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陽だまりの陽炎。~ちょっと幸福な異世界転生魔法エンジョイライフを目指す~  作者: 三月べに
序章・転生少女の手抜きの魔法エンジョイスローライフ

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40 打ち明ける。(三人称視点)

三人称視点。



 ベラが目を覚めると、自分の部屋のベッドの上に横たわっていた。


 ライトグリーンの瞳でぽけーとしたあとに、左の腕に激痛が走って、のたうち回りたくなり、小さく呻く。


 『万能眼(ヴィアイン)』で確認すれば、左腕の中心にある骨の部分に赤いモヤ。怪我。きっと骨が折れている。その左腕は、しっかりとギブスで固定されていた。


 ついでに確認したのは、自分の『魔力ポケット』。あの夜に使ったはずなのに、もう満杯だ。回復したのか。

 自然回復するものなんだと、初めて知る。今までは、何も情報がなくて迂闊に使える物ではなかったもの。使ってもいいものだったのか。


 そのままこちらを覗き込む、緑色をまとう魔力を持つハーフエルフの美女を見上げた。

 名前は、ミッチェル。


「お目覚めですか? ご気分は?」

「……妖精さん、きれい」


 牢屋の中では、ボロ布を着ているような格好だったが、今は村娘が普通に着ていそうなドレス姿だ。それでも、窓から差し込む陽射しで金髪は煌めいて、綺麗だった。

 流石、妖精の末裔とも呼ばれるエルフ族のハーフ。


「ハイ? ……い、意識は? な、何か後遺症が!?」


 美しいハーフエルフの美女ミッチェルは、どうやら自分の美しさを自覚していないらしい。


 ぽけーと見上げているベラを見て慌てふためいては、ベラの主治医を呼びに部屋を飛び出していった。


 すると何故か、ミリー達、孤児院の子ども達がなだれ込んでは、ベッドの周りで泣きべそかいた。中にはベッドによじ登って、ベラにしがみつこうとする子どももいる。怪我をしているベラのために、なんとか抱き付きを医者やカリーナ達が駆け付けて阻止した。


「なんでいるの? あ、私が言ったんだったわ……。あれからどれくらい経った?」


 どうして子ども達がいるのかと首を捻りかけたベラは、カリーナに上半身を起こしてもらい、背にクッションを置いてもらって座る体勢にする。

 あの夜に指示をした。孤児院の子ども達は、マラヴィータ家で保護中だろうと一人納得。


「ベラおねえちゃんっ。一日ずっと、起きなかったぁああっ」


 ミリーがベラの代わりにクッションを抱き締めながら、泣き喚いた。いや、他の子どもも泣きべそ状態だ。

 あの事件から一夜明けて、さらに丸一日は昏睡状態で、今、朝を迎えたということらしい。


「……お腹空いた。状況を教えて」


 ミリーの頭をなでなでしながら、きゅるるっとお腹を鳴らしたベラは、朝食を要求。

 そして、自分が力尽きたあとにどうなったのかを尋ねた。


 悪いことにはなっていないと雰囲気で感じ取っているが、現状を把握したい。


 その説明をするためにやってきたのは、ベラの父であるイザート。ロクに眠れていないのか、目の下に隈を作った疲れ切った顔で、起きたベラを見るなりホッとした表情をした。


 そんなイザートも、あの屋敷に駆け付けたと聞かされる。そのまま、ベラの指示をソードンから受け取り、領主の名のもと、指揮をしたという。


 元々囚われていた人々は、牢屋から解放して保護をした。監視と世話係をつけているとのこと。

 外にいた残党は、全員捕まえて、空になった牢屋に拘束している。


 孤児院の襲撃者も含め死体は、牢屋の廊下に並べたという。血の海になった屋敷内は、手分けして掃除をしている最中だそうだ。そのままにはしておけない。殺人現場の隠滅は、しておくべきだろう。

 敵のことをよく知るためにも、執務室などにある書類をイザートの補佐官のタシュルやジェラールなどが漁ったそう。

 領民には、緘口令通達済み。

 ベラの目覚めを待っていた。


「……すまない、ベラ……」と、疲労が隠し切れない顔のイザート。


「僕が間違っていた……」

「当たり前だボケ」


 ベラは懺悔をするイザートに、冷めた目を向けたまま、容赦なく言い放つ。


「妻を亡くしたばかりで残る娘を奪われたくない気持ちが理解出来ないわけじゃないけれど、他にも手はあったはず。なんのために、今までアンタは領主として尽くしてきたんだ。母のためにも、アンタのためにも、この領地に残った私が悪いわけ? 結局、私がいなければ起こらなかった!? 私が悪いのか!?」

「っ!」


 ふつふつと湧く怒りは、ヒートアップしていく。ベラはその爆発で、イザートに言い放つ。

 これにはその場に居合わせた大人達も、あわあわするだけで誰も止められない状況だったが。


「ベラおねえちゃん!」と、そこで一度は部屋から出されたミリーが掻い潜って、ベラの怪我をしていない腕に、しがみついてきた。


(しまった……)


 ずっと一番身近にいた子ども達も、ベラのことを“聡明で優しいお嬢様”と信じて疑わない。こんな姿を見て、余計怯えただろう。

 と、思ったのも、束の間。


「ベラおねえちゃんは、がんばった! ガマン、がんばった! 怒っていいの!」


 グスングスンと鼻水を啜り、涙をポロポロと溢すミリーは励ました。


「……うん……ありがと」と、逆に怒っていいと励まされたことに、ベラは毒気が抜けてしまった。


 こんな幼い子に言われてしまえば、烈火の怒りも勢いを失くす。

 冷静さを取り戻して、右手でミリーをあやしつつも、ベラは続けた。


「原因はなんであれ、だ。今までが、あまりにも幸運だったんだよ。こうやって犯罪者に目をつけられなかったのは、運がよかった。この領地は、ほぼ無防備。何もないからこそ、平穏で、平穏だからこそ、犯罪の隠れ蓑にもなる辺境地だ。今回がなかったとしても、いつか、悪いことが起きれば、なすすべもなく奪い尽くされるほどに無防備」


