表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/34

01 幸か不幸か異世界転生で魔法を。

(2023年5月13日)


おかげさまで、本日、「小説家になろう」活動を始めて、13周年となりました!

ありがとうございます!

『なろう作家13周年記念』に乗じての、

記念投稿作品です!


異世界転生したので、魔法エンジョイのスローライフを楽しもうと決めていたヒロインが、

序章の終盤でスローライフしている場合じゃないので、

気付いたら才能フル活用の無双展開になるお話!

ジャンルを「異世界恋愛」にしましたが、ヒロインがあまりにも冷めすぎて、意図的に好意をスルーします。

……逆ハーでモテまくりなので、安心してくださいね!(?)


異世界転生者の最強少女ヒロインの無双!(残酷な描写ありのR15指定)

13周年記念作品として、大いに楽しんで書いていきますね!


先ずは、3話!

 ◆―――◆



 自分の血に溺れて死にかけるのは、心底恐ろしい経験だ。

 そんな前世の死の経験を思い返しながら、私は。


「このことが知られたら、報復される。その前に……全員の息の根を止めるわ」


 冷静に告げた声は、酷く大人びて淡々と響いた。


 まだ10歳にも満たない少女だったのに。


 頭から垂らす血が、白銀の髪を赤く染めようとも。

 両手から他人の血が滴り落ちようとも。

 今すべきことを、決定した。




 ◆―――◆



 私の前世は、不幸だった。

 いやでも、本当は……。

 そこそこ幸せで。ちょっと不幸だった。

 お世辞でも、いい家庭環境ではなく、いい子ども時代とは言い難かった。それなりにグレて、すれて。それでも見捨てない親がいて。自立だと息巻いても、ブラックな仕事に心が折れても。静養させてくれる実家があって。それで、結婚相手なんていなくても、充実した生活をしていた。

