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第10話 激震!敵キャラ出現・・・!?

 我は居室に設置されているナースコールを押した。


ポーン


「我久さーん?そのまま起き上がらずに少し待っててくださーい!順番でお伺いしますー!」


 決められた返答。

 皆一様に似たような返事をする。


 もしかしてコール対応返答マニュアルでもあるんじゃないかと思うほど、大体がこんな感じだ。


 現状、人手は足りているとは思うのだが、どうしても後回しにされている感は否めない。



 まぁこうなっては仕方ない。

 そこで転がっている仁智翔は、他の職員が来るまで放っておくしかあるまい。



数分後・・・


コンコン



「我久さーん、お待たせしまし・・・!え、ちょっと翔くん!?大丈夫!!?」


 現れたのは花科結衣。

 これでようやく翔は助け出されるな、と思っていたら花科はこうべを垂れた。



「はぁ・・・ホントついてないわ・・・。工口こうぐちさんに皇さん、あと誰だっけ・・・あ、兵糧松さんか。月1回しかない夜勤中の転倒・・・。事故報告書3枚・・・。極めつけになんで職員まで倒れてるとか何の罰ゲームよ・・・」



 ・・・。

 花科は愚痴をこぼしている。


 すまんが正直、転倒云々は知らん。

 だがそれらがまとめて起こるとは、生粋のアンラッキーガールだな。

 許せ・・・。





 それから程なくして、複数名の職員により仁智翔は運び出された。


 翔は早番だったため、寝不足・低血糖ということで医務室で休ませている。



 その後意識を取り戻した翔は、青ざめた顔で退職願を提出したそうだ。


 別に辞めずとも更生すれば良いとは思っていたのだが、精神が保たなかったのだろう。



 あれだけ強がっていた翔だったが、死の痛みと恐怖を味わったら最早、子鹿のようにブルブルと何かに怯えている。

 この状態でひと月、まともな仕事が出来るとも思えない。



 本当に人間は・・・なんて弱く、脆いんだ。

 これだから我ら魔族血まぞくけつから、侮蔑的対象とされるのだ。




*****




コン、コン、コン・・・


 朝食を食べ終え、自室で休んでいる我に一人の来客があった。


 この叩き方・・・、涼真ではないな。

 時間的に風呂でも掃除でもシーツ交換でもない。

 よもや夜這い?と思ったがそれはない。

 朝だしな。


 一体何用だ・・・?


ガラッ


「こんにちは、我久武留さん」



 そこには初めて見る、まるで天使のような看護師の格好をした女が立っていた。

 白衣の天使とはこういうことを言うのか。


 我はその女を横目に見ると、反射的に名札を探した。


 ・・・が、名札が見当たらない。

 コヤツもそういった適当な仕事をする者なのかと思っていた。


 だが、我には魔真贋がある。

 名を隠そうにも、目を凝らせば余命と共に本名が頭上に浮かび上がる。



 『華神はながみ伊織いおり』・・・か。


「我久武留さん。私の名前がわかりますか?」


 唐突にそう言われ


「はながm・・・」


 そう答えてしまった。

 何故、答えてしまったのか・・・。


 なんというか・・・、反射だった。



「ん?はなが・・・み?今、そう答えましたよね?私、名前教えましたっけ?」


「あ・・・し、職員写真で・・・みた・・・」


 我は咄嗟に嘘をついた。



「あー、そうでしたか!覚えてもらって光栄です〜。それでは〜!」


 ドアノブに手をかける。


 ふう、やっと帰っていくか。

 この女は何故か苦手だ。



「あ、我久武留さん。言い忘れましたけど私、昨日まで派遣社員でしたので職員写真は貼ってないですよ。それに、まだ施設長にしか話してませんでしたけど、名字が変わりまして『賽投さいとう』から『華神はながみ』になりました。今日からここの看護副主任となりましたのでどうぞよろしくお願いします!」


ガラガラ・・・トンッ




 ・・・な、なにぃ!!

