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第13話 奮起!だが早番の朝は辛い・・・!

*****



 ・・・目が開かない。

 恐らくは朝・・・朝が来ている。


 外では小鳥たちがぐぜり、窓から溢れる冬の日差しが春暖のように温かい。



 どうやら我としたことが昨夜、考えを巡らせすぎて夜更かしをしたようだ。

 この依代は十分な睡眠を取らせなければ、体も脳もまともな活動が出来なくなる。


 施設の情事も大事だが、今は我自身のことを最優先にしなければならない。

 まだ倒れる訳にはいかぬ・・・。


 だから・・・もう少し・・・寝よ・・・


コンコンガラッ!


「我久武留さーん!おはようございまーーす!!あれ?大丈夫ですか?」


 な・・・は、華神・・・!?

 何故このタイミングでこやつが・・・!


 足音もなく忍び寄り、ノック前に我が気づかないとは・・・。

 想像以上にやるようだな、華神・・・!


「驚いているようですけど私、夜勤だったんですよ?気づいていませんでしたよね。独語がずっと続いていたので眠剤でもお持ちしようかと思ってましたー。まぁ頓服が無かったので様子を見させてもらいましたよ」



 夜勤だったのか・・・。

 シフト管理が甘かった。

 事前に確認していれば寝首をかかれることはなかったというのに。


「ちなみに本来なら矢場さんが夜勤の予定でしたが、昨日シフト変更して私に変わっていますので」



 ・・・欲しい解を出してくるな。

 こやつの目的は一体何なんだ・・・。


「私は純粋に我久武留さんに興味があってサポートをさせてもらいたいだけですので、どうかそう身構えずに」


 くっ・・・、そのような言葉が信じられるものか。

 こやつは派遣社員からいきなり看護副主任に任命されるほどの力量があるとはいえ、それだけでは信じるに足るものではない。


 いずれにせよ、用心するに越したことはない。

 今が一番大事な時期なのだ。


 不安材料は少しでも排除しておきたい。

 我に何かしらの疑いの目を向けられていては我の野望も滞る。

 ましてや逆転生後の魔大帝復活など泡沫夢幻・・・。


「ふふふ。どうやら目が覚めたようですね。では介護の者に伝えておきます。「食事が摂れそうなので起こしてあげてください」と・・・」



 ・・・。


「我久武留さん、それではまた。良い一日を」


ガラガラ・・・トンッ



 普通の人間ではない・・・?

 まさかな。

 だが、なんだこの違和感は。

 我が爺だからか、華神が余計に霧がかって見える。


 ブレインフォグとはまた違う何か・・・。


 とにかく用心しなくては。




*****




 あー、涼真。早く来てくれ。


「(・・・我久様、お待ちください・・・)」



 幾度となく涼真を呼んできたが、最近どうも反応が弱い気がする。


 弱いというか、かったるそうな感じが否めない。

 謀反でも起こしかねないな・・・。

 少し優しくしてやるか。


「(・・・)」




トントン ガラッ


「あの、我久様!別に裏切るとかそんなつもりは全くないですけど!」


 む、なんだ違うのか?


「あのですねぇ。朝苦手なんですよ・・・。だから早番の日はもうしんどくて・・・。ここ最近、起きるのもやっとなんですよ」


 なんだ、若い者がだらしない。


「いや、そう言いますけどね・・・。動けはするんですよ?身体もそこまでキツいって感じもしないんですよ。ただ、布団から出るのに時間がかかるようになって・・・」


 動けはする・・・と?

 デフォルトで速度低下バフがかかったような動きの癖によく言うわ!


「あーーあーー!我久様までそんなこと言うようになって!!僕のことわかってくれるのは我久様だけだと思ってたのにー!もうダメだ・・・」



 あ、いや・・・今のは言いすぎた。

 すまぬ・・・。


「・・・」


 我もイライラしてて八つ当たりしてしまった。

 優しくするつもりだったのだが・・・。


 思い通りにいかないとこんな感情になるんだったな。

 すまない。


「あ・・・いや、いいんです。遅いのは確かにそうですし・・・。僕も情緒不安定になってすみません・・・」


 まあ涼真のいいところでもあるからな。

 人から見れば遅くても、介護される側は丁寧でしっかり見てくれていると思っているはずだ。

 だから自分に自身を持て。


 何度も言うが、速い人もいれば遅い人もいる。

 速い人は丁寧さを犠牲にしているかもしれない。

 だからこそ、自分の中で一つは他人に負けない信念を持つが良い。

 自分にしかないもの・・・。


 良くしていきたいと思う気持ちであったり、丁寧な対応・接客であったり。

 それが自分の武器になる。

 良き行いが、長く仕事をしていく上で徐々に薄れていったり、怠惰になっていったりと変わっていくこともある。

 貫き通す覚悟と気持ちが大事であろう。



「・・・でもそうやって見てくれない人は多いですけどね。「遅い遅い、もっと速く動け」と周りから言われ続けてもその言葉に流されないで、自分なりの丁寧な対応をしていくのがきっと正しいはずだって思ってやってます・・・。それが僕の信念なんでしょうね」


 ふむ。

 皆が同じ方向を向いていないとそういうことになる。

 こればかりは、いる者がどうにか変えていかなければどうしようもないからな。


 その為に一度、思考が腐敗した者を排除し、新たな良き風習を構築することが必要となってくる。


 お主に期待を寄せているのも少なからずいる。

 そのまま研鑽を積むが良い。


「え・・・、期待を僕に・・・?まさか・・・だってまだ2年目ですよ?」


 勤続年数も大事だが、それ以上に求められるモノがある。


 よいか涼真よ。

 上に立つものは必ずといっていいほど、カリスマ性とオーラがほとばしっている。

 経験により磨かれることもある。

 お主にその力はあるかな?



「・・・僕にはまだそういうのはわかりません。でも、真面目に・・・誠実にやっていけば報われるとは思ってます!」


 ふむ。

 それぐらいの気概がなくてはな。


 それよりも新たなターゲットを言い渡すぞ。

 覚悟はよいか?


「はい、わかりました!」


 よし。

 その調子だ!

 次はコイツだ・・・!!

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