第2話 驚異!突出した住人たち
ヤバイです。かなり攻めた内容です。
もしかしたら気分が悪くなるかもしれません。
ですが、書きます。
批判が多くなって書く意欲がなくなったら・・・
その時考えます。
まぁこれをフィクションと捉えたままでいいのかどうかは
ご自身で判断してください。
私自身、これを楽しく書いている訳ではないのですから・・・。
・・・いや、楽しくというか全てはメッセージです。
何を伝えたいのか、どう見てほしいのか。
それに気づくのはあなたかもしれません・・・。
退院当日・・・。
看護師は我を車椅子へと移乗させる。
「ジュウゴロウさん、じゃあ立ちますねー」
く、我の股に足を入れるんではない!
全く・・・何を習ってきたのだこの娘は・・・。
それにしても下肢に全く力が入らない。
確かに移乗をされなければ車椅子に移ることすらままならない。
辛うじて腕はどうにかだが動かせる。
ペンが持てるならば、書記による魔法を発動させるられるか・・・。
しかし自身の既往もわからないとは不便で仕方がない。
転生後は『アカシック・レポート』も使用不可で、この世界の情報を全く得られていない。
わかったことと言えば、この依代は15人兄弟の末っ子の我久武留重五郎という名前・・・。
まさか名字の方がキラキラであったとは。
齢92歳、兄弟全てが他界しているため身内が誰もおらず、キーパーソンは成年後見人がついている。
それくらいしか把握出来ていない。
「退院おめでとうね。じゃあねージュウゴロウさん!」
「あ、今日ENTだったんだ!ジュウゴロー、またね〜」
・・・瀕死だった爺を経過も見ずに平気で退院させるとは。
それに名字が読みにくいとは言え、あだ名や呼び捨てとは信じられん。
我は介護タクシーに載せられた。
*****
着いた先は小さい施設だった。
なに・・・『有料老人ホーム SANZU Of River Tea』?
名前のセンスが異質であるな。
『三途の川でお茶』だとしたら、とんだブラックジョークだろう。
「あー!我久武留さん!待ってました!おかえりなさい!またよろしくお願いします〜」
胸の名札には『ケアワーカー 柊 鈴音』と書いてある。
ほう、ここの職員か。
それにしては礼儀がなっているな。
完全な敬語ではないにしろ、丁寧に対応しようというのが見受けられる。
それだけでも気分を害すことはない。
施設内に案内される。
「お帰りなさい、我久さん〜」
我は元々、ここの住人だったのか。
その時の記憶は無いが、発言からするとそうなのだろう。
恐らくこの依代が、瀕死となり息を吹き返す際に我の魂魄が流入されて復活してしまったのだろう。
普通なら生を受けると同時に転生が完了するはずだが、不遇のタイミングでこの依代とシンクロしてしまったと考えるのが自然だ。
これによって逆転生がかなり困難となってしまったことは言うまでもない。
この体で力を戻すことは至難だろう。
だが我もこのまま手を拱いているつもりもない。
必ずや復活し、あの炎身と氷華の息の根を止めるのだ。
「ほおお、武留ではないか。この死に損ないが。カッカッカ」
瞬に現れたのはひょろ長い爺さんだ。
それにしても我を死に損ない扱いするとは・・・。
その肉を全て残さず喰らい尽くしてやるわ。
・・・いや、喰う部分がないほど羸痩が著明である。
「お主は誰だ」
少しのみだが喋れるようになった我は、このゴボウに名を名乗らせる。
「ジュウゴロウ!このボケ!ワシを忘れるとは!兵糧松忠じゃろうが」
いや、知らん。
しかしここでの記憶が無い以上、こやつらの話を頼るしか無い。
「それにしても鈴音ちゃんは相変わらず絶品さんじゃのう。うちの家内の次にじゃが・・・」
色ボケしているのかこのゴボウは。
それになんだ、ぜっぴんさんとは。
「見るか?ワシの家内。ホレ、どうじゃ。絶品さんじゃろう」
無理やり顔の前に持ってこられた写真には一人の女性が写っている。
この人間界では見た目を重視して評価をすることが多いと聞く。
誰の基準かは知らんが。
我は元人間ではあったが、そのような感情を持ち合わせたことがない。
見た目によって評価が決まるということはありえない。
内在する力量であったり、配慮、思慮、念慮などが評価の対象である。
「どうじゃ、声も出ないだろう」
ああ、声を出すのが辛いからな。
「明日には来ると思うから紹介するでな!我久よ、また夕飯でな!カッカ!」
我の体が動けばその頭蓋骨を粉塵にしてやったものを・・・。
「ひょろまつさん・・・、今でも亡くなられた奥さんの写真をずっと大事に持って・・・。明日来る明日来るって・・・、泣けるよね」
「何度見ても胸が痛いわ・・・」
・・・ふむ、残髪を全て剃り落とすくらいで勘弁してやろう。
それにしても見た目あれだけしっかりしてそうなゴボウですらディメンツか・・・。
そうしたこともわからなくなるとは、やはり人間は惨めなものだな。
「おや、我久じゃないか。元気でやってたかい?」
声のする方を向くと車椅子に乗った婆がそこにいた。
なんと・・・我が遅れを取るとは、この婆・・・只者じゃないな。
・・・いや、今は我が遅いだけか。
「どうせ死に損なったんだろう?私は早くあの世に逝きたいっていつもお願いしてるんだけどねぇ」
ふん、ならば我が介錯してやろう。
・・・、力が戻ったらな。
それまで精々、苦しみつつ生きながらえるがいい。
むしゃむしゃ・・・
ぬ、なんだこの音は・・・。
眼に留まったのは鬼気迫る形相で何かを貪っている爺だった。
・・・っく!?異食行為か!この爺、シボリ(おしぼり)を食っているぞ。
バカ者が・・・。
眼の前に置いて良いものかどうかの区別も出来んのか・・・。
ペチンペチン・・・
今度は何だ。
ペチンペチン・・・
前額部を掌で叩いている爺がいる。
あれだけ強く叩く意味はなんだ。
あの爺は痛みを知らんのか。
ドンドンドン・・・
次から次へとどういうわけだ。
机を叩いている婆さんがいる。
「ハッハー!うん、いいよー!ハッハー!」
・・・はっきり言って混沌だ。
我は闇の存在だが、この空間が正に混沌である。
「ここはマジ動物園。全員ヤベーっしょ!ウケんだけど」
その耳障りな声色を我は聞き逃さなかった。
見るからに世間知らずな男・・・。
口の聞き方やら整容などが著しく劣悪である。
それに名札もしていないため、名を認識出来ない。
「やめなよ・・・そんな言い方・・・」
先程の柊とやらに似た雰囲気の女が静止する。
名は・・・「鳳城夏恋」か。
男はそれでも止まらず、
「え?なんで?ほんとのことっしょ。獣みたいじゃん。ここ、動物園じゃん。世話してんのは俺らだし。タクタロウも俺がデコを引っ叩きすぎたから自分から叩くようになってやんの!笑えるwww」
この童めが・・・。
我を獣呼ばわりするとはな。
それに高齢者虐待とは不届きな奴・・・。
爺の身となったが意識だけは鮮明である。
前世で得た知識も欠落していない。
我の力に問題はあるが、この童をそのままにしておくべきではないと判断した。