 わざわざ何をしに来たのだあの女は・・・!

 挨拶にしては随分と挑戦的であったな。

 もしや何か・・・感づかれている・・・?


 しかし・・・この我が手玉に取られた感が否めないのは何故だ。


 派遣社員から正社員・・・それも役職だと?

 引き抜きか、よほどの腕前なのか。

 

 ・・・華神伊織、白衣の天使ではなく要注意人物。

 気をつけねばなるまい。




*****




 華神の一件以来、より注意深く施設内の動向を探るようになった。

 あの時、もっと情報があれば・・・。

 不用意な事をせずにやりすごせた筈なのだが。


 という訳で魔真贋にて、施設内を偵察?巡回ラウンド中である。



「はぁ、疲れた。記録・・・、毎回手が腱鞘炎みたいになるよね」


「そうすね・・・今どき手書きとか・・・wやっぱ電カルに憧れるすねー。でもここの施設は予算出さないし当分は無理すよね」


 副主任の平緒と、茂手もててるが夜勤の記録に追われている。 


「断言できるけど、まず無理ね・・・。でもね、一つ方法があるの」


「え!なんすかその方法って!!」


「・・・事例研究激論会が毎年1回、行われているの。それに頭書の成績を収めることができれば・・・、本社から色々な支援が受けられるって訳」


「マジすか!でもそれって全国の施設の頂点的な位置すよね・・・?ムズくないすか?」


「・・・まあね。過去、うちの順位は恥ずかしいものだったわ。3年前から行われて、全国35箇所の内、毎年最下位・・・。本社からはそれはもう・・・落ちこぼれのレッテルをね・・・」


「それで今年は俺に・・・なるほど。じゃあここで俺がビシッと決めれば良い訳すね!?任せてくださいす。相方さえベストチョイスしてもらえれば決めてみせるんで」


「フフ・・・、頼もしいわね。相方は今、選出中だから決まったら伝えるわ」


「よろす!」



 ・・・。

 この茂手とかいうヤツ・・・。



 記録が誤字だらけだぞ・・・。


 臥床がしょうの『』のへんは巨じゃなくて臣。

 拒否きょひの『きょ』のつくりは臣じゃなくて巨・・・。


 それに渡ナベの『ナベ』は『邉』『邊』で、冖と宀の違いがある。

 廊下の『廊』は疒ではない。

 廃用症候群の『廃』も疒ではない!

 専用の『専』は博のように右上に丶は打たない!!

 『脾』と『卑』は書き方が違う!!!

 流涎の正しい読み方はりゅうえんじゃなくて『りゅうぜん』!!

 腫脹しゅちょうの『ちょう』はにくづき

 粘稠痰の『稠』はのぎへんだし、読み方は()()()()()じゃなくて『()()()()()たん』!

 そして周は土じゃないから、よく見てみろ。

 


 いや、なんだこれは・・・。

 間違いだらけではないか!

 書けないなら漢字で書くな!!

 知ったかぶりもするな!!



 この男・・・良いのは顔だけか?


 む、文章の構成も変だぞ・・・。

 どうなっているんだ。



 「ご飯が美味しいと申しておられた」

 謙譲語だか尊敬語だかわからん。


 「内服を施行した」

 普通に「服薬した」でいいんじゃないか?


 「シルキング施行」

 ・・・もしかしてミルキングのことか?

 『シ』と『ミ』を書き間違えた・・・と思ったがどうみても『シ』だ。

 間違えて覚えたな?


 「前方見ぜんぽうみ

 最早、何が言いたいんだ・・・?



 パッと見でこれだからな。

 じっくり読んだらツッコミどころ爆砕だろう。


 それに無理がある医療用語・・・。

 介護士が看護をちょっとかじって背伸びをしたい年頃なのか。



 ・・・しかしこれで本当に事例研究のメンバーなのか?


 平緒は思ったよりも見る目が・・・ない?

 それともイケメンに弱いのか?



 どちらにしろ、最下位続きなのはこういうところにあるのだろう・・・。

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