第1話 爆誕!魔王爺さん
やってしまった・・・。
たまたまちょっと考えて、「書いてみようかなー」と思い立ちました。
この話は、本編である『火辛』のスピンオフ作品となっています。
「本編終わってないのにスピンオフとかイミフw」と、見た人は思うかもしれませんが、
書きたい意欲だけで行動しております。
それでもどうにか書き上げたいので、目に留まったら一読していただけたらと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
朽ちぬ我が身が崩れていく。
極限零度は我が身の動きを完全に封じ、火炎崇拝により下肢から焼滅していく。
全知全能の力、『アカシックレポート』によりこの終焉は予見されていたものだった。
覆すことの出来ぬ死を受け入れることが出来たのは、約束された転生にあった。
自分では気づいていないが、この男は転生の炎を宿している。
それも我が『アカシックレポート』には記されている。
しかし我が身を焦がすこの炎・・・。
これが・・・真の炎とでも言うのか・・・。
「フフフ・・・ハハハ!束の間の平和を精々楽しんでおくがよい・・・フハハハハ!!」
言い終わると同時に我の意識が途切れた。
*****
魔王と言えど、かつては人間だった。
人間を尊いとさえ思っていた時期もあった。
だがそれは我の思い違いにすぎなかった。
嫉妬、裏切り、凶暴性、破壊衝動・・・。
身勝手な人間のせいでいくつもの種族が消え、自らの生まれた星を蝕み続けた。
純粋に、人間は生きている必要のないものだと思うようになった。
破壊には破壊を・・・。
価値のないモノには相応の対応を。
我は正義の心により、悪の化身となった。
一度人類を滅亡させ、一から作り直す計画を始める。
そのために邪魔な存在をいくつか消していく。
それらを排除し、我が『覇道症候群』で生き人形にした。
だが、我が身が朽ちてはその計画も一時中断せざるを得ない。
生まれ変わり、力を戻して必ず元の世界に戻り・・・我が悲願を達成させる。
*****
瞼が重い。
意識は戻っている。
しかし体が鉛の様だ。
一体どういうことだろうか。
なるほど、恐らく赤子に転生したのだ。
それ故の動きにくさであろう。
「せ、先生!持ち直しました!!心拍が・・・!」
「な・・・なんてこった。死にかけた命が・・・。生への執念とでも言うべきか」
む、何を言っているのだ。
我の生命力を宿しているこの身が容易く死ぬわけあるまい。
しかし、この依代が死にかけだと?
転生後にこのような事態になるとはな。
「重五郎さーん、危なかったですねー!まだまだ生きそうですよー!」
ジュウ・・・ゴロウ・・・?
我の名か?
嫌に古めかしい名前だが・・・まぁ流行りの読めぬ名よりは親しみ易い。
「この老齢でよく持ちこたえたな・・・。とても92とは思えない」
92とはなんだ、経皮的酸素飽和度のことか?
その数値ではそれほど安定していないではないか。
しかし我を老齢とは・・・こやつ、何を言っているんだ。
我が肉体を・・・。
「・・・む?」
力を振り絞って開いた眼からは医師と看護師が見えた。
妙だ、産婆ではないな。
しかし産声を上げねばアプガースコアに引っかかってしまう。
再び丹田に力を入れ、今度は声を発する。
「お・・・おがゃあ」
「え!?退行かしら・・・!おもしろーい!!」
「こらこら、面白がっちゃだめじゃないか。なるほど、こういうケースもあるのか・・・」
我の渾身の産声を・・・笑いおったな・・・!?
赤子の身だろうと構うまい。
我の最上級魔法を食らうがいい・・・。
「ばっばびーぼっぼ!!」
「あら?峠を越えた瞬間から元気がいいわねぇ・・・」
「ほんと凄い生命力ですね」
詠唱に失敗したのか発動しない。
この無礼者が・・・。
再度力を入れ、右腕で薙ぎ払う。
ん・・・?
挙した右腕はまるで高齢者のようにシワシワだった。
バッ、バカな・・・これが我が身だと・・・!?
起き上がって全身を確認したいが起き上がることすら儘ならない。
「はーい、もう大丈夫ですよー。安心してくださいね」
女の看護師は我が手を取り、胸の前で握った。
く、こやつ・・・無防備ではないか・・・。
こういう天然娘がいるせいで勘違いをする輩もいるのだ。
教えたところで理解するわけもない。
「ふぁはへー」
そう言い握られた手を振りほどいた。
「痛っ・・・」
「あ!マイ子大丈夫!?ちょっと重五郎さん!!」
「む、術後せん妄かね。拘束しちゃっていいよ」
「わっかりましたー」
ギュウウウ・・・
なんという手際か・・・我の四肢はタオルのようなもので縛り上げられてしまった。
く・・・この無礼者が!
容易く抑制の指示を出しおって!
なんという病院だ・・・。
「まぁ明日には施設に帰ってもらって大丈夫だと思うからそれまでね」
四肢を抑制されては何もできない。
仮に老人に転生してしまったとして、力をつけて時空転移すれば前の世界に戻れるはずだ。
それまでこの依代で我慢するほかないのだ。
「バイタル安定してます。酸素オフにします」
「はーい、それじゃああとよろしくね」
そう言うと医師は退出した。
残された看護師は我に飽きたようで無言で、手際よく作業をしている。
・・・。
いまいち状況を把握できんなこれでは。
この段階で我が使えるものはなんだ?
魔力・・・は練ることができない。
真気・・・は四肢が抑制されている。
呪詛・・・そもそも発語できない時点で無理だ。
思考・・・これくらいしかない。
バカな・・・!
元魔王だぞ!?
右手一振りで国が滅びるほどの力の我が・・・。
どうしてこうなったのだ・・・!
何故このようなことが・・・。
薬が効いてきたのか、突如として深い眠りに誘われた。
我の思考を途絶えさせ、それに抗う手段も無い。
*****
火の能力・・・で火辛
魔王が爺さん・・・で魔爺辛
・・・略し方、雑・・・。