 淡々と話を戻す。

 そう。幸運だった。マラヴィータ子爵領は、辺境の領地だ。壁なんてない。荒地が広がっているから、魔物の接近には気付ける。しかし、冒険者が滞在することもない。騎士団も、常駐していないのだ。

 今回のように犯罪者に住まわれて手出しされても、すぐに助けてもらえない。


「だから、変わるしかないんだ。お父様。同じようなことを起こさせない。この地を守る」


 ベラは、強く告げた。

 変わらなければいけない。

 打ち明けるものと、まだ伏せておくことがある。


「先ずは辺境という位置にもかかわらず、防壁もなく警備も手薄な点を改善するべき。壁を作るには時間がかかるし、お金もかかる。だけど、お金もこちらで稼ぐ手も必要だから、それは波に乗せつつも、稼げばいい。防衛の点が最重要だ。王都にいくついでに、護衛や戦いの指南役と人手を雇う」

「えっ? そ、そのお金は、もしかして……」


 顔色が悪くなるイザートが頭に思い浮かべたのは、あの犯罪者達のお金だろう。

 違うので、ベラは首を横に振る。


「犯罪組織の汚れたお金を使う気はない。人を売りさばいたお金に手を出すほど、余裕がないわけじゃない。当てならある。魔石だ。王都で売れば、大金に変わる」

「去年の誕生日に見付けたあれかい? あれで足りるかい?」

「いいや? レフのおかげで見付けたあの小山……もっと魔石を発掘出来る。資金稼ぎに十二分なはず。掘ってもらおう」


 去年見つけた魔石が、収入源になるとベラは言っておく。

 イザートは目を丸くして、ジェラール達と目を合わせる。

 もちろん、どうしてそんなことを確信しているのかと尋ねられた。


「……わかるから」と、ベラは打ち明けることにする。


「お母様の魔力欠乏症も、私はジェラールに病気の名を教えてもらってから、わかってた」


 シンと静まり返る中、ベラは怪我をしていない右手を上げて、魔力を練り込む。

 気を失う前に見た、治癒魔法の魔力の色を再現。すると、出来た。


 試しに先ずは、ザクッと風の魔法でその左の掌を切った。


 一同がざわっとして慌てる中、光属性の魔法で、治癒し、怪我を治した。

 治癒魔法に驚き、ミッチェルは後退り。


「このハーフエルフのお姉さんの治癒魔法で頭の怪我を治してもらって、“私は治癒魔法の使い方がわかった”」


 あえて、”視えている”という表現はしなかった。


「レフが魔物だってことも、見付けた時から、わかってた。子ども達にも、私は基本魔法を使えるコツを教えてきたわ。そうでしょ?」


 声をかけられたミリーは、ぱちりと目を瞬かせる。


「え? 言っていいの? うん! みーんな! ベラおねえちゃんが、教えてくれたの!」

「魔力に関して、敏感なの。魔力の動かし方は、よくわかるし、一度受けた治癒魔法を使えるようになるくらいには、得意。魔石だって、魔力の塊のようなもの。だから、あの山にまだたくさんあるってわかるの」


 今はまだ、それだけを打ち明けた。

 一度受けただけの治癒魔法が使えたことで、よく理解出来た一同。


「どうしてベラは、魔石がまだあるって言わなかったんだい?」

「バカなの? 子どもの勘で、まだまだ掘るわけないでしょ」


 イザートに問われ、ベラは呆れて冷たく一瞥。

 手厳しいとイザートは、涙目。


「お母様の魔力欠乏症だって……わかってても、何も出来ない……。もうそれはごめんよ。だから、魔石を全て掘り起こしてでもして、大金に変えて、それで防衛を高めるための人材確保をする。領民も一人一人、自己防衛のためにも、力をつけてほしいけれど……そもそも、残ってくれるかしら」


 ベラの領地改革に、付き合ってくれるのか。

 それ以前に、マラヴィータ子爵領に残るのか。


「この領地で新しい事業の案なら、すでにあるんだけど」

「すでにある!?」

「ええ。思い付いたから、一応紙に書き留めたのよね。まぁ、私にしか読めないんだけど」


 ケロッと、新事業があると話すベラ。


「ベラ!? 起きたって!?」

「ベラ!」


 そこに飛び込むのは、レフとルジュ。今まで寝ていたのか、髪が乱れている。

 ベラが起きていることに安堵して胸を撫で下ろす。


「失礼いたします。領主様、ベラお嬢様が目覚めたと聞きつけて、領民が押し寄せてきました」


 領民が押し寄せているという知らせが届く。

 使用人からベラが目覚めたことが洩れて、待っていた領民に伝わったらしい。



 


なろう13周年記念で投稿を始めた今作、

今日で3周年になりました! ありがとうございます!


まだ序章部分が終わらない……笑

まぁだいたい、終わったようなものですね。

これから本編(?)!!

邪神と犯罪組織と戦いながら、魔法エンジョイライフもしていき、領地を強化していきますよ!

ベラに矢印が向く幼馴染ズの恋愛は進展するのか……!?


お楽しみに。

リアクション、ポイント、ブクマをよろしくお願いいたします!


2026/05/13⭐︎

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