた蜘蛛の8つの目に緑の光が宿っていく。


蜘蛛が特有の音を立てながら、傷だらけの巨体を足で支え立ち上がる。蜘蛛の発光する8つの目がこちらをじっと見つめてくる。


「気分はどうだ?」

蜘蛛の顎を撫でると、蜘蛛は気持ちよさそうに目を瞑った。どうやら上手くいったようだな。


「お前は一先ず入り口を見張っておけ」

蜘蛛は黄色い血を流しながら入り口へ向かっていく。

「スケルトン6、繭を開けろ」

スケルトンが蜘蛛の繭を切ると死体が次々と出てくる。

死体がどさりと地面に落ちる。


死体を触り、状態を確認する。

その間もスケルトンが繭を切り死体を次々落としていく。


魔物の死体が多いようだが、種族の死体もそれなりにある。

近くに街や集落でもあるのか。

あの蜘蛛が遠くの餌場から運んできたということも考えられるな。


まだ試していない死霊術の1つ、死者会話を試すか。外界の状況把握にはいいだろう。


だが種族の死体はどれもミイラ化している。保てるかどうか微妙なところだが。


死者会話を放つがミイラ化した死体が塵に変わる。

この魔法では無理そうか。


骨よりは多少、死霊魔力が残っているだろう。

残りはアンデッド化して戦力にしておいた方がいいかもな。

手に力を込める。

だが所詮は蜘蛛の餌になるような奴だ。どれも元は大した個体ではないだろう。失敗の方が多い筈だ。


蜘蛛の時と同じようにヴォイドの囁きを放つ。

相変わらず心地良い感覚が全身を駆け巡る。

ミイラの両目が緑色に光り、立ち上がる。

4体の内、3体は立ち上がる途中で塵に変わった。

生前の生命力が弱すぎて、死霊魔力に器が耐えられなかったのか。

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