 うん。だから。そう。

 そこそこ幸せだった。不幸せなことだって、経験していたけれど。


 いや、でも、やっぱり。

 ……安息の実家に、ストーカーに押し入られて、刃物で喉を刺されて、自分の血で呼吸が出来なくて、死んで逝ったなら。

 不幸だったのかな。


 もうわかんないや。

 そこんとこの判定は、正直、もうどうでもいい。



 ライトノベル。特に異世界転生モノを、まったりと実家暮らしの静養最中に堪能していた私。

 夢見ていた異世界転生をした。やったね。


 しかも、ファンタジーな異世界。やったね。


 かろうじて、貴族の娘。やったね。

 利点は、貴族だからこそ、平民よりは学べるレベルは高いこと。魔力量があること。

 かろうじて、領地を持つ子爵でも、そんなに裕福ではなく、だからと言って貧困していない。

 不便ない生活が送れるはず。やったね。


 嫌なのは、弱小だとしても貴族。貴族っぽいことをする。

 王都で親戚の貴族と会い、社交活動をしたが、早々に私は「おウチに帰りたい!」と駄々をこねた。

 ぶっちゃけ、王都なんて、洋風のお城と街並みを観賞しただけで満足。

 お茶会をいくつも参加させられたが、お高くとまったマセた令嬢達は、すでに貧乏田舎令嬢だと私を認識して、見下して嘲笑っていた。

 子は親に似る。親もそんな顔なんでしょ、やれやれ。

 高級菓子を食べることで気を紛らわせたが、やはり、長くは付き合い切れない。


 それ以外のまともそうな子どもとも顔見知りにはなったけれど、特に遊ぶ約束をすることもなく、ちゃんと別れの挨拶もすることなく、私は母と領地に戻ることになった。


 『アルトゥオーロ王国』。王都『ラン』。

 王国の真ん中、王都から領地は、先ず、機関車で一日移動し、その後、馬車で一週間ほど移動しなくてはいけない距離にある。

 アルトゥオーロ王国には、三つの都市があり、一つが王都ラン。

 その下に位置する形で、『エジトラン』という名の都市がある。そこまで列車で一日。そして、降りる。

 そこから、一週間も馬車に揺られて、東に真っすぐいけば、辺境とも呼べるマラヴィータ子爵領に到着するのだ。


 おともは、女使用人(メイド)の三人と、男使用人の三人。

 道中は、ファンタジーな生き物である魔獣も出没はするが、田舎の一般的な害獣レベル。猪や子熊程度。

 男使用人達の自己防衛の戦闘能力で十分、という考えらしい。

 でも、運が悪ければ、イレギュラーな凶暴な魔獣や魔物と遭遇する可能性もある。

 そんな危険な旅をしてまで、どうして王都に行ったのやら。父は領地の仕事のために、残ったのに。

 母の親戚だけど、お呼ばれしたわけではない。

 あっちがお金持ちなら、行き帰りも安全なように、せめて傭兵などを雇って、寄越してくれればいいものを。


 どうして、王都に行ったのか。

 私のその質問に対して、母は微苦笑で言った。


「あなたのお婿さんを見付けたかったのよ。ベラ」


 面食らう。

 白銀色の髪の美女は、ライトグリーンの瞳を細めた。


「また来年でも、いい人を見付けられるといいわね」


 なんて、穏やかに笑う母。

 要するに、一人娘しかいないから、婿養子で跡継ぎとなる貴族令息を探していたのか。

 そのために、王都へ出てきた。


 結婚相手は、貴族でなくてはいけない。そう思うと、非常に面倒だった。

 顔を合わせた貴族令息の大半は、クソガキだったのだ。もちろん、例外はいた。でも、そんな例外も、来年にはどうなっているのやら……。


 かろうじて、領地を経営している子爵家。そこに婿入りするなら、()()()()()()()()()。むしろ、それしかない。

 それが母の考えらしく、オススメの貴族令息の話をされた。

 あの家の次男、または三男がよさそうだ、とか。

 私が話していたのは、あの家の長男だから難しいわよ、とか。

 ……どの子か、わからん。

 乳母も勤めた年配のメイドとも話をしている間、私は言ってやった。


「お母さまは、身体が弱いの?」

「え? まさか。どうして? ピンピンしてるけど」

「なら、()()()()()()()()、他の家から婿養子の跡継ぎを考えなくてもいいのでは?」

「……まあ!!」


 母は、たちまち顔をポッと赤らめる。


 作ればいいじゃん、直系の跡継ぎ。息子をさ。

 『恋愛結婚でとっ捕まえろ★』という難関なミッションを、私にさせるより、そっちが早い。


「誰からそんなこと! もう! ベラだって、いい人と早く出会った方がいいわよ! 早くしないと、いい人が取られちゃうわよ!」


 真っ赤になって動揺した母を見て、乳母達は笑った。


「取られちゃうって……」と、肩を竦める。


 変なことを言う。

 確かに、結婚相手が貴族令息一択になるなら、同年代に婚約者などの相手が出来る前に……ということらしいけど。

 それが、ものすっごく、面倒だ。


「私じゃなくて、お父様に似たのね。社交は楽しいのに……」


 私の気持ちを察したのか、ちょっぴり寂しげに微笑む母エラーナ。


 彼女は、社交好き。親戚とも、社交界で目立っていたという話をしていた。楽しげだったと思う。

 白銀色の髪とライトグリーンの瞳と美しい顔立ちの母。昔は、そこそこ人気のご令嬢だったと、簡単に想像がつく。


