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遺書  作者: あや
2/5

弟は決して見栄えの良い赤ちゃんではなかった。

目は一重だし頭が妙に長くてイケメンには見えなかったが、所作が可愛らしく私を含めた家族全員が私の時と同じように誕生を喜び可愛がった。


しかし、弟の誕生と同時に母の様子が少しずつ変わっていった。

弟を可愛がり私を鬱陶しいような振る舞いが増えていき、あまりかまわなくなった。


最初は不細工だった弟は月齢と共にどんどん可愛くなっていった。

目は二重になり長かった頭は丸くなっていった。

赤ちゃんという生き物はそういうことがよくあるらしい。


可愛くなる弟に対して私は少しぽっちゃりして、気の強さが顔に出て少し可愛く無くなっていた。

私が3歳になる頃には母と揉める事が多くなっていた。

やんちゃで好奇心旺盛な私は男の子に混じって遊び服を泥まみれにしたし、喧嘩も多かった。

大きな喧嘩をするたびに母は相手の保護者に頭を下げていたし、よその保護者から「躾してないんじゃない?」と陰口を叩かれていたそうだ。


母の謝る姿や私のせいで陰口を叩かれたという話を聞くと、私は罪悪感でいっぱいになり良い子になろうとしたが、そもそも喧嘩は私が売っているわけではなく後ろから髪を引っ張る等、相手からちょっかいを出されることが多いので、やられっぱなしではいられない私は結果的に喧嘩を繰り返していた。

私が喧嘩を売ったんじゃないとどんなに訴えても言い訳をするなと言われて信じてもらえなかった。


私は口が立つ子どもで注意をされても言い返したり、理由を聞いたりと素直に従わなかった。

それが両親の気持ちを逆撫でし、いつしか日常的に布団たたきで叩かれるようになった。

些細な失敗でも、お尻を繰り返し竹製のしなる布団たたきで叩かれ、紫に膨れ上がり切れて血が出ることも多かった。


「口で言って分からない奴は猿だ。人間じゃない。猿は叩いて躾けるものだ」

父はそう言って私を叩きのめした。

「拳で叩くと手が痛む。お前のために痛みを負うのは勿体ない。布団叩きで十分だ」とも言われた。


一方、弟は愛くるしく育っていた。

所作の全て、言葉の全てに愛嬌があり、要領も良かった。

癒し系で真面目な弟は幼稚園でも人気者で友達も多く母には癒しの存在であった。


弟ばかりを可愛がる母を見て、私は弟を妬むようになった。

基本的には可愛がっていたが、喧嘩をする時には酷く弟を叩いたり髪を引っ張ったりした。

しかし、弟は言い返しはすれども私にやり返すことは無かった。

母が弟に言った「男の子は生まれつき女の子よりも力が強い。それは奥さんや子どもを守るための力だから女の子を叩くことに使ってはいけない」という言葉を固く守っているが故で、そんな弟の姿に母は感動し、より一層私に厳しく当たるようになった。


喧嘩の理由が弟の方にあっても、理由を聞かずに姉であるという理由で私が叱られ、自己弁護しようとしたら布団叩きで叩かれるようになった。

弟は喧嘩になれば母に言いつけるようになり、明らかな格差のある扱いに慣れていった。


弟も男の子らしくいたずらをする様になっていったが、バレると「あやちゃんがやった!」と私のせいにする様になり、私が叩かれるのを見ながらニヤニヤ笑っている憎たらしい顔を今でも忘れない。


肌が裂けるような鋭い痛みと、泣き叫びながら何も悪くないのにごめんなさい、ごめんなさい、と謝り続けるしか無かった。


どうすれば家族と仲良くできるのか、良い子になれるのか、当時の私には全く分からなくて、ただ自分は悪い子であり、そのような扱いを受けるのは仕方のない事だとも思っていた。

家族にとって明らかにいらない子だったが、私は家族を愛していて、仲良くしたかった。

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