魔術は語る、伺う者
獣たちもただ黙ってやられているのではない。攻撃を仕掛けるも無念。
参加者は、それぞれいろいろな力の代表というところか、獣を捌く腕は持ち合わせている。
魔の力を使うは魔法剣士だけではない。優れるというだけと逸脱したものというのの差は大きい。
小綺麗な礼服で、分厚い本を持つ魔術使いは、自分に何重もの魔法をかけている。反射、滑性、金剛、結界、それだけでない、防御魔法。
結界、反射という防御魔法によって、ことごとくはじき返される魔物。
その魔術師の隣に、ソーサラーと呼ばれる真っ黒なローブに身を包んだ男が、何やら黒いまがまがしい生き物をどこからともなく生み出した。
いや、正確には呼び出したというところか。サモン、デーモンと言っていたあたりが、悪魔を呼び寄せる者らしい。
そして、半実体化したデーモンはそのまま、獣に襲い掛かり、その数を減らしていく。
二人の魔の使い手に、獣は数を散らしていく。お互いが接近戦をしない者たちの中、連携が取れている。
知り合いだったのであろうか。しかし、当人たちの仲はどうやらよくないらしい。
魔術男は言う。「君は守りが薄いな。だから私の完璧なる防御に感謝するがいい。」と。
ソーサラーが言う。「私の悪魔はやはり強いな。圧倒的な攻撃こそ至高、我が悪魔を称えよ。」と
この二人、その呼び名は違えど、元居た世界線は同じという奇妙な参加者であった。
二人とも、いや、ソーサラーも以前は魔術を唱えていた。それほどまでに、魔術はメジャーであった。
しかし、ソーサラー含め、魔術に伸び悩む者たちは、かの地を離れたところで、悪魔を生み出すことに精を出し、これを広める。
すると、魔術を極める者たちにその情報が渡り、どちらが優れているかと紛争になったことがあった。
この勝敗というのが、引き分けに近い形で終わったのだが、もともと数の多い魔術勢力、ソーサラーに分があると見えた。
しかし、ソーサラーにも問題があり、適性のないものは、悪魔を呼び出す過程で、悪魔に乗っ取られてしまう、またはそのまま命を落とす禁忌の呪文といえるものであった。
今回、そんな二人だからこそなのか、参加者に見初められし実力、そこに現状況では手を組むような姿があり、仲たがいするのは時間の問題なのか、定かではないところだ。
言い合いを始める二人の周りには、いつからか、近づく魔物もいなくなっていた。
そこは、とある透明な壁のように、進むものを阻む。その壁を外側とすると、内側に行くにつれて獣がいるのがわかる。
おそらく、参加者がまだ多くいるのだろう。それも接近戦に有利な形で。
ハンターは思う。俺参加する気なかったんだけど、ほんと仕方なく参加したんだけどと。
彼の世界、その狩猟者の国では、国をまとめる王までもが、狩りにいそしむ。
もちろん、国の最高指導者だが、その王でさえも、狩りをもって支持者を集め、民を納得させる。
昔話も、とある伝説の狩猟者やら、歴戦のハンターであるとか、そんなものばかりだ。
そんな国で、参加者のハンターは、時間を持て余していた。
昔から、周りと同じように、狩猟することの素晴らしさを説かれ、強さを求められた。
その中でもハンターはほかの同年代の者たちを、追随を許さないようなセンスと感覚を持つ。
だから、何かと競い合うような狩りの祭典や、喧嘩もどきの狩り一騎打ち、遊びから真剣までの狩りで一度も負けを感じることがなかった。
それが原因か、いつしか狩りに熱中できなくなり、何もしない空白の時間ができたのは。
狩りというものは、強者が弱者に向かうのではなく、対等あるいはさらなる強者に向かっていくものとされる。
それは生活にも必要なことで、そこの女性たちも、狩りができるかどうかで、男の価値、自分との将来性を考えることだってある。
しかし、ハンターは女性がどうとか関係なく、欲がないまま狩りを続けてきた。すでに、生きれるだけの狩りを身に着けた。
そして、今、参加者に至る。参加した理由は暇ゆえに、それに、手紙だというのに周りの誰かに届いていたことだった。
暇を持て余していたハンターは、特に関わりのなかった人物から、手紙を渡され、とりあえず読むことにした。
渡してきたものは、すごく興奮したような、とにかくやれ、という感じだった。まさか、居場所が嗅ぎ付けられて、なんかの狩りのオファーじゃないのかと思っていた。
手紙の差出人の名前は祭典などで司会を務めるゆうめいじんの
しかし、その手紙は読めなくて、その代わりに、脳に焼き付けられるように内容が残った。汝に値するか、示せ。と。
ただの誘いにしては、頭に響く不可解な誘致。馬鹿にしているのか、それとも…。
ハンターの超絶なセンスにしても、その原因はわからない。
ただ、暇をなくすには十分たる何かが待ち受けている。そう確信したハンター。そこからはわかるとおりだ。
話を戻し、透明な壁を伝い、度々襲ってくる獣を、自慢の軽さと威力を持つ鉈で、部分を徹底的に痛めつける。それは慣れた作業のようだった。
倒れた獣のそばから、どうやら人であるものがこちらによって来る。害はないので放っておく。
すると、その片腕ほどの全長の短弓をもつ人物が、ハンターについてくる。
やけにびびっている。もしや、さっきの魔物んお背後にでもくっついてきたのか。確かに、獣の注意はこっち以外にも向いていやがった。
ゆえに何かしらで、獣の背後を取ったこのひ弱な男は、何かを隠しているようにも見えない。雑魚だ。
次に獣が来たら肉壁にでも使わせてもらおうと、肩をなでおろして安心する男を見て、壁を伝い、冷静になっていくのだった。