 実家も、王都に家を持つ伯爵家だしね。領地はなくても、事業を上手く動かしているとか。

 私が生まれてから会っていなかった友人達と会えて、心底嬉しそうで楽しそうだったっけ。


 社交界で華やかな付き合いを楽しむことが好きで、それに似合っているのに。

 嫁ぎ先は、王都から離れた領地を持つ子爵家の長男。

 優しさに惚れ込んで嫁いだらしい。


 ぶっちゃけ、父の長所は優しさぐらいだろう。

 ぶっちゃけ、冴えない優男。

 ぶっちゃけ、母ほどの美女を嫁にもらえたことが、意外すぎる。それくらいには、父の魅力は母と釣り合わないと、子どもながらに思っていた。


 お茶会や夜会がない代わりに、母は慈善活動から、近所付き合いに力を入れている。


 本当は、物足りないのだろう。そんな代わりなど。

 愛のために、好きな華やかさから離れてしまった母。


 ……ちょっと、可哀想だ。

 前世の母も、社交的な性格だったということは覚えているので、つまらなそうだと、想像で理解が出来る。


「来年は、もっと頑張るわ。お母さま」

「まあ!!」


 ポッと頬を赤らめる母は、嬉しそうに笑みを零した。


 社交好きな母に付き合う。

 私の相手探しは、王都に帰って、そして社交の場に出る、いい口実なのだ。

 私も私で、出来る限りの勉強をしたい。


 だって、辺境の田舎領地では、いい教育なんてないもん。

 魔法の書物は、一握り。しかも、だ。魔法の歴史と基礎の類だけ。


 都市の方が、いい本がある。領地なんて、図書館もない。あったところで、利用者がいないのだ。ほぼ無意味。

 あるのは、小さな書店が二つ。新作が欲しければ、取り寄せを頼まないといけない。最低二週間は、かかる。お取り寄せ費も込み。お高い。


 王都で社交活動も頑張って付き合ったら、褒美として勉強させてもらおう。

 なんなら、母の姉の息子であり、賢そうな従兄(いとこ)が学んでいることを、丸ごと教えてもらってもいい。

 王都だと、見栄もあって、それなりに有名な教師を雇うから。私は両親に頼めないので、従兄から()()()()もらうわ。



 魔法は、基本的に道具のようなもの。

 使えれば、便利な物。

 魔力の量は、成長するにつれて、増えるものだ。

 ただし、子どもから大人の身長が伸びる程度のもの。


 魔物や魔獣という害獣から身を守るためにも、平民だってなんらかの攻撃魔法を備えている。身を守るための。


 父は、バリバリッと感電させる魔法を使う。

 母は、植物を操り、身を守る緑の魔法を使う。

 男使用人のほとんどは、火の魔法。ボボンッと、派手に爆発やら、燃え上がらせるやら。

 あとは、水の魔法。両手に溜まるくらいの水を出せれば、上々。

 それから、風の魔法。これは、そよ風。


 相当不器用ではなければ、この雷、緑、火、水、風の魔法は、使えるようになる。

 俗に『基本魔法』と位置付けられて、そう呼ばれていた。


 これが、小難しい。

 本を熟読して、実践。

 火は、マッチレベル。雷は、静電気レベル。

 他は、惜しいってレベルで、発動しそびれる。練習している間に、魔力は切れてしまって、ぐったりとしてしまう。


「ほほほっ。また魔力切れですな、ベラお嬢様」


 我が家の使用人の一番の古株、執事のジェラール・ナーザが笑った。

 白髪に白いくわえ髭の老人と紳士の風格。屋敷を母の指示の元、管理しているのは、彼だ。

 ちなみに、彼の息子のタシェルは、父の補佐を務めている。秘書。右腕。


 魔法が器用に使えるジェラールは、私の魔法だけではなく、ちゃんと時間を設けて、義務教育レベルの知識を教えてくれている。


「はい。次は、行儀作法の勉強ですよ、ベラお嬢様」


 乳母のカリーナ・ケイリンには、魔法の練習が終わったあとに、貴族令嬢としての礼儀作法を習った。


「……給料って、ちゃんと働きに見合うものをもらっているの?」


 使用人の仕事と並行して、私の教育もこなす彼らに、私は疑問でならずに尋ねる。


 しかし、キョトンとした二人は、けらりと「もらっています」と言い退けた。


 正式な教師を雇えないような貴族の家。

 魔法教育や淑女教育なんて、本業でもないのに、行うってどうなんだろう。


 んー、まぁ。

 こんな辺境田舎領地の貴族の子どもには、しっかり学んだ大人が教える程度で、十分ということなのだろうな。


 そんな辺境田舎領地に、一見、実力を秘めた隠居生活をする魔術師や騎士がいたりしないか、と探してみたりした。

 実力のある人から、得るものを得たい。

 とか、思っていた。


 だが、しかし。

 いたのは、よぼよぼに老いたおじいちゃん。ずいぶん前から、引退生活を楽しんでいる元魔術師の老人だ。少々ボケ始めているとか。

 あと、騎士だったらしいが、普通に飲んだくれていたせいで、クビになったダメオッサン。雇われ兵士の仕事をしているだけだとか。夜は大半、居酒屋に入り浸っているので、本当にダメオッサン。


 うん。

 いい師匠を得て、スムーズにレベルアップ!

 とかは、無理だったわ。


 しょうがないので、魔法は執事のジェラールに学ぶ。

 剣術は護身術程度に、心得を持っている兵士の人達に教えてもらった。幼い子どもが、身を守るための必要最小限の術だ。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